Skip to main content
2025年7月7日07時02分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(7)愛は正義に勝る

2023年11月29日09時42分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

こうして、昼は父を助けて森や畑で働き、夜は遅くまで勉強に励むエイブを父も母も誇りに思っていたが、時々むちゃをするのを見ると体を気遣うのであった。この頃、エイブは法律関係の本を読むようになり、今『イリノイ州法規』という本に挑戦していた。大変難しい内容であったが、熱心に取り組むうちに少しずつ国の法律が分かってきた。

実はこの本も農作業を手伝いに行ったある農家からもらってきたのだった。エイブの本好きはこのあたりで有名になっており、『イソップ物語』『ロビンソン漂流記』『フランクリン自伝』などを一心に読み、読んだ本は全て暗記するほど彼の血となり肉となったのであった。そのうち、エイブはただ法律の本を読むだけでなく、時々裁判を傍聴するために裁判所にも足を運ぶようになった。

そんな時、ブーンヴィルという町の裁判所にブレッキンリッジという有名な弁護士が来てある事件を弁護することを聞いた彼は、幼友達のジョンと一緒に出かけていった。これは「ウィルキンソン裁判」といって、後々まで人々の記憶に残るものとなった。ウィルキンソンという老人が他人の畑の作物を盗んだ罪で裁かれることになったのであるが、当時、農民が他人の畑に侵入して作物を盗むということには厳罰が課せられていたのだった。

いよいよ公判となると、ブレッキンリッジ弁護士は立ち上がり、こう弁護したのである。「ウィルキンソンは片目がつぶれ、もう片方もほとんど見えない70歳の老人であります。彼の一人息子とその嫁は昨年伝染病に感染して死にました。そして5歳と3歳になる孫が残され、ウィルキンソン老人は2人を養っていかねばならなくなりました。貧困にさいなまれ、働き口も見つからず、しかも目も見えない彼に何ができましょう。それで悪いと知りつつ、他人の畑に忍び入り、畑の作物を盗んだのです。そうしなければ、孫たちを養えなかったからです。そこでウィルキンソン老人は、小麦の穂を少しずつ、少しずつ盗んで孫に食べさせたのです。どうか裁判長、情けある裁判をお願いいたします」。こう述べてから彼は、ボロを着た2人の子どもを抱き上げて傍聴人に見せた。すると、傍聴席にいた者は皆泣き出したのである。

やがて判決を申し渡す時が来ると、裁判長は涙を拭い、立ち上がって宣言した。「事情はよく分かった。同情すべき点はあるが法を曲げることはできない。ウィルキンソン老人に1カ月の禁錮を申し渡す」。それから、今度は聴衆に向かって言った。「しかし、今皆さんにお願いする。その間、どうかこの2人の子どもの面倒を見、大切に扱ってほしい。それから、ウィルキンソン老人が出所したら、村の教会の門番にでも雇ってあげられるようにしてほしい。そうすれば、老人と孫たちは一生安らかに暮らすことができるだろうから。これは裁判長としての判決ではない。私一人の心からの願いであり、皆さんの温情を心から期待するものであります」

そして、裁判長は聴衆に向かって深々と頭を下げたのである。聴衆は思わず歓声を上げ、拍手は会場に響き渡った。エイブは感動のあまり、しばらく席を立つことができなかった。まだ彼が小さいとき、最初の母ナンシーがこう言ったことがあった。「エイブ。神様の義(正しさ)と愛は一つなのよ。だから愛のない裁きはないの」。今、彼はしみじみその意味が分かるような気がした。(そうだ。法は絶対曲げてはならないもので、悪に対しては裁きが必要だ。けれども、その中に愛がなければならないのだ)

「今日の裁判はいろいろ勉強になったね」。友人のジョンが言うと、エイブは深くうなずいた。「ああ。法律というものは、不幸な人を保護するためにできたものだということが分かったよ。そうして、弁護士というのは弱い者や気の毒な人の味方をしてあげられる職業だということも」。「エイブ。ぼくはとても弁護士なんかになれないが、君ならなれる。君にぴったりの職業だよ。でも、それにはこんな寂しい場所に引っ込んでいてはだめだ。もっと広い世間に出て、たくさんの人と会ったり、経験を積まなけりゃ生きた勉強はできないよ」

エイブは親友の忠告を受け、考えた末に、オハイオ州の渡し舟の船頭になる決心をした。それは、いろいろな客と話をすることによって世間の様子も分かるし、政界の事情も分かるし、何よりも稼いだお金で、いろいろな本を買って勉強ができるからであった。

*

<あとがき>

エイブが弁護士を志すようになったのは、社会の片隅で苦しんでいる貧しい人や弱い立場の人を助けたいという願いからですが、彼の心に強い決意が生まれたのは、有名な「ウィルキンソン裁判」を傍聴したのがきっかけだといわれています。

やむを得ない事情から隣の農家の作物を盗んだウィルキンソンという老人に対し、ブレッキンリッジという弁護士が温情ある弁護をし、裁判長も、法は曲げられないが、1カ月の禁錮となった老人が出所するまで孫たちの世話をしてほしいことと、彼のために勤め口を見つけてやってほしいことを、頭を下げて頼むのでした。

この裁判に感動したエイブは、法律というものは、不幸な人を保護するためにあることをしみじみ思うのでした。彼の胸には、亡き母ナンシーがよく口にしていた「神様の義と愛は一つだから、愛のない裁きはないのです」という言葉が刻みつけられていたのです。私たちもこの言葉を心に銘記し、隣人に対して親切で寛容でありたいと思います。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:エイブラハム・リンカーン
  • ツイート

関連記事

  • 奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(6)小さな命を守る

  • 奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(5)ぬれた『ワシントン伝』

  • 奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(4)神に感謝、人に親切

  • 奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(3)新しい母

  • 奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(2)神はあわれみ深い方

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 苦しみというプレゼント 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(7月7日):カメルーンのラカ族のために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(7月6日):タイ 麗しきかな、良き知らせを告げる者の足は

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 聖書のイエス(12)「初めに、ことばがあった」 さとうまさこ

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • 苦しみというプレゼント 菅野直基

  • 日本キリスト教協議会、米軍によるイラン核施設攻撃に抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.