新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

2019年8月29日12時19分 コラムニスト : 川口一彦 印刷
関連タグ:川口一彦

敦煌で発見された景教文書について

この地で、以下に掲載する景教経典と讃美書が発見されました。「・・讃」は讃美書のこと、「・・経」は聖書類のもの、「・・論」とは教理書のこと。

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦
新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

一神論の中の世尊布施論の末尾に641年と書かれています。太宗皇帝の貞観15年のことで、序聴迷詩所経も阿羅本による翻訳書殿での作と考えられます。なぜなら両者とも同じ紙質と同じ書体であるからです。

ところが、この当時の年代は主の降誕を紀元後1年として計算しているとするなら、現在分かっているように降誕年を紀元前4年ないし5年として計算し直すと、著作年が違ってくることになります。ここでは当時のままとしました。

序聴迷詩所経と一神論、大秦景教宣元至本経、志玄安樂経の原本は現在、大阪にある武田科学振興財団の杏雨書屋が所蔵しています。

序聴迷詩所経と一神論の冒頭部分

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

大秦景教宣元至本経と忌字

「民」の一画の横線が欠けているのは、李世民の忌字で、「民」を使用するときは変化させるのが常識となっていました。唐代で景の字が現代の景でないのは、皇帝の親族に景の字がつく人物がいて忌字となっているからで、景はすべて変化させています。それにより、唐代に書かれたかどうかも判別できます。

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

志玄安樂経

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

次の2つの書物の最終行には「沙州大秦寺」とあります。沙州は敦煌で、大秦寺は景教会堂のことです。大秦景教宣元至本経は、開元5(717)年10月26日に沙州大秦寺において原書から写したと書かれています。

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

大秦景教大聖通真歸法讃は、開元8(720)年5月2日に沙州大秦寺において写したと書かれています。父なる神を大聖慈父阿羅訶と書いています。阿羅訶は、エロヒームのシリア語訳の当て字です(創世記1章1節の神と訳されたヘブル語エロヒーム、シリア語訳でエルカの当て字)。慈しみ深き父なるお方は、栄光に輝く方であることを賛美した書です。本書ではダビデを多恵と漢訳しています。

この書の中の「民」の字が2カ所あり、共に一画欠けて忌字となっています。

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

大秦景教三威蒙度讃、尊経

三威蒙度讃は、ペリオが敦煌莫高窟で発見。景教徒たちが洗礼の式典のときに賛美したものと考えられます。三威は父・子・聖霊(浄風)。いと高きところに栄光が父にあるようにと賛美した書。シリア語で書かれていたものを漢訳したものです。

尊経には、聖書類や聖書記者たちが列記されています。ダビデの詩篇は多恵聖王経、マタイは明泰、パウロは寶路などと漢訳しています。原訳は初代宣教師の阿羅本によるものですが、彼の後で景浄が増補追加していることが書かれています。

新・景教のたどった道(17)敦煌で発見された景教文書について 川口一彦

<<前回へ     次回へ>>

※ 参考文献
景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教

川口一彦

川口一彦(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

【川口一彦・連絡先】
電話:090・3955・7955 メール:kei1951-6@xc.so-net.ne.jp

フェイスブック「川口一彦」で聖句絵を投稿中。また、フェイスブック「景教の研究・川口」でも情報を発信している。

【川口一彦著書】(Amazon)
【川口一彦著書】(イーグレープ)

HP:景教(東周りのキリスト教)
フェイスブック「川口一彦」
フェイスブック「景教の研究・川口」

関連タグ:川口一彦

関連記事

クリスチャントゥデイからのお願い

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。記事の一つ一つは、記者や翻訳者、さらに編集者の手などを経て配信されているものです。また、多くのコラムニストや寄稿者から原稿をいただくことで、毎日欠かすことなくニュースやコラムを発信できています。

この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、読者の皆様にはぜひ、祈りと共に、毎月定期的にサポートする「サポーター」として(1,000円/月〜)、また単発の「サポート」(3,000円〜)によって応援していただきたく、ご協力をお願い申し上げます。支払いはクレジット決済で可能です。申し込みいただいた方には、毎週のニュースやコラムをまとめた申込者限定の週刊メールマガジンを送らせていただきます。サポーターやサポートの詳細、またクレジットカードをお持ちでない方はこちらをご覧ください。

コラムの最新記事 コラムの記事一覧ページ

人気記事ランキング

おすすめのコンテンツ【PR】

コラム

主要ニュース