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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(12)ギュツラフの悲願

2018年9月19日16時34分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

1863(文久3)年。ヘボンと同じ教団「長老教会海外伝道本部」からタムソンが宣教師としてやってくると、ヘボンはいよいよ聖書の日本語訳事業を始める時が来たと思った。

かねてから聖書の翻訳は自分だけの単独事業に終わることなく、各宗派が協力して訳すことが望ましいと考えていた彼は、横浜在住の宣教師たちに手紙を書き、協力を求めた。

その日、ヘボンは自宅にやってきたブラウン、バラ、タムソン、ブラウンの助手矢野隆山を前にこう語った。

「来てくれてありがとう。いよいよ日本語訳聖書の翻訳が始まります。これにはさまざまな宗派の人が、宗派を超えて協力すべきだと思うのです。当面は私たちが主になって進めていくことになると思いますが、お互いの意見を尊重し合い、どんな時にも話し合いをして解決していきましょう」

そして、ヘボンはあのなつかしいギュツラフ訳の『約翰福音之伝』を一同に見せた。「これは、ギュツラフが3人の日本人漂流者に聖書を読んで聞かせ、彼らの母国の言葉に訳してもらった聖書です。しかし、ギュツラフはこれを日本人に届けることはできませんでした。これには、彼の悲願が込められているのです」

そして、ヘボンは最初の一行を読んだ。「ハジマリニ カシコイモノゴザル、コノカシコイモノ ゴクラクトモニゴザル・・・。日本人が感動をもって、毎日口ずさむことができるようにするためには、もう少し言葉を選び、美しく、なめらかな表現に変える必要があります。それが、私たちに託された使命です」

この日、記念すべき聖書共同訳事業の中心となるこの5人によって、最初の準備が始められた。

その頃、日本国内には新しい西洋の文化を摂取しようという機運がみなぎり始めたが、それと逆に国際情勢はいよいよ緊迫したものになっていった。あの「生麦事件」の賠償をイギリスは強く要求しており、続々と軍艦を日本に向けた。この年の6月22日には、横浜に停泊していたユリアルス号以下17隻の英国軍艦が鹿児島に向かった。

「いよいよ生麦事件の決着が鹿児島でつけられるんだね。戦争が起こらなければいいが」。自宅からこれを見ていたヘボンは、クララに言った。

7月2日。薩摩藩はイギリスの要求をはねつけ、軍隊を結集させた。そして、海岸に並んだ軍艦は一斉に火を噴き、イギリスの軍艦を焼き、艦長ジョスリングは死亡した。また、この報復で日本の軍艦3隻も焼かれた。その翌年の4月9日。英公使オルコックは連合艦隊を編成し、下関出撃を指示した。

(神様、どうか戦争になりませんように)。ヘボンは毎日祈っていた。彼にとって、ブラウンの身内であり、自分とも親しくしていたオルコック公使が、役目とはいえ軍事行動に出たことが身を裂かれるようにつらかった。

ヘボン夫妻は英語を教えたことから、奉行所の一部の役人と親しくなっていた。彼らの切なる願いを聞いて、井上、伊藤両奉行は、英公使の秘書官アーネスト・サトウと話し合い、和平交渉のために英艦パロサ号で下関に駆けつけた。

しかし、時すでに遅く、英艦隊を迎え撃つ長州藩の砲台は一斉に火を噴いた。しかし、日本の連合艦隊は二百数十もの砲撃を受けて敗れた。この後、薩摩藩とイギリスの講和が横浜の戸部で行われ、薩摩が謝罪し生麦事件の賠償金2万5千ポンドを支払うことでようやく下関事件は解決した。

翌年1865(慶応元)年。オルコックは事件の責任をとって解任され、代わりにハリー・パークスが来た。彼はギュツラフ夫人の甥に当たり、ヘボンとは中国で会って語り合った仲だった。

ブラウンとバラもそろって成仏寺から横浜の寄留地に引っ越してきたので、あらためて聖書共同訳事業は再開された。ブラウン、バラ、タムソン、矢野の4人はヘボンの診療所に集まり、第1回の会議が開かれた。

ブラウンは神学者としてヘブル語、ギリシャ語が分かるので注釈をつけた。バラとタムソンは、日本語は今一つだが、聖書に対する深い畏敬と信念を持ち合わせていた。このように、4人は心を一つにして、事業の第一歩を踏み出した。

中でも矢野隆山の働きはめざましいものがあった。彼は、外国人宣教師に日本語の会話を教えつつ、聖書を美しい日本語に訳す手伝いをした。

しかしながら、すでに老齢であった彼にとって、この仕事は大きな重圧であった。身体の不調と戦いながら、彼は職務を全うしたが、風邪から肺炎を起こし、その年の12月、聖書翻訳の幻を胸にしたまま他界したのであった。

*

<あとがき>

ヘボンは、ギュツラフの遂げられなかった望みを決して忘れたわけではありませんでした。ギュツラフはかつて日本人漂流者たちの世話をし、彼らに英語で聖書を読み聞かせ、それを日本語に翻訳させて最初の日本語訳聖書を作ったのですが、当時の政治的状況の中で日本に上陸することができなかったのです。

偶然シンガポールを訪れたヘボンが、ある印刷所の倉庫でこれを見つけ、彼の意志を引き継ごうと日本に宣教に来たのでした。彼は成仏寺での診療奉仕に明け暮れる中で、聖書和訳の志を胸に秘め、準備をしていました。

そんな時、彼と同じ教団の宣教師タムソンが来るに及んで、いよいよ聖書の共同訳事業を始めるべく横浜在住の各教団の宣教師に呼びかけました。

この時、ブラウンの助手を務めた日本人の矢野隆山はめざましい働きをするのですが、すでに老齢である上、身体の不調から肺炎になり、日本語訳聖書が完成する日を心待ちにしながら天に召されたのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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