Skip to main content
2025年7月5日21時40分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
戦後70年

映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?(動画あり)

2015年8月7日13時56分 執筆者 : 土門稔
  • ツイート
印刷
関連タグ:大岡昇平フィリピン
映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?+
映画『野火』(塚本晋也監督)のポスター © SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATRE

あまりに凄惨(せいさん)で残酷で、見ていて本当につらくなる映画だ。しかし、そこには戦争の愚かさ、悲惨さが、余すところなく描き尽くされている。戦後70年、この優しげな時代に、よくぞこの映画を作りきったと思う。塚本晋也監督と制作スタッフの執念と信念に深く頭を下げたい。この映画を見ながら、原一男監督のドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』(1987年)が脳裏に浮かんでいた。

大岡昇平(1909〜88)が、 太平洋戦争で日本軍が最大の戦死者を出したフィリピンでの体験を基に書いた小説『野火』(1951年)は、日本の戦争文学の代表作といわれている。監督で主人公の田村一等兵を演じた塚本晋也は、高校時代に初めてこの小説を読んで衝撃を受けて以来、ずっと映画化を構想してきたという。本格的に映画化を考えてから20年以上たった2005年に実際に制作が始まるが、スポンサーはつかず、また金銭的な問題だけではなく、戦争を懐疑的に描くことに理解を得ることが難しいと感じる中、自主制作・自主配給映画として制作したという。

『野火』は、戦争の悲惨さと共に、極限状況の中での神への呼び掛けを主題として描いた作品といえる。

映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?
映画『野火』より © SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATRE

主人公の田村は、フィリピン・ルソン島の日本陸軍部隊に所属する一等兵だ。しかし、部隊は米軍の攻撃を受けほぼ全滅し、散り散りになる。

島の北部まで移動し、集合せよとの命令を受け、生き残った兵隊たちは、食糧も尽きる中、ジャングルをさまよう。病に倒れ餓死した死体の中を必死で歩き通した先には、圧倒的な軍備を整えた米軍が待ち伏せしていた。

日本兵は機関銃の機銃掃射の前に、虫けらのように逃げ惑いながら殺されていく。それはもはや戦闘ではなく、ただの虐殺だ。ある者は脳漿(のうしょう)や内蔵をこぼしながらのたうち回り、ある者はそうしろと命じられたまま手りゅう弾で自決する。最後に追い詰められた者は、仲間の日本兵の人肉を食するまでになる。

映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?
映画『野火』より © SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATRE

そして、大学を卒業したインテリで哲学やキリスト教を学んでいた田村一等兵は、ついに発狂し、ジャングルをさまよいながら、神に問い掛ける――。

小説『野火』では、その最後の文章はこう締めくくられている。

「もし、彼がキリストの変身であるならば――
もし彼が真に、私一人のために、この比島の山野まで遣わされたのであるならば――
神に栄えあれ」

これが映画ではどのように描かれているのか、できれば原作を読み、映画と見比べていただきたい。

大岡昇平とキリスト教

大岡昇平は、自伝『少年』(1975年)の中で、少年時代にキリスト教に深く影響を受けたことをつづっているが、その影響が映画でも見事に再現されている。

田村一等兵は逃亡中、ジャングルの中のある小さな村のとある教会に迷い込み、疲れのあまり長椅子で眠りに落ちる。田村に気付かずに、フィリピンの若い恋人たちがあいびきにやって来る。食糧を調理するためにただ火を付けるマッチが欲しい田村は、「殺しはしない」と言いながら、二人に銃を向ける。そして――。

この教会でのシーンに、大岡のキリスト教の神観と罪意識が全て凝縮している。

大岡は自伝の中で、少年時代通った青山学院では、毎日午前10時から10時半まで礼拝の時間があったが、「ミッション・スクールが強制する礼拝の時間は、最初は退屈な時間だった」と書いている。

映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?
二十歳の頃の大岡昇平

しかし、大岡少年は次第に聖書に興味を持ち、どうしても欲しくなる。当時、教文館でポケット版の『新旧約合本聖書』は4円50銭(現代ではその数千倍以上に相当)だったという。聖書が欲しいと言うと、父から「ヤソなんかよせ、日本は仏教で沢山だ」と言われ、口論になったが、母がこっそり5円札をくれて「これで聖書を買っておいで」と渡してくれたという。

「『ヨハネ伝』冒頭の『はじめに言葉ありき』という句が私は好きだった。『言葉は神と共にありき。言葉は神なりき』と私は信じていた。これはイエスの言葉に魅せられて、神を信じた私には貴重な断言だった。幼い私にとって、イエスの言葉はイエスの存在そのものだった」

また、ロマ書を熱心に読んだという。

「『汝自身を愛するごとく隣人を愛せよ』その他の道徳律は福音書にもあるからわかった。しかし『神の怒り』と『罪』についての説教がわからなかった。私にとって神は怒こらず、信ずる者の罪をすべて許してくれるはずであった」

さらには、牧師になることにも憧れ、母にねだってオルガンを買ってもらったこともあるという。

しかし、その信仰はこの後半年ぐらいしか続かず、夏目漱石と出会ってからは興味が文学へと移っていったと告白しながらも、大岡はこのように書いている。

「こうして私のキリスト教は、少年の日の幻としてすぎ去ってしまう。私はむろん背教が最大の罪であることを知らなかったのだが、私の最初の自我の目醒(めざ)めと超自我の形成がキリスト教によったということがさまざまの形で、私のその後の精神の傾斜を決定していると思われる」

「私がフィリピンの戦場で、叢林(そうりん)中に一人取り残された時、敵を射つのを放棄したのは自然のことだった。(中略)あの時、ほかの方面で銃声が起り、米兵が立ち去ったことに、神の摂理のようなものを考えたのはごく自然だった」

フィリピンでの悲惨な戦争体験とキリスト教。この二つが大岡昇平という人が小説を書く根底にあったことをうかがわせる一文だ。

映画『野火』 大岡昇平の戦争文学の代表作を映画化 極限の戦場で兵士が神に呼び掛けたものとは?
映画『野火』より © SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATRE

映画の冒頭、肺を病んだ田村一等兵は野戦病院に行くように命じられ、入院を許可されなければ死ねと言われ、最後の食糧として足元に小さな芋6本を投げて渡されるシーンがある。原作の小説『野火』ではこのように書かれている。

「私の生命の維持が、私の属し、そのため私が生命を提供している国家から保障される限度は、この六本の芋に尽きていた。この六という数字には、恐るべき数学的な正確さがあった」

塚本監督は、今を逃せばもはやこの映画を作ることはできないと感じ、映画化を企画したという。戦後70年を迎えるこの夏、国家とは何か、戦争とは何か、キリスト教徒か否かを問わず、一人でも多くの人にこの映画を見てほしいと、祈りにも似た思いを抱いた。

■ 映画『野火』予告編

■ 映画『野火』公式サイト

関連タグ:大岡昇平フィリピン
  • ツイート

関連記事

  • 戦争とキリスト教を読む(1):キリスト者山本七平が地獄の戦場で見た「平和ならしむる者」 『静かなる細き声』を読む

  • 戦後70年の広島から(1):国家とキリスト教・被爆証言の継承・平和の行進と祈り 70回目の8月6日前に広島にキリスト者集う

  • 戦争経験者に聞く戦後70年(1):海軍将校として戦艦「霧島」で戦い、戦後牧師に 後宮俊夫牧師が語る「キリストの平和」

  • 「もう一つの戦後70年」 広島で被爆死した米兵ジョン・ロング・ジュニアさん

  • 悲しみの島・レイテ 若井和生

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 聖書のイエス(12)「初めに、ことばがあった」 さとうまさこ

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • シリア語の世界(27)シリア語旧約聖書の各書名と1章1節の和訳 川口一彦

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • ワールドミッションレポート(7月5日):コロンビア コカ農家から最前線の福音伝道者へ

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.