コヘレト書を読む(22)「神を畏れる」―太陽の下の世界がどうあっても― 臼田宣弘

2019年5月2日08時27分 コラムニスト : 臼田宣弘 印刷

8 人は霊を支配できない。霊を押しとどめることはできない。死の日を支配することもできない。戦争を免れる者もない。悪は悪を行う者を逃れさせはしない。9 わたしはこのようなことを見極め、太陽の下に起こるすべてのことを、熱心に考えた。今は、人間が人間を支配して苦しみをもたらすような時だ。10 だから、わたしは悪人が葬儀をしてもらうのも、聖なる場所に出入りするのも、また、正しいことをした人が町で忘れ去られているのも見る。これまた、空しい。11 悪事に対する条令が速やかに実施されないので、人は大胆に悪事をはたらく。12 罪を犯し百度も悪事をはたらいている者が、なお、長生きしている。にもかかわらず、わたしには分かっている。神を畏れる人は、畏れるからこそ幸福になり、13 悪人は神を畏れないから、長生きできず、影のようなもので、決して幸福にはなれない。(8:8~13、新共同訳)

このコラムも22回になりました。私自身も書きながら、いろいろ学ばせていただいていますが、同時に無力感に陥ることもあります。ここ数年、コヘレトについてかなりの学びをして知識を得たつもりではあったのですが、それは取るに足らないものであると感じることがあるからです。少し学んだことにより、自分が何か特別なものを得たかのような錯覚に陥る者であることを痛感させられます。そんなことで無力感に陥ることがあるわけです。

少し方向性は違うかもしれませんが、いにしえの人、コヘレトも、そんな無力感を覚えていたのではないかと思わされます。人は「死の日を支配することもできない」(8節)とコヘレトは言います。コヘレトは相当な能力者であったと思います。それでも死の日をコントロールすることはできないのです。コヘレトは人間の限界を知りつつ生きた人であったと思います。

「今は、人間が人間を支配して苦しみをもたらすような時だ」(9節)ともコヘレトは言います。これはイスラエルがプトレマイオス王朝の支配下にあったことを言っているとされます。他国の支配下にあり、それをどうすることもできないのです。太陽の下の出来事は矛盾だらけなのです。「だから、わたしは悪人が葬儀をしてもらうのも、聖なる場所に出入りするのも、また、正しいことをした人が町で忘れ去られているのも見る」(10節)。そういった矛盾に満ちた事態を、コヘレトはいつもの調子で「これまた、空しい」と言います。

しかし、世界がどうすることもできない状況でも、矛盾に満ちている事態にあっても、「神を畏れよ」とコヘレトは説きます。「神を畏れる人は、畏れるからこそ幸福になり、悪人は神を畏れないから、長生きできず、影のようなもので、決して幸福にはなれない」(12~13節)。太陽の下の世界がどのような状況にあっても、黙示思想などに逃げるのではなく、「今の時が神に与えられたものであると受け止めて生きよ」と言っているのだと思います。太陽の下の世界がどうあっても、神を畏れ、「神はすべてを時宜にかなうように造られた」(3:11)と捉えることが、コヘレトの大事なメッセージなのです。(続く)

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臼田宣弘

臼田宣弘(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。愛知牧師バンドのメンバー(キーボード担当)

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