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【書評】ディートリヒ・ボンヘッファー著『教会の本質』

2026年6月29日23時03分 執筆者 : 臼田宣弘
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関連タグ:ディートリヒ・ボンヘッファー
【書評】ディートリヒ・ボンヘッファー著『教会の本質』+
ディートリヒ・ボンヘッファー著『教会の本質』(新教出版社、1976年9月)

新教出版社の「新教セミナーブック」シリーズの一冊として出版されている『教会の本質』は、「教会の本質」「キリスト教倫理は存在するか」「説教」の3部で構成されている。本稿においては、本のタイトルにもなっている「教会の本質」(5~100ページ)について執筆したい。以下、「本書」と表すものは、この部分である。

前回書評を執筆した『創造と堕罪』は、前々回執筆した『行為と存在』で哲学的に論じられていた行為と存在の問題を、「創造と堕罪」という旧約聖書の証言に基づいて神学的に再構築した書である。それに対して「教会の本質」は、序章の記述から、『行為と存在』の後半部で論じられていた、教会における行為と存在の問題を、教会論的に再構築した書ではないかと思われる。

『創造と堕罪』は、ディートリヒ・ボンヘッファーが1932年11月から33年2月にかけて、ベルリン大学で行った講義を後に著作にしたものであるが、本書はその前の32年夏学期の講義をまとめたものである。『行為と存在』執筆後、米国留学を経た時期のものだ。ただし、オリジナルの原稿は失われており、受講生2人がノートに書き留めていた内容を基に著作化されている。

ところで、『行為と存在』よりさらにその3年前に執筆された、彼の最初の著作である『聖徒の交わり』では、教会が「集合人格(Gesamtperson)」として理解されている。集合人格とは、多くの人格が相互の交わりの中で一つの人格的統一を形成する現実であり、その特徴として、教会における統一性・多様性・交わりが論じられる。

この教会の集合人格論は、本書の第2部「教会の形」において、さらにキリスト論的に再構成されている。『聖徒の交わり』では、教会そのものが集合人格として理解されていたが、本書ではアダムが古い人類を代表する集合人格、キリストが新しい人類を代表する集合人格として位置付けられる。

そして教会は、キリストにおける「新しい人類(neue Menschheit)」として理解されている。本書の教会論は、単に教会制度や組織を論じるものではなく、「アダムにおける集合人格」と「キリストにおける新しい人類」との対比を通して、教会とは何かを問い直す試みなのである。

ボンヘッファーは本書で、「教会は、アダムにおける人間を排除しつつ、しかしまたふたたび内に含みつつ、その基礎の上に立てられた集合形である」(29ページ)としている。アダムを否定するが、アダムをなかったことにはしない。教会とは、アダムにある人類の現実を抱えつつ、キリストにおいて成立する「新しい人類」の共同体なのである。

『聖徒の交わり』における「集合人格」は、本書において「新しい人類」という概念へとキリスト論的に再構成されているように思われる。そしてそれこそが、ボンヘッファーの言う「教会の形」なのであろう。

本書の翻訳を手がけたのは、3年前に亡くなられた東北学院大学名誉教授の森野善右衛門先生である。森野先生には、韓国でのセミナーや、先生が巡回教師を務められていた日本基督教団関東教区などでお世話になった。ボンヘッファーの専門書を多数翻訳・執筆されているが、そばで触れさせていただくと、温厚で笑顔に満ちた方であった。心から感謝を申し上げたいと思う。

■ ディートリヒ・ボンヘッファー著『教会の本質』(新教出版社、1976年9月)

◇

臼田宣弘

臼田宣弘

(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。

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