“存在しているの、見えていますか?” 精神障がい者グループホームの現状と課題 「ホサナホーム」が集会

2015年9月25日14時04分 記者 : 坂本直子 印刷
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集会には約60人が集まった。最後は、日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会の朝岡勝牧師が感謝の祈りをささげ閉会した=17日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で

キリスト教精神に基づいた特定非営利活動法人ホサナが運営する精神障がい者のためのグループホーム「ホサナホーム」(東京都練馬区)が17日、「存在しているの、見えていますか?」と題し、ホームの現状と課題を伝える集会を、お茶の水クリスチャン・センター(同千代田区)で開いた。ホサナホームで暮らす人たちのことを歌などで伝えつつ、精神障がいのある人たちの尊厳や自立について、ホームのスタッフや精神科医、牧師がそれぞれの立場から話をし、ホサナホームのこれからについて理解を深めた。

東京都の障がい害者グループホームには、「通過型」と「滞在型」があり、ホサナは現在、12人にワンルームマンション形式の部屋を提供する通過型グループホームを運営している。通過型は、利用期間がおおむね3年と定められているが、滞在型は利用期間の定めはなく、長期利用が可能。ホサナでは現在、通過型で暮らす人たちが「最期まで安心して暮らせる場所」として、滞在型の運営を計画しているところだ。

ホサナホームの代替世話人で精神保健福祉士でもある玉井麻紀さんは、「通過型グループホームは、『自立へ向けての訓練をする共同の場』と定義されていますが、何十年も病院で治療を受けてきた人が、退院し、たった3年の日常訓練で自立ができるでしょうか」と、法律と現実のギャップを訴えた。さらに、「多くの人は保証人になってくれる身寄りがいないのでアパートにも入れず、結局は病院へ戻るか、ホームレスになるしかない」と悲惨な現状を話した。そして、「ホサナホームは、これまでその存在を地域の中で消して活動してきた。でも、多くの人に知ってもらわなければ変化は起こらないと思い、表に出すことにした」と、今回の集会を開いた意味を語った。

“存在しているの、見えていますか?” 精神障がい者グループホームの現状と課題 「ホサナホーム」が集会
ホサナホーム所長の玉井千尋氏。ホサナホームでは、入居者を「メンバーさん」と呼んでいる。正直な気持ちで接しないとどんなに好意的に装っても心を見透かされてしまうという。

次に登壇したホサナホーム所長の玉井千尋氏は、牧師家庭に生まれ、帰国子女だったことからひどいいじめにあったという。大人への不信感を募らせる中、何人もの友人や大切な人たちを亡くし、絶望感に打ちのめされていたとき、そんな自身の存在に気付いてくれた友人たちに出会ったという。「この友人たちがいたから今があり、この仕事をしている」と玉井氏。集会のタイトル「存在しているの、見えていますか?」は、現在ホサナホームにいる「メンバーさん」が発した言葉だと説明し、「私たちや地域が、彼らの『存在』を見つけ、支え合っていかなければならないと思っている」と話した。

玉井氏はまた、「自立とは何でしょうか?」と問い掛け、「一人になることが自立ならば、一人で生きていく自信がない僕は、障がい者に自立を進めることに違和感がある」とも語った。

この日は、ゲストスピーカーとして、精神医療を専門に扱う陽和病院(同練馬区)の精神科医師である服部正康氏が参加。保健所や福祉事務所と関わり、臨床医として仕事をする中で、医学の力だけでは解決できないことがあると思うようになったと話した。そのような中で巡り合ったのが、「人はどんな人でも生まれてから死ぬまでの物語(意味)を持っていて、物語(意味)なしでは生きていけない」という「ナラティブ」の考え方だ。

服部氏は、「人間にとって最も怖いのは無関心」だと言い、他者からの関心を受けなければ、当事者たちの物語は衰弱していくと話した。その上で、自身の存在に気付いてもらえていないと思っているホサナホームに住む人たちの物語も衰弱しているのではないかと語った。物語を作り直すためには、誰かがその物語の中に入って揺さぶる必要があるとし、スタッフを含め、たくさんの人がホサナホームに関心を持ち、いろいろな形で関わっていくことの大切さを訴えた。

ミッション・エイド・クリスチャン・フェローシップ(MACF)の牧師であるとともに、埼玉県伊奈町にある木村クリニックの理事も務める関根一夫氏も登壇した。「全ての人間はどんな状況にあっても、生きたい、知りたい、仲間になりたいという思いを持っている」と言い、「それが病気になったり、無視されたりするとその思いがねじれてしまう」と話した。そして、「健常者と障がい者、能力のある人とない人に分けることは、ある意味ではやむを得ない面もあるかもしれないが、『できないことがあっても、その人の価値がなくなるわけではない』ということをうなずける意識が必要だ」と語った。

“存在しているの、見えていますか?” 精神障がい者グループホームの現状と課題 「ホサナホーム」が集会
ゴスペルシンガーの高橋めりーさん

この日の集会には、ゴスペルシンガーの高橋めりーさんも大阪から駆け付け、「僕の名前はなんだっけ? 僕はここにいていいの?」と、玉井氏が作詞作曲した曲を歌い、ホサナホームに入居している人たちの思いを伝えた。その人も今年12月には期限が来て、ホームを出ていかなければならないという。

ホサナホームでは、現在のホームの近くに土地を購入し、6部屋の滞在型グループホームを建設することを目指している。今、ホサナホームの最高年齢者は80歳。玉井氏は、「『かわいそうな人、哀れな人』で人生を終わらせずに、その人が最期の時を『自分の家』と思える所で迎えることができるようしたい」と訴え、支援を呼び掛けた。

この日参加した精神保健士の資格を持つ女性は、「ホサナホームに暮らす人のことを歌った玉井さんの歌に胸が熱くなった。今後は、私が暮らす横浜市の情報を伝えるなどして協力していければいいと思う」と話した。

ホサナホームでは、滞在型グループホーム建設などのために寄付を募っている。振り込みは下記まで。

特定非営利活動法人ホサナ 精神障害者グループ
ホサナホーム理事長 泉田昭
三菱東京UFJ銀行 池袋支店(店番359)
口座番号 4955677

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