新約聖書を2週間で完訳するケースも 聖書翻訳の新しい手法「MAST」

2017年2月11日23時39分 翻訳者 : 野田欣一 印刷
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アフリカ南部のボツワナ共和国で2016年11月に行われた「MAST(Mobilized Assistance Supporting Translation=動員援助支援翻訳)」による聖書翻訳ワークショップの参加者(写真:ウィクリフ・アソシエイツ=WA)

現地の人々が母国語で福音に触れられるようにと、現在もさまざまな言語で行われている聖書翻訳。これまでは1つの言語の聖書翻訳を完成させるのにも、数年から数十年もの月日を要してきた。しかし今、聖書翻訳を短期間で可能にする画期的な方法が世界中で飛躍的に広がり、人々の人生を変え、神に感謝の賛美をささげる人を多く起こしている。

1967年から世界中で聖書翻訳を行っているウィクリフ・アソシエイツ(WA)は、「MAST(Mobilized Assistance Supporting Translation=動員援助支援翻訳)」と呼ばれる新たな翻訳手法のワークショップを今年、世界で千回開催することを計画している。MASTは、基本的に8段階で聖書の翻訳を進めていく方法で、正確に翻訳されるまで、これまで数年あるいは数十年待たなければならなかったものを、数カ月あるいは数週間で終えることができるという。

MASTのアメリカ大陸・南部アフリカ担当コーディネーターであるリンダ・ファーネストック氏はクリスチャンポストとの電話インタビューに応じ、「各地で開かれるワークショップでは、最後に参加者にそれぞれの翻訳体験を語ってもらいます。参加したクリスチャンの翻訳者たちは、2週間にわたって毎日、1日中聖書翻訳を続けたことが最高に素晴らしい経験であったと述べています」と、すでに世界各地で開催されているMASTのワークショップについて語った。

「神が自分に語り掛けてくださっている」。ファーネストック氏は、翻訳者たちがそのように感じているようだと話す。ワークショップに参加したプエルトリコ出身のある女性は、聖書翻訳の途中で涙することもあった。

「その女性はある時、椅子を後ろに押しやって、床にひざまずき、目に涙をためながら神に祈り始めたのです。そして、聖書がいかに貴重な書物であるかを神様が教えてくださったと言うのです」

「こうした瞬間は本当に素晴らしいもので、私たちは神をたたえ、神が翻訳に対する深い理解を与えてくださるよう祈るのです」

MASTのワークショップは、最近ではアフリカ南部の内陸国、ボツワナ共和国のフランシスタウンで行われたほか、世界各地で行われている。

ファーネストック氏によると、MASTはバイリンガル(2カ国語話者)のグループを集めて行う。複数の翻訳者のチームが、8段階の作業それぞれが完了するのを待つことはせず、同時に翻訳作業を進めていくため、翻訳速度を加速できる。ミャンマーでは昨年、全国規模のチームを組み、MASTを取り入れて翻訳を行ったところ、わずか2週間で新約聖書全巻を翻訳できたという。

最初の2段階は「吸収(Consume)」と「言語化(Verbalize)」。ファーネストック氏は、「各翻訳者が1つの書巻の1章を割り当てられます。その章を数分で読んで、その章で起こっていることは何か、登場しているのは誰かなど、共有できることをチームの中で語り合います」と説明する。

続く3、4段階では、聖書本文をより小さな部分である「塊(Chunk)」に分け、各部分の訳を原稿にしていく。

翻訳の正確さを確かにするため、参加者はまず自分の翻訳を原稿にし、その後チームで編集する。そして、全体を統括する人が翻訳に目を通し、主要な用語をチェックし、用語が正確に使われているか、翻訳に抜けがないかなどを確認していく。こうして自然に、しかも明瞭な形で訳文が出来上がっていくという。

これまでに世界の50以上の聖書翻訳事業で翻訳の確認作業に携わってきたジョン・ルートン氏(米エリザベスシティー州立大学准教授)は、MASTによる聖書翻訳は正確さが保障されていると話す。「MASTの方法で生み出された翻訳は素晴らしいものです。他の方法でなされた翻訳と比べて勝るとも劣りません」

WAのブルース・スミス会長兼最高責任者(CEO)は、聖書翻訳を短期間で可能にするこの新たな翻訳手法によって、かつては不可能だと考えていた多くの機会が与えられていると話す。「われわれのMASTという画期的な翻訳法により、ここ数年で想定以上に聖書翻訳のスピードが上がっています。西洋人が遠方に出掛けて行って翻訳作業をしなくてもよいのです。各国が神の言葉を自分たちの手で翻訳できる体制が整いつつあるのです」

WAは、世界ではいまだに、さまざまな言語集団に属する数百万の人々が、母国語で書かれた聖書を持っていないと考えている。ファーネストック氏によると、たとえばボツワナ共和国では、どれくらいの人々が母国語で読める聖書を持っていないかを見極めることは困難だという。ボツワナに行くたびに、チスビア語、チクハネ語、シフェ語、ポルトガル語などの言語に加え、これまでに聞いたこともない言語に聖書が翻訳されている。「ボツワナで話されている言語がどれくらいあるのか分からないのです」と同氏は話す。

MASTは2014年に試験プロジェクトを行った後、ブラジルで行われた聖書翻訳ワークショップから採用された。ファーネストック氏は、「この方法による翻訳作業は急速に成長しつつあり、大陸から大陸へと有機的に広がっています」と強調する。

WAによると、2016年には315の言語でMASTによる翻訳プロジェクトがスタートし、58言語で新約聖書の翻訳が完了。100言語以上でも完成に近い状態まで翻訳が進んでいるという。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。一部、加筆・省略など、変更している部分があります。

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