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エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(23)友の身代わりになった少年兵

2024年7月10日18時25分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

夜更け。すきやくわを持った少年義勇兵たちが集まった。「向こうの森まで行って、今夜はそこで野宿するんだ」

隊長が命令を出すと、一同は「おお!」と声を上げた。その時、一番後ろにいた17、8歳の少年兵が、いきなりふらふらと倒れてしまった。

「どうした、ジェミイ」。友人が彼を助け起こし、水筒の水を飲ませようとしたが、水は一滴も残っていなかった。ザク、ザクと道を踏みしめ、仲間の兵士たちは2人を残して先を急いだ。

「大丈夫か?」ペニイという友が言った。「すまない。君に迷惑をかけてしまって」。「そんなことはない。しっかりつかまって立つんだ」

その夜、友達思いのペニイは、彼に代わって歩哨に立っていた。しかし、疲れ切った体に歩哨の役はつらすぎた。彼は疲労と闘いつつ、故郷のことや年取った父と母、妹のことを思い巡らすうちに、いつの間にか眠り込んでしまったのだった。

しばらくして、ペニイは肩先をぐっとつかまれて目を覚ました。本営のトムソン大佐が小隊長と一緒に立っていた。小隊長は事情が分かっていたので何とかかばってやりたかったが、死刑は免れそうもなかった。

その頃故郷では、家族が肩を寄せ合ってペニイの無事を願い、早く戦争が終わればよいがと話し合っていた。そのうち郵便が来た。ペニイからだった。

お父さん。この手紙をお読みになる頃には、私はもうこの世にいないでしょう。でも、覚悟はできています。なぜ死刑になるのか。私はお父さんだけにはそのわけを知っていただきたいのです。私が出征するとき、ジェミイ・カールの母が、ジェミイは病身なのでどうか力になってやってくださいと頼んだのです。私はジェミイを抱えて、はいのうと銃を担ってやりました。それで私は余計に疲れました。

でも、ジェミイはもっと弱ってしまいました。それで歩哨を代わったのです。私は歯をくいしばって立っているつもりでした。でも、だめでした。小隊長はどうにかして助けてくれようとしたのですが、軍律は厳しいのです。私は男らしく死んでいきます。どうかジェミイを恨まないでください。そして、私のために悲しまないでください。・・・

その翌日。小さな駅の待合室にしょんぼりと汽車を待つ少女の姿があった。ペニイの妹ブロッサムである。汽車に間に合えば翌朝までにワシントンに着くはずだった。

その日の午後。官邸の一室で書類調べをしていたリンカーンは、ふと部屋のドアが音もなく開けられたので目を凝らした。みすぼらしい姿の少女が震えながら立っている。

「どうしたの? 怖いことはないよ」。リンカーンはやさしく声をかけた。それに力を得た少女は口を開いた。「あの、ペニイを・・・ペニイの命をお助けください」。「ペニイ? ペニイとは誰のことかね?」「私の兄です。兄さんが銃殺されるんです」

「ああ、あの兵士か」。リンカーンは手元の書類から一通の報告書を抜き出して読んだ。

「ペニイ・プラオン。18歳・・・ふうむ」。「ペニイはとても疲れていたんです。そして、ジェミイはもっと弱っていたんです。その晩はジェミイの番だったけれど、立てなかったんです。それで、自分が疲れていることにかまっていられなくて」

リンカーンは不思議そうに少女の顔を見た。「それで、そのジェミイというのは?」少女はしわくちゃになった手紙を取り出した。それはしっかり抱きしめていたので温かった。

リンカーンはそれを読んだが、大粒の涙が流れて手の上に落ちた。彼はいきなりペンを取り上げて何か書きつけると、副官に言った。「これを至急電報で出してくれ」。それから、ブロッサムの方に両手を伸ばし、震えている彼女を抱き寄せて言った。「安心おし。この電報でおまえの兄さんの命は助かるんだ」

ブロッサムは信じられないというように両目を見開いたが、見る見るうちにその目が涙でいっぱいになった。彼女は思わずこの恩人の足もとにひれ伏して言った。「ありがとうございます。情け深い大統領様。ありがとうございます」

*

<あとがき>

「奴隷解放宣言」の代償は高いものにつきました。それが南北戦争に発展してしまったために、多くの尊い命が戦場に消えていったのです。リンカーン大統領の苦しみは察するに余りあります。しかし、その尊い理念を支えるために、北軍には大統領のために喜んで命を差し出そうとする人たちが多数集まりました。少年義勇兵のペニイもその一人でした。

彼は、体力を消耗させ、今にも倒れそうな友人ジェミイに代わって歩哨に立ったのですが、何といってもその任務は過酷でした。疲労の極みにあって、彼はついに居眠りをしてしまい、本営のトムソン大佐に見つかり、死刑を宣告されたのでした。

この時、ペニイが故郷の家族に宛てた別れの手紙を見た妹のブロッサムは、兄を助けるために一人で汽車に乗り、ワシントン目指して急ぎます。そしてリンカーン大統領にじかに面会し、命乞いをしたところ、感動したリンカーンは直ちに少年兵ペニイの命を助けるために死刑中止の電報を打ったのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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