【インタビュー】社会で必要なのは障がい者の賜物かも 社会福祉法人「愛の鈴」理事長 植草三樹男さん

2016年1月15日06時39分 インタビュアー : 坂本直子 印刷
+【インタビュー】社会で必要なのは障がい者の賜物かも 社会福祉法人「愛の鈴」理事長 植草三樹男さん
社会福祉法人「愛の鈴」理事長の植草三樹男さん

東京都町田市にある「町田おかしの家」。障がいがあっても住み慣れた土地で働きながら、自立した生活ができるための支援を目指す福祉作業所だ。定員は20人ほどで、お菓子の製造・販売に関する補助作業を中心に働きの場を提供している。

この作業所を創設したのは、和菓子の老舗「銀座あけぼの」の植草澄子さん(享年62歳)だ。澄子さんは、ダウン症の障がいのある次女の智子さんのことで、学校卒業後の進路先やその後の生活を考え、同作業所(当時は「おかしの家 愛の鈴」)を創設した。また、同じ悩みを持った障がいのある人やその親の気持ちを広く理解してもらうため、2002年に亡くなるまで奔走し続けた。そんな澄子さんの後を引き継ぎ、現在同作業所の理事長を務めているのが、「銀座あけぼの」3代目店主であり、現在は会長となっている植草三樹男さんだ。植草さんに、障がい者福祉に携わる中で日々感じていることを聞いた。

「町田おかしの家」は、1992年に心身障がい者通所授産施設として発足し、2008年に現在の社会福祉法人「愛の鈴」となった。施設が建つ町田市は、70年代より福祉政策に熱心に取り組む市として知られ、偶然にも植草さんは、智子さんが生まれてすぐに町田市に越してきた。智子さんのために少しでもよい空気のところに移ったほうがいいという医師の勧めに従い、都心から離れた町田市に移り住んだのだという。「その頃から町田市のお母さんたちは熱心に運動をしていたが、周囲は今ほど障がいがある子どもに対して理解がなく、今とは違う大変さがあった」と当時を振り返った。

「町田おかしの家」は、創設者の澄子さんの「障がいを持っていても、社会の一員として価値ある存在である」という理念のもとに生まれた。植草さんは「障がい者が持っている賜物が、私たちにとって大切なのではないかと思っている」と話す。その賜物とは、純粋さや、素直さ、優しさ、許す心などで、健常者ならば意識して努力しなければ実行できないことを、ごく自然に当然のごとく持ち合わせているという。一緒にいる人を励まし、癒やしを与えてくれるのだと植草さんは語る。

植草さんが障がい者と一緒にいて特に驚いたのは、どんな時でも「この人は悪い」と決めつけず、誰も「裁かない」ことだという。「悪い人という観念がまるでなく、たとえ自分がいじめられたとしても、相手をすぐに許してしまう。こういったことは、私たちにはできない」と話す。「聖書に書いてある大事なことを、障がいがある子どもたちは持っているのでないか」と言い、「直接利益に結び付く作業ができなくても、その人がいるだけで組織が潤滑に動き、そのため生産性が上がることがある。障がい者には健常者といわれるわれわれには気付かない『何か』がある」と植草さんは話し、「この障がい者が持つ『何か』こそが、イエス様が教える隣人愛につながることではないか」と話した。

職場の雰囲気が悪いことをいち早く察知し、その場を和らげるのも、健常者より障がい者のほうが得意だという。例えば、ぎすぎすした雰囲気の中で障がいのある女性が急に立ち上がり、「これから変身します。へんし~ん」と言ってその場が明るくなったことがあった。植草さんはこういった光景を幾度も作業所の中で目にし、神様が、障がいのある人たちに与えた賜物が何かをあらためて気付いたという。そして将来、この賜物が社会の宝として広く認められるのではないかと考えていることを明かした。

優れた経営手腕を持つ植草さんは、先代が創(はじ)めた和菓子店を全国区の銘菓にまで成長させた。2003年にはロンドン・インターナショナル・アワーズの菓子・スナックパッケージ部門で最高賞を受賞し、「銀座あけぼの」を世界有数のブランドにまで育て上げた。しかし、植草さんがこれから目指すのは、企業の繁栄よりも弱い人や悲しんでいる人たちのためにその生涯をささげた主イエス・キリストに、少しでも近づくことだ。

社会福祉法人「愛の鈴」は、2013年に「ケアホーム『愛の鈴』」を作ったが、すでに満員状態の上、今後も利用希望者が増える見込みで、増設を計画中だ。また、認知症の親を介護するために会社を辞める社員が出ないよう、グループ企業の一つ、曙フーズの社内に、認知症の人のためのデイサービスを作ることも検討している。

植草さんは、社会福祉法人「愛の鈴」理事長の他にも、特定非営利活動法人町田リス園の理事長も務め、多忙な毎日を送っている。また、「銀座あけぼの」の会長としても、やらなければならないことは数限りなくある。しかし、澄子さん亡き後に「町田おかしの家」の理事長を引き継ぎ、そこで生活する障がい者と触れ合う中で見いだしたことの一つは、「障がい者の働きを広めることが、神様が自分に与えた役目」だということだ。

今後植草さんは、「彼らの、見えない力の価値を、広く社会に発信する機会を作りたい」という。その上で、「目に見えることで利益を出し、お金をもうけることが会社にとっていいことだという企業の常識を、非常識なものにしていきたい」とキリストと共に生きる者としてのビジョンを語った。

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