心からの悔い改め 若井和生

2015年5月15日09時58分 コラムニスト : 若井和生 印刷

先日、朝日新聞を読んでいたところ一つの記事が私の目に飛び込んできました。それは「慰安婦問題拡大を阻止、政府 東南アで調査せず」という見出しの記事です。

旧日本軍の慰安婦問題が日本と韓国の間で政治問題になり始めた1992、3年、韓国で実施した聞き取り調査を、政府は東南アジアでは回避していたという事実がそこで伝えられていました。この問題の他国への拡大を阻止するためです。

1992年といえば、私がフィリピン大学への留学を開始した年に当たります。当時、到着したばかりのフィリピンで慰安婦問題が噴出して大問題になっていたことを今でもよく覚えています。

長年の沈黙を破って、元慰安婦だった女性たちが次々と名乗り出て、日本政府に対する謝罪と賠償を求める運動が開始されました。あわせて本が出版されたり、「慰安婦」というタイトルの映画が作成されたりもしました。私は元慰安婦たちの証言集会に参加し、彼女たちの過酷な体験を実際に聞かせていただく機会も得ました。

ところがそのような彼女たちに対するフィリピンの人々の反応は、必ずしも温かいものばかりではなかったようです。「何を今さら」「日本との関係が悪化する」「どうせお金が欲しいだけなのだろう」という冷ややかな声を多く聞いたものです。

彼女たちの受けた苦しみが全く報われない様子を見聞きしながら、日本人としてとても申し訳ない気持ちになりました。そして、日本はかつてアジアの人々に対して、大変な迷惑をかけてしまったのだと痛感しました。

戦場となったフィリピンで、かつて50万近い日本兵たちが命を落としました。その倍以上の111万人ものフィリピンの方々が戦争の犠牲となり、亡くなったと言われています。その多くが民間人です。私たちの知らない数えきれないほどの悲劇が、当時のフィリピンでは味わわれていました。

その事実は日本ではいまだ十分に知られていないように思います。それゆえ、真の反省も心からの悔い改めもそこからは生まれてきません。この国では、肝心なことは覆い隠されてしまうことが多いようです。私たちが自ら努力しない限り、真実は見えてきません。

フィリピン大学を卒業してから15年近くが経とうとしています。大学の卒業と同時に、フィリピンで与えられた課題からも卒業してしまったような感覚になっていました。しかし、私たちの悔い改めが心からのものとなるために、この課題と向き合い続ける必要を、今、強く感じています。

(『みずさわ便り』第103号・2013年11月3日より転載)

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若井和生

若井和生(わかい・かずお)

1968年、山形県生まれ。1992年より国立フィリピン大学アジアセンターに留学し、日比関係の歴史について調査する。現在、岩手県の水沢聖書バプテスト教会牧師。「3・11いわて教会ネットワーク」の一員として、被災地支援の働きを継続中。妻、8歳の息子と3人家族。

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