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エイブラハム・リンカーンの生涯

奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(8)苦しむ者の願い

2023年12月13日18時43分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:エイブラハム・リンカーン
奴隷解放の父―エイブラハム・リンカーンの生涯(1)プロローグ―荒野を旅して+
エイブラハム・リンカーン(1863年撮影)

エイブは、20キロほど離れたアンダーソン・クリークという所で、渡し舟の船頭をして働くようになった。重労働であり、一日働く賃金は37セントにしかならなかったが、彼には大志があったので一生懸命に働いた。

アンダーソン・クリークは、オハイオ川に流れ込んでおり、オハイオ川には汽船やいかだが並んでいた。そこへ小舟をこぎ寄せて、乗客を汽船に乗船させるのが主な仕事であった。

たまに客の中で3セント、5セントのチップをくれる人がいたが、それをためて好きな本を買うのが何よりの楽しみだった。エイブは客を丁寧に扱い、親切に手を添えて上船を手助けしたので、客の間で大変評判が良かった。

エイブは、この仕事をするうちに、いろいろな人の会話を通して世間の様子がよく分かるようになった。政治の中心であるワシントンの町の様子や有名な学者や政治家たち、そして大統領のうわさも耳に入った。

それにしても、権力者たちや金持ちが、どん底生活をしている貧しい者や移民たちを搾取し、彼らの苦しみを土台にして繁栄を築いている事実を聞かされたときには、エイブの胸は痛み、憤りが火のように燃えるのだった。

さて、そんなある日のことである。エイブが川岸に座っていると、2人の紳士が駆けて来た。「おーい、待ってくれ! あの汽船に乗り遅れたら大変だ!」見ると、大きな汽船は今にも汽笛を鳴らして出航しそうな様子だった。

「おい、船頭さん、頼むよ」。「大丈夫」。エイブはポンと胸をたたいた。「間に合わせてあげますよ」

そして小舟に彼らを乗せ、力いっぱいこぎ始めた。今にも汽笛が鳴りそうで、胸がドキドキしたが、彼はありったけの力を出した。「大丈夫か?」「大丈夫です」。彼はしっかりした声で言った。

2人の紳士はハラハラしながら、エイブの手元を見つめていた。実際、それは神わざとも言えるほどのものだった。(この人たちを何とかしてあの汽船まで送って差し上げるんだ。もっと早く!もっと早く!)

エイブは心の中でそうつぶやきながら、腕が折れるかと思われるほどオールを動かした。「やっと間に合った!」ぴたりと汽船の横に小舟を密着させると、エイブは叫んだ。2人の紳士は汽船に乗ることができた。エイブは、カバンを投げ入れてあげた。

「ありがとう。これは渡し賃だ」。一人がそう言うと、50セント銀貨を2つエイブの小舟に投げ入れた。「ええ? こんなに? おつりがありませんよ」。「いいんだ、取っておきたまえ。本当に助かったよ」。2人の紳士はにこにこして言うのだった。

その瞬間、汽笛が鳴り響き、汽船は出て行った。エイブは力いっぱい手を振った。すると紳士たちも手を振るのだった。(どんな人にも親切を尽くしなさいと聖書に書いてあるけど、本当だな)エイブは2つの銀貨を見つめてつぶやくのだった。

家に帰ると、彼は母サリーに今日の出来事を話し、2つの50セント銀貨を見せた。そして、その1枚で欲しかった本を買い、あとの1枚を家計に入れるために母に渡した。すると母は、首を横に振り、銀貨を2つとも彼の手に握らせて言うのだった。

「いいえ、エイブ。これを全部使って本を買いなさい。そうして、一生懸命に勉強して、気の毒な人を助けるために働くのです。このお金はきっと、あなたが将来立派な仕事に就いて、この国の――いいえ、世界中の苦しむ人の助けとなりなさいという神様のおぼしめしですよ」

その時、エイブは初めて母サリーに、将来弁護士になって苦しんでいる人を助けたいという志について語った。すると母はエイブを抱きしめ、その頭に手を置いて祈ってから、いつも自分が愛読している聖句を口にするのだった。

飢えた者に心を配り、
苦しむ者の願いを満たすなら、
あなたの光は闇の中に輝き上り、
あなたの暗闇は真昼のようになる。(イザヤ書58:10)

*

<あとがき>

エイブは、アンダーソン・クリークで渡し舟の船頭をして働き始めました。これはエイブの将来にとって大変役立つことになりました。なぜなら、乗客の会話を通して政治の中心であるワシントンの様子や、政治家、実業家たちの言動が手に取るように分かるからでした。

そして彼は、地位ある人や金持ちが、どん底生活をしている下層階級の者たちを搾取し、虐げている事実を聞くたびに怒りに燃え、持ち前の正義感から、いつかは弱者の味方になって彼らの生活を守ろうと決意を新たにするのでした。

そんな時、出航間近の汽船に間に合わせてあげた紳士から、エイブは思いがけなく銀貨2枚をもらうのですが、母サリーは言います。「そのお金を全て使って本を買い、一生懸命勉強しなさい」と。そして彼にイザヤ書を読み聞かせ、苦しむ者の願いを満たしてあげるなら、きっと神様はその者を守り、祝福してくださる――と言って励ますのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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