鳥取地震ルポ:震度6弱で被害受けた倉吉市の現状、災害ボランティア求める現場の声

2016年10月31日11時55分 印刷
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昔ながらの瓦屋根が主流の地域。ブルーシートは24日から行政が配布を始めた。枚数がわずかで慢性的に足りていないという。瓦が落ちて屋根に穴が開き、雨漏りの被害を受けている住宅が多い=27日、鳥取県倉吉市内で

10月21日午後2時7分、鳥取県を中心に地震が発生した。地震の規模は震度6弱(気象庁発表)。鳥取県では過去3回にわたり大きな地震が発生しているが、今回の地震は過去最大級ではないかと発表されている。2011年の東日本大震災、熊本地震に続き、日本は世界的な地震大国であるが、今回の被害が実際にどれほどのものであるのか、現地では何が起きているのか。テレビ報道などでは伝わりにくい「被災者の声」を現場で聞くことができた。

鳥取空港から被害の大きかった県中部へ

10月27日、連日、震度1クラスの余震が続く鳥取県中部・倉吉市に入った。この地域は震度6弱を記録し、県内で最も被害が大きかった場所とされる。3日ほど前から震度2、3クラスの余震が増えており、気象庁は震度6程度の余震の可能性もあるとして、十分に警戒するよう発表している。倉吉市は白壁や赤瓦で有名な観光地で、周囲は幾つもの温泉街に囲まれる人気のツアースポットだ。この時期は名産の1つである「二十世紀梨」の最盛期でもある。

鳥取空港からバスに乗り、45分ほどで倉吉駅に着く。空港周辺の鳥取県西部は地震の被害はほとんどない。ところが、県中部へ向かうにつれ、住宅の屋根にブルーシートが目立ち始めてきた。鳥取県には赤瓦建築が多く現存しており、1つの名物にもなっている。21日の揺れでれんがが落ち、屋根に穴が開いた家もあったそうだ。

普段は観光客でいっぱいになる温泉街には全く人の姿が見られない。いよいよ倉吉市に入ると、屋根全体がブルーシートで覆われた住宅が一面に広がった。今回の地震は、横ずれ断層型とされ、津波の危険性は低いものの、実際の震度以上の揺れや家屋への被害が出やすい傾向があるといわれている。昔ながらの木造住宅は特に損壊が激しかった。

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地震の揺れで歩道が波打っていた。写真では分かりにくいが、視覚障がい者用の点字ブロックの線から10センチ近く陥没している。街灯が少なく夜間は非常に危険だ。

三陰本線・倉吉駅周辺

倉吉駅前でバスを降りると、人通りも少なく閑散としていた。すぐ近くの土産物店で話を聞く。「地震の時もここにいました。あっと言う間にお酒の瓶が落ちてきて、片付けが本当に大変でした。毎日(余震で)揺れているので怖いし、油断できないです」と語る。別の店は「普段より人は少ないですよ。観光客がいません」と嘆く。車道は既に工事で補修されており、特に問題はないが、歩道は揺れで陥没し、波打っている場所が点在する。転ばないよう十分に注意する必要があった。地震から1週間がたっても、危険標識が十分に足りていない様子だ。昼にもかかわらず、一部の商店はシャッターを降ろしたままだ。外壁が崩れたり、歩道にコンクリ片が転がっていたりする店舗もあった。酒屋や書店は今も後片付けに追われている様子。電気、水道は完全に復旧しているが、コンビニは1店舗のみ商品の補充が間に合わないという理由で閉店していた。食料品も特に不足している様子はなかった。

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地震の揺れで民家の垣根が崩れかけていた。このような場所は各所で見られた。「危険」を知らせる安全対策が施されておらず、行政も「被害状況は確認中」としている。

心優しい牧師との出会い

天神川の川沿いにある倉吉福音ルーテル教会(西日本福音ルーテル教会)を訪ねた。快く対応いただいたのは、同教会の協力牧師である勝原忠明牧師だ。阪神大震災を経験している勝原牧師は、「今回は慌てずに済みました」と穏やかな口調で今回の地震について述べた。

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取材に協力してくれた倉吉福音ルーテル教会。天神川のすぐほとりに立つ教会は、素朴で温かい雰囲気に満ちていた。教会の前に立っている男性は、神の家族としてインタビューに応じてくれた勝原忠明牧師。教会も揺れで被害を受けた。

地震発生時は、近くのホスピスでチャプレンの奉仕をしていたが、揺れの直後に電気と水道が止まってしまったという。教会へ戻ると風呂場の水道が破損し、水は使えない、電気も付かない、と不便したそうだ。電気は約2日後に完全復旧した。教会堂の聖書や本が落下。食器が割れ、ガラス類の後片付けも苦労したと話す。「ひびが入ってしまいました」と、案内されて外へ出ると、外壁にいくつもヒビが入っていた。教会員3人が避難したものの、2日後の日曜日にはほとんどの教会員が礼拝に集ったそうだ。「このような状況でも礼拝を大切にする信仰は素晴らしいなと思いました」と喜びを語る。

勝原牧師は「今は、支援体制は何も決まっていません。行政も動き始めたばかりです。予想以上に被害は大きいです」と現状を説明し、地元の観光や名産である梨が落果したことへの不安も述べた。「祈っていただきたい」。そう語る勝原牧師の思いを読者へ届けたいと思わされた。

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教会内にある風呂場は21日の揺れでタイルがはがれ落ち、水道も止まってしまった。至る所にひび割れの跡や穴が開いている(写真左)。外壁にもひびが入った(写真右)。このような被害は倉吉市広域で報告されているという。
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倉吉福音ルーテル教会の所属教団である西日本福音ルーテル教会の他県の教会から物資の支援が届けられていた。勝原牧師は「日頃から近所付き合いがあり、このような場所なので食べ物で困ることはないと思います」と語り、地域コミュニティーの重要性を強調した。

被害が最も大きかった地域の1つ倉吉市役所周辺に入る

倉吉駅から車で約15分。テレビ報道でも頻繁に取り上げられている倉吉市役所には、大勢の報道陣が集まっていた。入り口のコンクリート製の階段が損壊し、立ち入ることはできない。庁舎の窓ガラスが割れたため、板張りで雨風をしのいでいた。「慢性的な人手不足。情報収集中です・・・」と、1人の職員がインタビューに応じた。鳥取県は災害ボランティアを受け付けているが、思うように集まらないという。今回の地震では、これまでのところ死者も出ておらず(28日現在)、報道を見る限り、そこまで深刻ではないと捉えられているのかもしれない。

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連日テレビで報道される倉吉市役所本庁舎の入り口階段。地震の揺れで手すり部分のコンクリートが崩れ落ちてしまった。
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復旧作業に追われる市役所の外壁部分。庁舎の半分以上の窓ガラスが割れてしまったという。すぐ横にある東庁舎も同様の被害を受けた。

「ここから先ですよ、ひどいのは・・・」。通りすがりの女性が案内をしてくれた。有名な観光地である「白壁土蔵群」だ。最盛期であるこの時期は普段、大勢の観光客でにぎわうが、この日はほとんど人が歩いていなかった。この地は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、年間50万人が訪れる人気スポットだ。

しかし、地震の被害を受けた同地区は、屋根という屋根にブルーシートが被せられ、ほとんどの商店が店を閉めた状態だった。「地震のため、当分の間休館します」と張り紙がされている。ガラスが割れ、壁の一部が損壊し、中には家が傾いているところもあった。道にガラス片が散乱したままの家もある。

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多くの商店が休館しているが28日以降、順次、再開している模様だ。地震に負けないと笑顔で頑張る人々の姿が印象的だった。

観光地に広がる被害

観光協会案内所は、ロープが張られ立ち入れない。店は数軒が営業しているのみだ。それでも、大切な自分たちの観光地、名所を守ろうと人々は力強かった。ある菓子店に話を聞くと、「こんな地震は初めてです。怖いし、まだ片付けもできていません。お客さんがいないので、本当に困ってしまいます」という答えが返ってきた。普段は飛ぶように売れるという和菓子や梨も店頭に並んだままだった。

テレビ局が、壁が大きく崩れ落ちた一部の白壁土蔵を連日のように映すため、「シンボル化されるのでは・・・」と複雑な表情で住民は話す。この日も、工事車両が作業をしていた。

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美しく風情ある街並みで人気の「白壁土蔵群」。レトロな赤瓦屋根の建物が立ち並ぶ。飲食店や商店でにぎわう観光地も、地震の影響でほとんど人がいない状態だった。地域が協力して清掃や被害後の整備に取り組んでいた。
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復旧作業中の白壁土蔵群。この一帯は特に建物の被害が大きかった。町中を流れる水路には落下した瓦が沈み、揺れの大きさを物語っていた。
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白壁土蔵群の様子。既に復旧に向け作業が始まっていたが、再び大きな地震が起きれば全壊しそうな状態の建物も多い。
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行楽シーズンは観光客でにぎわう通りも、ほとんどが閉店していた。

テレビでは伝えられていない現場の声

住民に声を掛けられる。「テレビ局は同じところばかり映す。大変なところを見てほしい」。報道が入っていないであろう住宅街の奥で取材を進めた。住民は一様に親切で温かい、純朴な人柄だ。

家の中が目茶目茶になったままという女性に話を聞いた。「地震の後、家の中はそのままです。タンスが倒れ、ガラスが割れて大変。手伝ってほしいけれど、自分でやるしかないね」。忙しそうに家具を小分けして玄関先に出している。「避難所は車で30分はかかる。孫はここの(目の前の)小学校へ通っているから朝は連れて来て、帰りを待つの」。そう語ると目に涙を浮かべながら、「怖くて眠れない。目が覚めたまま横になり、朝の3時にはもう起きちゃう。先週からこんな感じ。毎日、揺れている」と、疲れた表情だ。「早く助けてほしい」。そう語る女性の言葉が心に響いた。

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通称「赤瓦」と呼ばれる倉吉の名所も地震で大きな被害を受けた。シンボルの1つである煙突部分も折れている。地元の住民に案内され撮影した。

住民へのインタビュー

― 今、皆さんは何が必要ですか。
片付けを手伝ってほしい。年寄りには無理だよ。

― 食べ物は足りていますか。
 食べ物はある。地震後は何もなかったけれど今は困っていない。

― 何が不安ですか。
 また、大きな地震が来たらどうしよう。つぶれちゃう家もあるのではないか。行政や県から支援の話はまだ聞いていない。1人で家の中にいる高齢者もいるはずだから心配だ。

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倉吉市役所の裏手にある高台より町を望む。見渡す限り、屋根を覆うブルーシートが広がっていた。これからは気温が下がり、天候によっては雨漏りも心配される。すぐ近くの避難所には40人近い住民が寝泊まりをしていた。
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ガラスが飛び散ったままになっている商店街の一角。高齢者が多い地域では、手付かずの状態になっている。ボランティアによる支援が急務だ。
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今にも崩れ落ちそうな屋根や看板も目に付く。

一方、行政は防災無線などで、地震で損壊した建物が崩れたり、余震で上から物が落ちてきてけがをしたりするなど、いわゆる2次被害の注意を呼び掛けていた。被害が大きかった地区の小学生はヘルメットを着用して登下校。道路状況や民家の垣根、斜面の状態が悪く、十分な警戒が必要だと感じた。

特別に許可をもらい、撮影することができた「加茂神社」は全体の8割近くが損壊したという。巨大な建造物が地面に落ちたままだ。貴重な文化財へのダメージも深刻な様子だった。

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灯籠の一部が破損し、道路に転がっている。神社の関係者は「相当な被害」と話している。
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テレビ報道で有名になった加茂神社の一角。大きな石の柱が倒れている。
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地域には多くの墓地や寺、文化財に指定されている神社が点在している。特にこれらの被害は大きく、墓石が倒れ、鳥居や建造物が損壊していた。

広島県から派遣された保健師組合は、地元住民と共に一人暮らしの高齢者を訪ねていた。現在、余震は小康状態にある。行政が被害状況の把握を少しずつ始めたが、雨風による雨漏りや屋根の損傷、二次被害が心配されるだけに、県が公式に募集している災害ボランティアと募金で支援に協力する必要性を感じた。

情報によれば、鳥取県(特に倉吉市)は、異端・カルトとして問題視される統一教会(世界平和家庭統一連合)の勢力が強いという。地域民には一定の信用がある宗教として知名度があるとされ、実際、取材中にも公共施設で統一教会の集会が催されていた。警戒が必要だ。

災害後は、カルトや有害な宗教団体、詐欺(リフォーム、災害義援金関係)も横行しやすい。既に防災無線やテレビ放送でこれらへの警戒が呼び掛けられていた。キリスト教界は災害後、教派や教団を超えて共に助け合う「隣人愛」の精神で1つになる必要性を強く感じた。

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町の至る所に、立ち入り禁止、頭上注意を促す表示が設置されている。特に夜間や雨風が強い日は十分な注意が必要だと感じた。
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県の施設「倉吉未来中心」。普段は多くの人でにぎわう場所だが、周囲の石垣が崩れ、施設のガラスが割れるなど被害が大きかった施設の1つ。立ち入り禁止となっており、近くの公園も入ることができなかった。

最後に

今回の取材は、倉吉市役所周辺の宮川町から美作街道(天神川沿い)で行った。最新の発表では住宅被害は3千棟を超えている(28日現在)。避難者は450人前後。避難生活の長期化が心配されている。

町では地震を受けて、緊張した雰囲気や通常とは異なる様子を感じたものの、交通網も全て通常通り運行しており、鳥取県の空の窓口である鳥取空港も被害は受けなかった。

注意したいことは、見た目の被害が局所的であり、被災地という感じがしない点だ。故に「被害は小さかった」と判断されやすい。災害情報は刻一刻と変化している。最新の情報を鳥取県のホームページで確認の上、各自の判断で適切に行動をお願いしたい。

災害の「深刻さ」の度合いは人により違うといわれるが、現場取材を進め、できるだけ多くの声を聞き、実情を見てきた。今回の地震では幸い、死者は出ていないものの、けがをした人、地震による精神的な不安を抱えている人は大勢いる。

気温も20度を下回り、避難生活は長期化する可能性が指摘されている。地震を警戒してか、宿泊などの予約のキャンセルは9千件以上で、風評被害が心配される。

■ 参考サイト

倉吉観光マイス協会フェイスブック https://www.facebook.com/kurayoshikanko/
営業再開に向けて復旧活動に取り組んでいる。多くの商店が再開しているが詳しくは、フェイスブックの最新情報を。

倉吉市行政サイト http://www.city.kurayoshi.lg.jp/
市内の温泉街は通常営業中。道路は一部通行止めあり、地震を受け「非常体制」中で、市内の小学校の体育館への避難を受け入れている。状況は刻一刻と変化しているため、行政の情報の確認が欠かせない。

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