カナダで成立したヘイト対策法を巡り、カナダ福音同盟(EFC)が声明(英語)を発表した。同法に対しては、宗教的な問題に関する言論の自由の保護を弱めるものだと指摘する声が上がっており、EFCも懸念を表明した。
ヘイト対策法は、反ユダヤ主義やイスラム嫌悪など、憎悪を動機とした事件の増加を受け、カナダ政府が法案を提出した。宗教・文化施設への妨害・脅迫行為の犯罪化、刑法上の憎悪に関する定義の新設、ヘイトクライム(憎悪犯罪)に対する新たな加重処罰規定などを盛り込んでいる。
既存の刑法を改正するもので、審議中はC-9法案として扱われ、6月17日に下院が上院の修正案を承認した。翌18日に国王裁可を受けて成立し、7月18日に施行される。
同法の成立により、憎悪を意図的に助長したとして起訴された人は今後、善意に基づいた宗教的発言であることを理由に抗弁を行うことができなくなる。EFCは、この種の抗弁は引き続き認められるべきだと主張している。
同法の成立に伴い撤廃されたのは「善意の宗教的信念の抗弁」。これまで50年以上にわたって規定され、信者が宗教的信念を誠実に語った場合、それが意図せずヘイトスピーチに問われることを防ぐ役割を果たしてきた。
今後も、真実性、公益性、憎悪表現を除去する目的の指摘を理由とする3つの抗弁は維持される。しかし、これらはいずれも真実性や意図を証明することを前提としており、善意の宗教的信念という動機そのものを保護するものではない。EFCはこの違いのために、信者が宗教的教義を語る際の法的なよりどころが失われることに懸念を示した。
一方、EFCは、これまでに憎悪を意図的に助長したとして起訴された例は極めて少ないことも指摘している。その理由には、有罪となるためには、特定の集団に対する憎悪を助長する明確な意図がその人物になければならないという法的な要件があることが挙げられる。また、私的な会話には適用されないことも一つの理由となっている。
EFCはさらに、これまでに「善意の宗教的信念の抗弁」を適用したケースはごくわずかで、それが成功した事例もないと補足。それでも、EFCとしては、この抗弁が言論の自由を保護するための「重要な安全策」だと考え、存続を求めてきた。
EFCは次のように述べ、同法の影響が未知数であることを認めている。
「(善意の)宗教的信念の抗弁が削除されたことが、時間の経過とともにどのような影響を及ぼすのか、またその撤廃によって『憎悪の意図的な助長』の解釈が拡大される可能性があるのかは明らかではありません」
カナダのショーン・フレイザー法相は、今後も「刑事罰を恐れることなく、祈り、説教し、教え、聖書を解釈し、善意に基づいて宗教的信念を表明できる」と述べている。
EFCは声明で、「私たちは、宗教的信念の実践や表明を善意に基づいて行うことは、そもそもヘイトクライムには当たらないことを明確にするようなアプローチを歓迎します」と表明。今後、同法の影響を注視するとともに、引き続き信教の自由を求めて提言を続けていくとしている。


















