チベットの僧院で闇と絶望の中にいたテンジン・ラクパは、結核の療養先であるインドでキリスト教と出会い、夢の中でイエスから「道、真理、命である私に従いなさい」と語られた。真の神に出会った喜びは、彼の魂を燃え上がらせたが、それは同時に命懸けの戦いの始まりでもあった。(第1回から読む)
夢の中で「白い衣の男」に出会い、イエスこそが生ける神であると確信したテンジンは、もはや沈黙することができなかった。回復した彼は、自らの故郷であるチベットの僧院へと戻った。そこはかつて彼が「闇の牢獄」と感じていた場所だったが、今や彼の心には、決して消えることのない光がともっていた。
ある日、数百人の僧侶たちが集まる会合で、テンジンは立ち上がった。そして、これまで誰も口にすることができなかった禁断のあの名について語り出したのだ。
「私のために命を捨ててくださった神がおられます。神は私を死の病から救ってくださいました。神は愛だからです。そのお方の名は、イエスです」
その瞬間、僧院は凍りつき、次の瞬間には大混乱に陥った。「イエス」という名は、彼らにとって仏教を破壊する悪魔の言葉に等しかったからだ。高僧(ラマ)は激昂し、叫んだ。「殺せ! その裏切り者を殺せ!」
怒り狂った僧侶たちがテンジンに襲いかかった。彼は無抵抗のまま殴打され、蹴られ、意識を失うまで痛めつけられた。最も残酷だったのは、その場にいた実の兄でさえも、ラマの命令によってテンジンを打つことを強いられたことだった。テンジンは血まみれになり、瀕死の状態で冷たい石畳の上に放置された。誰もが彼を見捨て、死を待つばかりだった。
しかしテンジンは、それでも神の守りの中にあった。その日の深夜、闇に紛れて一つの影が近づいてきた。それは、昼間彼を打つことを強いられた、あの実兄であった。兄は命のリスクを冒して戻ってきたのだ。「早く逃げろ。ここにいたら本当に殺される」。兄の手引きにより、テンジンは傷ついた体を引きずりながら、少年時代から過ごした僧院と家族を後にした。
夜の闇の中、故郷の山々が遠ざかっていった。彼は全てを失ったように見えた。地位も、家族も、帰るべき場所もない。しかし、彼の心には喜びと平安があった。自分はもはや偽りの奴隷ではなく、キリストにある自由の奴隷なのだと、新しい人生の一歩を踏み出したのである。
逃亡の末、遠く離れた都市にたどり着いたテンジンは、そこでキリスト者としての訓練を受けた。しかし彼はさらなる試練と使命に直面することになる。それは、かつて自分を殺そうとしたあの場所へ、再び戻るという召命であった。(続く)
■ チベットの宗教人口
チベット仏教 78・0%
ボン教 12・0%
イスラム 0・4%
キリスト教少数、その他
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