イラクの子どもたちが描いた絵など展示 日比谷で「いのちの花展」 “悲劇を悲劇で終わらせない”

2015年2月14日18時30分 記者 : 守田早生里 印刷
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色とりどりの子どもたちの絵。「子どもたちと一緒に絵を描く時もある」と、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM−NET)事務局長の佐藤真紀さんは話す=13日、ギャラリー日比谷(東京都千代田区)で

昨年、活動10年目を迎えたNPO法人「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM−NET)」が、ギャラリー日比谷(東京都千代田区)で「いのちの花展」を開催している。18日(水)まで。会場には、「イスラム国(IS)」から避難してきた子どもたちが描いた絵や、イラクで小児がんに苦しむ子どもたちが描いた絵、シリア国内で撮影された写真などが3つのフロアに展示されている。

JIM−NETが設立されたのは、2004年。その前年に起きたイラク戦争がきっかけだった。劣化ウラン弾や白リン弾といった兵器が使用され、それらが原因で小児がんに苦しむ子どもが紛争地で急激に増加。戦争によって疲弊したイラクでは、十分な医療を受けることができない。日本のように高度な医療が受けられる国にいれば助かるはずの命が、毎日のように失われていっているのだ。そこで、小児がんの子どもたちを助けようと、医師や医療関係者、NGO、企業が集まってできたのがJIM−NET。

「イラクの支援を開始してから10年。平和が訪れるどころか、シリアの内戦、昨年にはISが台頭し、次々にイラクの都市を征圧している。一方で、支援をしている小児がんの子どもたちの薬が足りなくなったり、避難民として故郷を追われ、難民キャンプから病院に通っている子どもたちが次々と死んでいくのです。支援しても支援しても、全く追いつかない」と、JIM−NETの佐藤真紀事務局長は言う。

佐藤さんがイラクの支援を行うきっかけとなった一枚の絵がある。2003年1月、イラクのバグダットの病院を訪れた時のこと。佐藤さんは一人の少女に出会った。名前はラナちゃん。この12歳の彼女は、急性骨髄性白血病だった。医師の説明によると、「今のイラクでは、薬が足りなくて、ほとんどの子どもが死んでいく。この子も1年持てばいい方でしょう」ということだった。

イラクの子どもたちが描いた絵など展示 日比谷で「いのちの花展」 “悲劇を悲劇で終わらせない”
2003年にイラク・バグダッドを訪れた際、ある病院で会ったある少女との出会いが、JIM−NETを設立するきっかけになったと話す佐藤さん

佐藤さんはその日、色鉛筆など色を付けるものは何も持っていなかったが、ラナちゃんにそばにあった鉛筆でメモ用紙に絵を描いてもらった。日本人の少女が描いた自画像をラナちゃんに見せると、しっかりと鉛筆を握り締め、その絵をそっくり写し、隣に自分の自画像を描いた。彼女が描いた2人の少女はしっかりと手をとりあっていて、なんともかわいらしい絵だ。ラナちゃんとの別れ際、「今度は色鉛筆を持ってくるからね」と約束した。そして、口には出せなかったが、「絶対戦争は起こさせない」と心に強く誓った。しかし、その年の3月、米国と英国は、イラクに激しい攻撃を仕掛けた。イラク戦争の始まりだった。

同年10月、佐藤さんは再びイラクへ向かう。ラナちゃんに会いにバグダットの病院を訪れると、「2月3日に死亡しました」と告げられた。佐藤さんと会話を交わし、絵を描いてもらってから、わずか5日後のことだった。ラナちゃんの親族を訪ねると、「今頃、何しに来たのですか? どうしてあの時、薬を持ってきてくれなったのですか? 外国の人は、写真ばかり撮って、何もしてくれなかった!」と物凄い剣幕で怒鳴られた。

イラクの子どもたちが描いた絵など展示 日比谷で「いのちの花展」 “悲劇を悲劇で終わらせない”
アーティストの高津央さんと後藤健二さんのコラボレーション作品(上)とラナちゃんの作品。静かに眠る男の子の顔と2人の少女が手を取り合っている絵が、どこか不思議な化学反応を起こしているような空間だ。

当時のイラクでは、国連安保理がイラクに経済制裁を課していたため、薬を届けることができなかった。しかし、2003年5月には全面解除。佐藤さんは、ラナちゃんとの約束を何一つ守れなかった代わりに、できる限りのことをしようと心に誓った。

ラナちゃんが描いた絵は、今回も展示されている。そして、そのそばには、ISに殺害された日本人ジャーナリスト、後藤健二さんとアーティストの高津央さんがコラボレーションしてできた作品が飾ってあった。

西アフリカのリベリアで後藤さんが撮影した亡くなった男の子の顔、その周りには、宇宙空間を想像させる世界が広がっている。今回は、この男の子が生きていたら、本も読んでいただろう・・・、絵も描いただろう・・・、との思いから、本に見立てた額の中に作品が収められ、その周りには色鉛筆が埋め込まれていた。

「ラナちゃんの描いた色のないかわいらしい絵と、この高津さんと後藤さんの世界観が、どこか一致しているように思えて、ここに並べて飾ることにしました」と佐藤さんは話す。後藤さんとは、10年来の仲だった。初めて後藤さんに出会ったのは、イラク。「落ち着いていて、強い信念を持った人だなと思った。でも、あの人懐っこい笑顔は、魅力的でしたね」と初めて会った時の印象を話した。

現在、JIM−NETのイラク現地スタッフとして働いているイブラヒムさんも、後藤さんの死を悼んでいる一人だ。10年前、イブラヒムさんは妻を白血病で亡くした。その時、「あなたの知っている日本人の友人たちは、ヨルダンから遠く離れた日本にいる。でも私はここにいるから、彼らの代わりに、あなたを助けたい」と言って、イブラヒムさんの妻を何度も見舞ったり、亡くなった後、遺体を搬送する手助けをしたり、彼の家族を励まし続けたのが、後藤さんだった。

イラクの子どもたちが描いた絵など展示 日比谷で「いのちの花展」 “悲劇を悲劇で終わらせない”
紛争地で暮らす子どもたちの写真。苦境の中でもたくましい子どもたちの笑顔。私たちに訴えていることとは何だろうか?

「後藤さんの死には大きな衝撃を受け、私たちも深い悲しみを覚えている。しかし、シリアとイラクに平和が来ない限り、われわれの支援に終わりは来ない。支援を続ける中で感じたことを世の中に発信したり、また実際のアクションに移していく。それが、私たちに今できることではないかと思う。今回の事件を機に志新たに、一層の支援を続けていきたい」と佐藤さんは話した。

子どもたちが描く一つ一つの絵が、また写真に収められた子どもたちの笑顔が、私たちに何かを訴え掛ける。イラクの子どもたちの魂が、日本の中心で叫ぶ声とは・・・。「いのちの花展」は、ギャラリー日比谷(東京都千代田区有楽町1−6−5)で18日(水)まで。入場無料。開場時間は午前11から午後7時(最終日は午後5時)まで。詳しくはHPを。

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