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エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(19)神は正義を照らす

2024年5月16日11時56分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

政治活動をしながらも、リンカーンは本職の弁護士業に力を注いでいた。弱い者、困っている者がいると、1セントの報酬も取らずに、親切に弁護してやるのだった。

上院議員選に落選してから1カ月半後。彼は1通の手紙を受け取った。それは、親友のジャック・アームストロングの未亡人アンナからだった。ジャックは、リンカーンがニューセーラムを去ってから、5、6年後に世を去ったのだった。

エイブラハム様

どうか、私を助けてください。息子のウィリアムの命を助けてください。彼は今死刑の宣告を受けようとしています。ウィリアムは酒を飲んだり、けんかをしたりしていつも私を泣かせています。でも、人殺しをするような子ではありません。それなのに、無実の罪を着せられて、死刑になろうとしているのです・・・。

このような手紙であった。事件というのはこうだった。去年の夏の夜、ウィリアムは隣の村の酒場で5、6人の友人と酒を飲んでいた。みんな酔っていたのでけんかを始め、しまいに殴り合いになった。そしてその後、帰り道で仲間のメットガーが刺し殺されてしまった。その犯人がウィリアムだというのである。

ジェイムズという若者が、月の光の中でウィリアムが殺すのを見たと証言した。ウィリアムは泣いて身の潔白を述べたが、有罪となってしまう。裁判官は8年の懲役にしたが、村の人々は人を殺した男にそれでは刑が軽過ぎると怒り、とうとう今回のメーゾン郡における巡回裁判で死刑が確定したのだった。

リンカーンは旅支度をし、かばんと洋傘を持って飛び出していった。親友アームストロングの忘れ形見の危機である。彼は夜通し歩いてメーゾン郡まで行った。

小さな宿に泊まったリンカーンは、じっと考え込んだ。(ジェイムズという者が、月の光でウィリアムの殺人を見たというのなら、覆すことなどできないだろうなあ)

月の光・・・月の光で殺人を見たって? ふと窓の外を見ると、こよいも満月が輝いていた。と、その時である――神が彼に知恵を授けられたのは! リンカーンははっとして、大急ぎで古ぼけたかばんを探り、中から小さな暦を取り出した。

いよいよ裁判が開かれた。ジェイムズの証言が終わると、リンカーンが反対尋問のために立ち上がった。

「ジェイムズさん、あなたがその殺人を見たというのはいつですか?」すると、ジェイムズは憎々しげにリンカーンをにらみつけて答えた。「ちょうど村の教会堂の鐘が12時を打ったときでした。私は月の光の中でこの殺人をはっきり見たんですよ」

その時、リンカーンの言葉が、あたかも天からの声のように響いた。

「裁判長。この証人の言葉で全てが明らかになりました。もうこれ以上弁護の必要はありません。すなわち、その日の12時。月は出ていなかった。証拠はこれです」

そして、リンカーンはポケットからあの小さな暦を出して高々と掲げた。その時、証人のジェイムズは真っ青になって、よろよろと倒れかかった。その体を支えながら、リンカーンは続けた。

「被告ウィリアムの無罪はこれで明白です。私は改めてこのジェイムズを殺人罪で起訴します」

会場にどよめきが広がり、次第に大きくなっていった。突然ジェイムズはリンカーンの手を振り切って逃げてしまった。リンカーンは続けた。

「皆さん、神は正義を照らします。私は初めからウィリアムの無罪を信じていましたが、立証できませんでした。夜、宿で悩み苦しんでいたとき、明るい月光がこの目に映った瞬間、神が知恵を下さいました。そしてこの暦を見たとき、この証人の偽りを知ったのです。この無実の若者は私の大恩人の忘れ形見なのです。彼の父親は私を助けて今の職業を得るまで押し上げてくれました。その恩人は、今はいません。そしてその息子と母親が無実の罪に泣いているのです。裁判長、どうかこの美しい夕日が沈まぬうちに、無実の罪人に無罪の宣告をお願いします」

多くの聴衆が泣いていた。涙に濡れた老裁判長は、宣告した。「被告人ウィリアムを無罪とする」。母アンナは、駆け寄って息子をひしと抱きしめた。そして親子はリンカーンの足元にひれ伏した。

*

<あとがき>

リンカーンは国会議員になって政治活動をしながらも、本職の弁護士業も誠実に果たしていました。そんなある日、彼のところに親友のアームストロングの妻アンナから助けを求める手紙が届いたのです。それによると、一人息子のウィリアムが無実の罪で獄につながれ、死刑が確定したというのでした。

ウィリアムは友人たちと酒を飲んで帰る途中、仲間の一人が刺し殺され、その犯人がウィリアムだというのです。ジェイムズという男が、月光の中でウィリアムの犯行を見たと立証したためでした。

メーゾン州の裁判所まで歩いて行き、裁判の前夜小さな宿屋に泊まったリンカーンは、なすすべもなくひたすら神に助けを求めて祈り続けました。その時、目を上げたリンカーンの目に美しい満月が映りました。

彼は懐にあった暦をめくった瞬間、事件当夜は月など出ておらず、ジェイムズのうそを見破り、ウィリアムの無実を証明できたのです。リンカーンは言います。「神は正義を照らしたもう」と。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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