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エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(22)ささげられた血

2024年6月26日13時47分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

夕暮れ迫る要塞の中。グラント将軍が地図を見ながら作戦を練っていると、ドアが開く気配がしたので振り向いた。そこに痩せた小さな少年が立っており、副官はこう告げた。「密書を届ける使者を全軍から募ったところ、このフランク少年が申し出ました」

グラント将軍はこの少年があまりに小さく、郷里では母と弟が彼を待っているのを知っていたので、許可を与えなかった。すると、少年は言った。

「私は命に代えてもお役目を果たします。だから、行かせてください」。そして、将軍をじっと見つめた。「それに、将軍は私や母さんのことを気遣ってお金を恵んでくださったじゃありませんか」

「いや、私はそんなことは知らんぞ」。「いえ。母さんから返事がきました。その中にお金が送られてきたことが書いてあり、これはきっと将軍が自分たちのことを心にかけてくださったのだと思いました。将軍の温情とリンカーン大統領の理想のために命をまとにしても惜しくありません。どうか行かせてください」

将軍は、静かに少年の肩に手を置き、許可を与えた。やがて副官はフランク少年に農民が着ているボロ着を着せ、その襟に密書がぬい込まれた。その夜、カンバーランドの川岸を伝って歩いている少年を南軍兵士が見つけ、一斉に射撃が始まった。しかし、彼は巧みに銃弾の間をかいくぐり、川に飛び込んで逃げ切ることができたのだった。

その3日後、グラント将軍の密書を指揮官シャーマン将軍に無事手渡したフランク少年は、その返事をふところ深く入れ、四方八方に目を配りながら、ひたすら帰途をたどっていた。

味方の陣地も近いと感じるころ、敵兵の数が増し、ここかしこに銃を構えた兵士の姿があった。そうした間をかいくぐって必死で走るうちに、ついに彼は崖の上に追い詰められた。そこで枯れ草が陥没してできた穴に足を取られ、まっさかさまにその体は断崖を落下していった。

運がいいことに、彼の体は農家の屋根の上に落ちたので、その馬屋から一頭の馬を引き出し、それに乗ってひたすら走った。

味方の要塞が見えてきたその時、近くに隠れている敵兵の姿を見たフランク少年は、そのまま川に、馬ごと踊り込んだ。この時、川原にいた兵士たちは一斉に撃ってきた。必死で向こう岸に渡り、ずぶ濡れのまま馬から降りたその瞬間、一発の弾丸がその肩に命中した。見る見るうちに鮮血が胸いっぱいに広がり、そのまま彼は気を失ってしまった。

どのくらいたったことだろう。目を開けると満天の星空が広がっていた。起き上がろうとしたが、再び倒れてしまった。痺れた手で胸を探ると、血まみれになった密書がまだ奪われずにそこにあった。その時、まぶたに母の顔が映った。

「お立ち、フランク。大切な手紙を大恩のある方に届けておくれ」。そう言っているように思えた。フランクは歩けないので、そのまま6マイルの道を這(は)っていくことにした。

その日の夕暮れ。フランク少年は要塞の義勇兵たちに見つけられ、要塞の中に運び込まれた。そして手を尽くして介護した末、ようやく一命を取り留めたのであった。グラント将軍は駆けつけてきて、その小さな手を握った。

「密書は?」と少年兵は尋ねた。「確かにこの手に受け取った。小さな英雄、グラントは心からお礼を言いますぞ」

このように、グラント将軍やミード将軍のように高潔な指導者たちの下で、義勇兵たちは勇敢に戦った。彼らは全てリンカーンの掲げる「奴隷制度廃止」の高い理想に共鳴したからこそ、自分の血潮も、命もささげることができたのだった。

しかしながら、戦力にかけては圧倒的に南軍の方が勝っており、北軍は次第に追い詰められていった。死者の数は日を追って増加した。こうした敗戦が続くと、北部の人々は不安にさいなまれ、戦争中止の声が上がり始めた。それとともに、リンカーン大統領を批判する声が各地で上がり、義勇兵の中にも故郷に帰ってしまう者が出てきた。

「あれほど熱心に自分を引き立て、大統領になったのを喜んでくれた人々が、敗戦が続くと、私を見捨てるのか」。リンカーンは針のむしろに座っているような気がした。

1862年。南軍の侵攻はワシントンに迫り、ホワイトハウスも安全でなくなってきた。そんな時、リンカーンの愛児ウィリー(ウィリアム)が死去した。その悲しみの中にありながら、この戦争のさなかに、リンカーンは「奴隷解放宣言」を出したのだった。

*

<あとがき>

グラント将軍の下にはフランクという勇敢な少年兵がいて、彼は自分の命を犠牲にして敵の包囲網を潜り抜け、大切な密書を指揮官であるシャーマン将軍に届けたという美談が残されています。まだ年のいかない少年に、なぜこのような行為ができたのかといえば、彼らは全てリンカーン大統領の「奴隷制度廃止」という高い理念に共鳴し、自分の命を捨てようとも使命を全うしようとしたからです。

しかし、何といっても北軍よりも南軍の方が戦術にたけており、北軍の若い兵士たちは次々と死んでゆきました。これを見た人々は若者の血が無駄に流されるこの無意味な戦争をなぜ続けるのかとリンカーンを非難し、その声は日増しに強くなっていきました。

リンカーンは、まさに針のむしろに座る思いだったでしょう。そして彼の愛児ウィリーも死去しました。しかし、こうした苦悩のどん底にあっても、彼は最後の力を振り絞って「奴隷解放宣言」に署名したのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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