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キリスト教と社会事業の関わりを考える 国立ハンセン病資料館企画展「待労院の歩み」

2015年11月16日19時26分
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関連タグ:ハンセン病
キリスト教と社会事業の関わりを考える 国立ハンセン病資料館企画展「待労院の歩み」 +
国立ハンセン病資料館の2015年度秋季企画展「待労院(たいろういん)の歩み-創立から閉院までの115年-」。真ん中にあるブースが「聖母ヶ丘」を表し、その周りの展示物とのつながりを示している=11日、東京都東村山市で

ハンセン病に関する知識の普及や理解の促進に努める国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)で、2015年度秋季企画展「待労院(たいろういん)の歩み-創立から閉院までの115年-」が開催されている。同展では、2年前の1月に入所者の減少により閉院した「待労院」(閉院時は「待労院診療所」)の様子と、同院と共に形成されていった「聖母ヶ丘」の歩みについて130点の資料が展示され、それらを通して、近代以降の日本におけるキリスト教と社会事業との関わりの一例について知ることができる。

「待労院」は熊本市西区で、115年にわたり存続したカトリック系の私立ハンセン療養所。日本有数のハンセン病患者の集合地であった本妙寺(熊本市)に集まるハンセン病患者のために、「パリ外国宣教会」から宣教にきていた司祭ジャン・マリー・コール(1850-1911)と、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」から送られてきた5人の修道女によって始められた。1901年には欧米からの寄付により、琵琶崎の丘にハンセン病者の療養施設「待労院」を建設し、その後名称や機能を変えながら、ハンセン病患者・回復者の生活の場であり続けた。

この待労院が他のハンセン病療養施設と大きく違っていたのは、待労院が建てられた同じ敷地に、親を失った子どもや路傍に捨てられた高齢者などの困窮する人々が集まり、修道女たちと共に信仰に基づく共同生活を送る「聖母ヶ丘」が形成されたことだ。同展では、真ん中に一つのブースを作り、その周りを取り囲むかたちで展示物が置かれている。学芸員の西浦さんによると、このブースは「聖母ヶ丘」を表し、その周りに待労院の生活ぶりが分かる資料を置くことで、明治時代から既に「ハンセン病療養所=隔離」とは違ったハンセン病療養所の在り方があったことを示しているという。

展示は3つのテーマから成っている。第1のテーマは「待労院の時代」。待労院の始まりから、戦中における存続の危機までとなっている。修道女らが信仰的な意味から「足を洗う」ことを通して、入所者たちとの交流を深めていったことや、一緒に農作業や精米、井戸掘りや洗濯などをしながら共に生活をしていた様子を知ることができる。他の国公立のハンセン病療養所でも「患者作業」は行われていたが、待労院での「労働」は信仰の一つであり、重症者はベッドの上で祈ることが労働だった。このことから、一般に考える「労働」とは意味が違っていたことが分かる。

キリスト教と社会事業の関わりを考える 国立ハンセン病資料館企画展「待労院の歩み」
初期の待労院内部。奥で修道女が患者の足を洗っている。(写真:国立ハンセン病資料館提供)

第2のテーマは、「琵琶崎待労病院の時代」。待労院は、戦時中の危機に見舞われたが、終戦後の48年にはプロミン治療が開始され、「社会福祉事業法」の成立により、待労院の母体は「社会福祉法人聖母会」となり、名称も「琵琶崎待労病院」と改称された。社会福祉法人となったことで、国から援助を受けられるようになっていった。クリスマスパーティーの様子を写した写真や、入所者が作成した聖母マリアの聖画、馬槽(まぶね)などの展示から、この頃の施設運営が安定し、充実したものであったことがうかがえる。また、弱い人を背負ってミサのため聖堂に入る人々の写真などを見ると、入所者同士で助け合って生活をしている姿が思い浮かぶ。

第3のテーマは「待労院診療所の時代と閉院」。70年以降、待労院では、入所者の高齢化が顕著となって事業の縮小が進み、入所者の信仰に基づく生活の場をいかに保障するかが課題となっていく。その中でも、71年に新しく建てられた聖堂は入所者たちの信仰の拠り所となり、祈る姿が絶えなかったという。しかし、89年に入所者は20人となり、98年には創立100年を迎えるが、2012年に最後の入所者が他の国立の療養施設に移ったのを機に翌年13年、閉院することになる。当時の修道女たちは、「入所者との関わりを通して、人間について、信仰について多くのことを学んだ」と語っている。

キリスト教と社会事業の関わりを考える 国立ハンセン病資料館企画展「待労院の歩み」
聖堂でのミサの様子(写真:国立ハンセン病資料館提供)

待労院と共に歩んできた「聖母ヶ丘」の形成のきっかけは、乳飲み子を抱いて瀕死状態にあった女性を待労院が受け入れたことだ。「目の前の困っている人を放っておくわけにはいかない」という考えが、待労院と「聖母ヶ丘」の根っこにはあるのだという。また、「聖母ヶ丘」に建てられた聖母愛児幼稚園の園舎が待労院の南側にあり、入所者は子どもたちの姿や声を身近に感じることができたことも紹介されており、待労院が孤立したハンセン病療養施設ではなく、地域と共にあったことが分かる。

現在「聖母ヶ丘」には「こうのとりのゆりかご」(別名「赤ちゃんポスト」)で知られる慈恵病院が建ち、その意味で「赤ちゃんポスト」の設置と待労院には、大きなつながりがある。望まれない赤ん坊であっても大切な命を救う背景には、待労院の長い救済の歴史があり、地域の困っている人へのセーフティー・ネットとしての水脈は同じであることを同展では示している。

キリスト教と社会事業の関わりを考える 国立ハンセン病資料館企画展「待労院の歩み」
「聖母ヶ丘」に建てられた初期の子どもの家。その後、大正期に入ってから「子どもの家」が建てられた。(写真:国立ハンセン病資料館提供)

「待労院の歩み-創立から閉院までの115年-」は12月26日(土)まで。休館日は月曜(11月23日を除く)、時間は午前9時半から午後4時半まで。入館無料。12月13日(日)には学芸員によるギャラリートークも行われる。詳細は同館のウェブサイト。

関連タグ:ハンセン病
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