三浦文学の魅力と底力(最終回)三浦光世・綾子夫妻の素顔 込堂一博

2019年6月28日12時37分 コラムニスト : 込堂一博 印刷
+三浦文学の魅力と底力(最終回)三浦光世・綾子夫妻の素顔 込堂一博
三浦綾子記念文学館のパネル写真

今年2019年は、三浦綾子さん没後20周年、光世さん没後5周年です。主の不思議な導きで、北海道の千歳から旭川に転任し、教会から徒歩2分の所に住んでおられた三浦夫妻と出会い、親しい交流が与えられました。6月15日に私は、出身教会である横浜のシャローム福音教会創立50周年記念講演会に講師として招かれました。「私が知る作家 三浦綾子ご夫妻の素顔」という講演題を教会側から与えられました。そこで語ったことをベースに、「三浦夫妻の素顔」をまとめて、本コラムの最終回とさせていただきます。

1. 信仰の人――聖書通読・祈り・主日礼拝出席

三浦夫妻の最も著しい特色は、クリスチャンであることを、いつでも公言していたことでした。時々この現実社会で、クリスチャンであることを公にすることが難しいことがあります。しかし三浦夫妻は、いつでも、どこでもクリスチャンである旗印を鮮明にしてこられました。そしてこのことが、クリスチャンとして生きる覚悟を強固にしたともいえるでしょう。

三浦夫妻は、お元気な時には、毎朝の朝食前に旧約聖書3章、新約聖書1章を通読されていたことを証言されています。個人的に聖書通読することも大事ですが、夫婦で一緒に聖書通読することは、夫婦の絆を一層強める役割を果たしたに違いありません。さらに夫妻は、必ず祈りをもって『氷点』などの作品を執筆されました。三浦文学は、「愛と祈りの文学」といわれるゆえんです。月曜日から土曜日まで、基本的に執筆の仕事をして、日曜日は完全休養日で礼拝の日。綾子さんは、日曜日が最も楽しい日と語っていました。三浦夫妻の日々は、聖書通読、祈り、主日礼拝出席と、信仰生活の基本的3本柱が揺るがぬものでした。

2. 夫婦愛の人――互いへの尊敬と思いやり

次に三浦夫妻の特筆すべきことは、その麗しい夫婦愛です。光世さんは、綾子さんとの結婚を決断するに当たり、「堀田綾子を愛する愛をください」と真剣に祈られたといいます。これは単に1回だけの祈りではなく、結婚生活40年にわたり、光世さんは毎日主に向かって、「あなたのご愛を与えてください」と祈られたに違いないと推測できます。光世さんは機会あるごとに「綾子はめんこい(かわいい)」と愛情表現され、健康管理のために綾子さんのマッサージを欠かすことがありませんでした。一方、綾子さんは、「私の夫は世界一の夫です」と公言されてはばかりませんでした。70代になっても、夫妻が仲良く腕を組んで町内を散歩する姿を幾度か見掛けることがありました。

3. 牧師、伝道者の働きに対する尊敬――その愛の実践

三浦夫妻は、牧師、伝道者、宣教師の働きそのものに対して大きな尊敬を常に持たれていました。年齢の老若、経験のあるなしは関係がありませんでした。日本においては、牧師の社会的地位は決して高くなく、時には軽く見られ、伝道の困難に直面することも多々あります。経済的困窮を体験されている牧師たちもおられます。

三浦夫妻は、そのような牧師、伝道者、宣教師たちに常に励ましと尊敬の言葉を口にされました。そして言葉だけではなく、実際的な贈物などを通して励まし続けられました。

神は正しい方であって、あなたがたの行いを忘れず、あなたがたがこれまで聖徒たちに仕え、また今も仕えて神の御名のために示したあの愛をお忘れにならないのです。(へブル6:10)

4. 与える人――一生を終えて残るものとは

「受けるより与える方が幸いである」(使徒20:35)という聖句がありますが、三浦夫妻は、常に与えようという姿勢で生き抜かれました。ベストセラー作家として、地域の高額所得者として知られていましたが、ごく普通の住宅に住んでおられたので、三浦宅を訪れた多くの編集者たちが驚いたと聞いています。著名人でありながら、偉ぶることは一切なく、謙虚でつつましい生活を一貫して続けられました。

私が仕えていた旭川めぐみキリスト教会は、三浦夫妻の旧宅を譲り受けて開拓伝道が始まりました。礼拝人数が増えて、新会堂建設の話が浮上したとき、三浦夫妻は、旧宅裏の隣接地数十坪の土地をも教会に寄贈してくださいました。

子どものいなかった三浦夫妻は、自分たちが亡き後、自宅と土地、預貯金、著作権などを三浦綾子記念文学館を運営する財団法人に移譲する法的手続きも済ませておられました。

一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである。(『続氷点』)

5. 伝道の情熱に燃えていた人――キリストの伝道者

三浦夫妻は結婚当初から、自分たちの幸せのためだけに結婚するのではなく、結婚を通じて主に仕え、キリストの福音を伝えようと固く決心しておられました。結婚間もなくして綾子さんが雑貨店を開業したのも、その店を通じて近所の人々と触れ合い、キリストを知らせたいというのが主な目的でした。

あの『氷点』執筆の動機もしかりです。旧宅を教会に寄贈し、新しく建てた自宅前には、教会案内と聖句を掲示できる掲示板を設置しました。その掲示板には、トラクトや教会を案内する文書も張られていました。毎年12月に、三浦宅で開かれていた子どもクリスマス会は有名です。毎回100人余りの子どもたちが集い、40数年(綾子さん没後も継続)続けられました。子どもたちへのクリスマスプレゼントを含め、これらの経費すべては、三浦夫妻が負担されました。幼い時に、この子どもクリスマス会に参加したことのあった近藤重信兄は、40代半ばで信仰を持って受洗されました。

三浦文学の魅力と底力(最終回)三浦光世・綾子夫妻の素顔 込堂一博
同上

神と人とを愛されて、この地上人生を駆け抜けた三浦夫妻には、次の聖句がぴったりと似合います。

信仰によって、アベルはカインよりもすぐれたいけにえを神にささげ、そのいけにえによって彼が義人であることの証明を得ました。神が、彼のささげ物を良いささげ物だとあかししてくださったからです。彼は死にましたが、その信仰によって、今もなお語っています。(へブル11:4)

(終わり)

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込堂一博

込堂一博(こみどう・かずひろ)

北海道室蘭市生まれ。聖書神学舎卒業。現在、屯田キリスト教会協力牧師、三浦綾子読書会相談役。著書に『人生の先にある確かな希望(天のふるさと)』『三浦綾子100の遺言』『終わりの時代の真の希望とは~キリストの再臨に備えて生きる!』他。

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