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エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(15)虐げられる奴隷たち

2024年3月20日10時16分 執筆者 : 栗栖ひろみ
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関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

こうして州議会議員となったリンカーンは、身を粉にして働き、イリノイ州の人々のために尽くしたので、その後二度までも議長候補に選ばれたのだった。その間いつもリンカーンの心にあったのは、アフリカ奥地からこの国に売られてくる奴隷のことだった。かつてニューオーリンズの「奴隷市」を見たときから、いつかは彼らに自由を得させるために働きたいという思いが不動のものとなっていたのである。

土地が広いわりに働き手の少ない米国では、皆喜んで奴隷を買った。特に南部では厳しい暑さのために白人が十分な労働ができないために、多くの奴隷を買い込んで砂糖畑や綿花畑で使った。

彼らは買われたときからその主人の持ちものとなり、労働の道具となるのである。奴隷は主としてアフリカ奥地から奴隷商人によって運ばれてくるのだが、その数はおよそ400万人とされる。彼らはまず奴隷のしるしとして、その胸や手の甲に灼熱した焼き印を押された後、「奴隷市場」で売買される。

その後、せりにかけられ買い主が決まると、その屋敷で朝から晩まで過酷な労働を強いられる。そして少しでも手を抜いたり、失敗したりすると、ムチや棍棒で皮膚が裂け、骨が砕けるほど殴られる。それが恐ろしさに逃亡する奴隷には猟犬をけしかけて追わせ、どこに隠れていようとも見つけ出し、連れ戻された者は身の毛もよだつようなリンチ(私刑)でなぶり殺しにされるのである。

良識ある者たちの中には、この非人道的な「奴隷制度」に対して心を痛め、密かに廃止を願う者も数多くいたが、この問題は根深く、とても一部の者の声など議会に届くはずがなかった。何よりもまず、奴隷制度が国の政策であること。それから――これは英国などでも同様であるが――国の経済を支えるもので、国家の収入源になっていたからである。

リンカーンは、他の政策は後回しにして、まず「奴隷制度廃止」を政策の第一とし、各地を回って講演し、議会でも演説した。しかし、一般の人の関心は驚くほど低く、その意識の低さはリンカーンを驚かせた。同じ議員仲間も、リンカーン個人には敬愛の念を持っていても、奴隷制度の実情には目を背け、社会問題として取り上げることには難色を示す者が多かった。

それでも彼は諦めずに「奴隷制度廃止」の「決議案」を作成し、これを議会に提出した。しかし、反対多数でその「決議案」は通らず、捨てられてしまった。しかし、リンカーンはその写しを取っておき、密かに保管しておいた。「神様、もし気の毒な奴隷たちを解放することが御心なら、いつの日にか、この議案が役に立ちますように」。彼は祈るのだった。

果たして1860年に彼がアメリカ合衆国の大統領になったとき、この「決議案」が基になって「奴隷解放令」の法令が作られたのであった。

ところでこの頃、リンカーンはアン・ラトレッジというニューセーラムの商家の娘と親しくなり、2人はよく町を散歩しながらいろいろなことを語り合った。アンは驚くほど社会情勢というものをよく理解しており、何よりもリンカーンの良き理解者であった。彼女もまた奴隷制度というものに心を痛めていた。

「リンカーンさん、どうか偉くなったら、この奴隷制度をなくしてくださいね」。アンはしばしばこう言うのだった。2人は、アンが学校を卒業し、リンカーンが弁護士の資格を取ったら結婚しようと約束した。

しかしながら、その半年後、アンは流行性肺炎にかかり、あっけなく亡くなった。リンカーンの胸には、「奴隷制」をなくしてくださいねというアンの悲願だけが残された。それからというもの、リンカーンは何をする気にもなれず、心はうつろで、公務にも力が入らず、あれほど情熱を注いできた社会改良の夢も色あせてきたかのように思えてきた。

そんなある日のこと。リンカーンは午前中で公務を切り上げ、珍しく村の酒場で一杯だけ酒をあおり、花を持ってアンの墓に行くことにした。その途中、酒のせいもあるかもしれないが、ひどく眠気がさしてきた。

彼は道端にしゃがみ込むと、うとうとと居眠りを始めた。その時である。子どものすすり泣きが聞こえたので顔を上げると、ボロ着をまとった6歳くらいの男の子が目の前に立っていた。ポケットに穴が空いていたので、稼いだ銀貨を落としてしまったのだという。

「お母さんが病気なの。明日のパンもないの」と子どもは言った。リンカーンは子どもに銀貨を持たせて帰そうとした途端、目が覚めた。いつの間にか眠り込んでいたのだった。

「アン。自分は君との約束をきっと果たすために、弁護士になるよ」。リンカーンは彼女の墓で誓うのだった。

*

<あとがき>

イリノイ州議会議員に選ばれたリンカーンは誠実にその仕事を果たしていましたが、常に心にあるのは「奴隷制度廃止」でした。ニューオーリンズで奴隷市を見てから、いつかは気の毒な奴隷たちに自由を得させたいという悲願が心にあったのです。

しかし、この非人道的な制度を撤廃することは容易ではありませんでした。米国において奴隷制度は、英国と同じくそれが国の政策であり、国の経済を支えるものだったからです。しかし、リンカーンは他の政策は後回しにして「奴隷制度廃止」を政策の第一としました。

一般の人の関心は驚くほど低く、議員仲間の中にも奴隷制度を社会問題とすることに難色を示す人が大勢いましたが、彼は諦めませんでした。何度拒否されても「奴隷制度廃止」の決議案を提出し続けました。

果たして何年か後にこの努力が実を結び、彼がアメリカ合衆国の大統領になったとき、この決議案が基になって「奴隷解放令」の法案が作られたのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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