新・景教のたどった道(14)高昌においてシリア語による降誕賛美礼拝をしていた景教徒たち 川口一彦

2019年7月18日12時02分 コラムニスト : 川口一彦 印刷
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発見された祈祷書と賛美集

現在の中国新疆ウイグル自治区のトルファン、唐代の高昌にあった景教会堂では、降誕節にシリア語で賛美礼拝をしていました。1905年に高昌故城を調査するために団長として入ったドイツ人の考古学者で探検家のル・コック(1860〜1930)が発見した、景教徒たちのシリア語賛美集で分かります。

新・景教のたどった道(14)高昌においてシリア語による降誕賛美礼拝をしていた景教徒たち 川口一彦

9~10世紀ごろの作と思われる、両面シリア語で書かれた降誕に関しての祈祷集(上)と賛美集の断片4枚(下はその一部)です。

新・景教のたどった道(14)高昌においてシリア語による降誕賛美礼拝をしていた景教徒たち 川口一彦

1027行、800語で書かれ、景教徒たちによる降誕のメシアへの賛美が多く、三位一体の神の栄光をたたえています。内容は教会暦の中で用いられた降誕記念節の聖餐式礼拝での賛美と祈祷文ですが、日付が無記で、降誕記念日がいつであるか判明できないのが残念です。

このシリア語文を佐伯好郎著『景教の研究』から現代語に部分訳して紹介します。

私たちの喜びは尽きない。神に愛されている者は集まろう。

私たちの罪咎(とが)を赦(ゆる)し、救いを与えられたメシアの御体と御血は命の祭壇の上に置かれている。メシアは教会に臨在しておられる。心を整えて聖餐に近づこう。

聖霊は父なる神と本質を同じくし異なることなし。さあ集まろう。

すべての民よ、聖なる思いで救い主に近づこう。救い主の本質は隠されているが、あなたがたはその奥義を知ることをゆるされた。

私たちは私たちの罪咎を赦し、救いを与えられたメシアを賛美し、たえずハレルーヤ、ハレルーヤとたたえる。聖子(みこ)は処女より生まれ、インマヌエルとたたえられた。

私たちのために救い主は生まれた。処女マリアは神の本質であるメシアを、今日ダビデの村で産み、救い主は私たちの犠牲の子羊で、聖餐は私たちの命の糧。私たちは畏れつつメシアの聖なる御名をたたえる。聖子は神と人とを和らげるために世に降られ、私たちに平和と喜びを与えられた。

聖子は永遠の命をすべての国々の民に与える神の独り子。羊飼いたちはみなよろこび、東方の博士たちも貢物をささげに来た。天使たちも声合わせて賛美を子羊(メシア)にささげた。

「いと高き神に栄光が、地には平和が、人には恵みがあるように」と声をあげて歌う。「マリアによって生まれた救い主にハレルーヤ、ハレルーヤ」

「恵まれた者よ」と言われた神の祝福は処女マリアに告げられ、マリアは「あなたは、不思議で奇しき男子を産む」との御声を聞き、その奇しき聖子は天地万物を統治される救い主。

平和の福音は天使ガブリエルが処女マリアに伝えたよろこびのメッセージ。マリアは王なるメシアを奇しき家畜小屋で産み、一夜を過ごし、アダムによって罪はすべての人に及んだが、救い主の流された血潮によりすべての人の罪を贖(あがな)うために救い主は世に遣わされた。人々よ、よろこべ。

天にも地にも大いなるよろこびが起きた。天使たちの声である。「いと高きところに栄光が聖父に、地には平和、人には恵みがあるように。人々はよろこべ、永遠の救い主は生まれられた」

神よ、あなたがよろこびをもって遣わされたあなたの聖子はあなたの民の羊飼い。救い主よ、あなたの人格(「プロソーポス」、英語でパーソン)は1つであって2つではない。(※1人格者で2人格者でないことを表明)

人は勇士といえども正しき道を失えば、空しく全軍の勝利を失う。それゆえ私たちは穢れもしみもなく、正しい信仰の道に歩むことに努める。私たちの父なる神の右に着座された仲保者(メシア)よ、あなたの御手により私たちを守りたまえ。

私たちに約束されたあなたの御国は十字架で、あなたの十字架は堅固、悪魔の危害から私たちを守る主の十字架。聖なる主の御体と御血とにより主の御業の偉大なる勝利をたたえん。私たちは主の大いなる御業を想い起こすたびに主を賛美する。

栄光はいつまでも三位一体の神にあるように。私たちは主を賛美し、主の力が私たちを守り、私たちを平和に導く。主は万物よりも尊く、万物に優りて賛美される神なり。アーメン。

主よ、私たちに力を与え、私たちの教会を新しく聖別し、教会の規律と秩序を再び定めることを得させたまえ。

あなたの基(もとい)はすべて聖書にあり。

以上は、景教徒の教会暦降誕節における賛美礼拝のシリア語文ですが、筆者は以前、拙著『景教のたどった道』において一部を紹介しました。父・子・聖霊の三位一体の主が賛美され、降誕の時の様子も書かれています。ハレルーヤ、ハレルーヤで満ちあふれた賛美集会の様子が浮かんできます。

クリスマスという言葉がラテン語のクリスト・ミサで西方ローマ教会発祥ゆえに、景教徒たちはシリア語で礼拝していたのでクリスマス用語は使用していません。またイエス・メシアの「神・人二性一人格」の教えが書かれていて異端性がなく正統信仰であることも表明しています。

栄光がいつまでも、全地であがめられる神、我らの父・子・聖霊にあるように。

新・景教のたどった道(14)高昌においてシリア語による降誕賛美礼拝をしていた景教徒たち 川口一彦
シリア語ぺシッタ訳、新約聖書ヨハネの福音書3章の一部

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※ 参考文献
景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
旧版『景教のたどった道―東周りのキリスト教
佐伯好郎著『景教の研究』([復刻]名著普及会、1978年)

川口一彦

川口一彦(かわぐち・かずひこ)

1951年、三重県松阪市生まれ。愛知福音キリスト教会宣教牧師、基督教教育学博士。聖書宣教、仏教とキリスト教の違い、景教に関するセミナーなどを開催。日本景教研究会(2009年設立)代表、国際景教研究会・日本代表を務める。季刊誌「景教」を発行、国際景教学術大会を毎年開催している。2014年11月3日には、大秦景教流行中国碑を教会前に建設。最近は、聖句書展や拓本展も開催している。

著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ―新装改訂版―』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。

【川口一彦・連絡先】
電話:090・3955・7955 メール:kei1951-6@xc.so-net.ne.jp

フェイスブック「川口一彦」で聖句絵を投稿中。また、フェイスブック「景教の研究・川口」でも情報を発信している。

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