世界福音同盟(WEA)の第14回総会が27日、韓国・ソウルで開幕した。テーマは「2033年までに全ての人に福音を」。WEAは世界6億人の福音派キリスト教徒を代表する組織で、加盟する各地域・各国の福音同盟の代表者や、招待されたさまざまなキリスト教団体の代表者らが、31日までの期間、サラン教会を会場に行われる12の分科会やワークショップなど各種プログラムに参加する。
開会式では、WEA国際理事会(IC)議長のグッドウィル・シャナ、8月に選出されたWEA次期総主事のブトロス・マンスール、アジア福音同盟(AEA)議長のゴッドフリー・ヨガラジャの各氏らがあいさつを述べた。
シャナ氏は初め、総会の準備に関わった関係者らに感謝を表明。「WEAは一部のトップ層だけの組織ではありません」と述べ、準備に関わった多くのボランティアのように、自らの時間と労力をささげて奉仕する人々によって、WEAは今の姿を保っていられると話した。
開会式には、世界改革派フェローシップ(WRF)やグローバル・クリスチャン・フォーラム(GCF)、世界バプテスト連盟(BWA)の代表者らも出席した。シャナ氏は各来賓を紹介しつつ、総会が福音派だけのものではないことを示し、「神の国の一致」が進んでいることに感謝を表明。「私たちにとって『一致』は極めて重要」と話した。
6年ごとに開催される総会は、WEAの活動を振り返り、検証し、今後の計画について協議する場だとし、「皆さんはこのプロセスの重要な一員」だと強調。共に祈り、語り合い、想像し、連帯することで、「福音派の家族」がいかに大きく、どれほど必要とされているかを実感するだろうと述べ、総会を通じて、その結束がより強固なものになるはずだと話した。
その上で、「私たちが描く『福音による世界変革のために一つになる福音派』というビジョンも実現に近づくはずです。皆さんが一堂に会し、団結し、国や地域、人種、部族を超えて協力しなければ、このビジョンは実現しません。皆さんがこのビジョンを実現させるのです」と訴えた。
また、加盟する国レベルの福音同盟が前総会時は143だったのが、今総会では161にまで増加したことを報告。WEAにはさらに、アジアや欧州など複数国にまたがる地域レベルの福音同盟が9つ加盟しているほか、数多くの福音派のネットワーク、宣教団体が加盟しており、「実に179年にもわたるこの歩みを支えてくださったことを、神に感謝します」と述べた。
その上で、1982年から92年まで、世界福音連盟(WEF)時代のWEAを国際ディレクター(現在の総主事)として導いた故デイビッド・ハワード氏が、WEAを「消えることのない夢」と表現していたことを紹介。「私たちはこの数年、確かに多くの試練を経験してきました。しかし、これ(WEA)は決して消えることのない夢であり、皆さんもその一部なのです。今週、私たちは共にこの夢を思い描きましょう」と呼びかけた。
また、「この集いは単なる会議以上の意味を持っています。これは家族の集いなのです」と述べ、「兄弟が共に住むことは、何という幸せ、何という麗しさ」(詩編133:1)を引用しつつ、団結の重要性を改めて語った。
「あなたとは異なる価値観、世界観を持つ人々と出会うことがあるでしょう。私たちは皆さんに、普段慣れ親しんでいる思考パターンから脱却し、垣根を越えて手を差し伸べ、寛容さと理解を示すよう求めています。そうすることで、私たちは『福音による世界変革のために一つになる福音派』というWEAを構築できるのです。何世紀にもわたり、戦争も大陸も越えて、WEAは常に結束してきました。今週の活動を通じて、この結束が私たち一人一人を通して表現されるよう、私たちは祈ります」
続けて、短くあいさつを述べたマンスール氏は、「キリストにある兄弟姉妹の皆さんの姿を目にすることができ、本当に胸が熱くなります。皆さんはキリストの血によって固く結ばれています。これ以上に強い絆はあり得ません」と話した。シャナ氏が引用した詩編133編1節を自身も引用し、神は、信仰者が兄弟姉妹として共にいるところを祝福してくださると話した。
また、イエス・キリストが十字架にかけられる前に語った言葉として、「あなたがくださった栄光を、私は彼らに与えました。私たちが一つであるように、彼らも一つになるためです」(ヨハネ17:22)を引用。父なる神、子なるイエス、聖霊の間に見る緊密な絆を語り、イエスは弟子たちに、この三位一体の関係のように、一つになるよう命じていることを話した。
その上で、「どうか主が、この総会を祝福に満ちたものにしてくださいますように。私たちが霊において一つとなりますように。私たちはさまざまな違いを持っています。異なる文化、言語、考え方。しかし、今や隔ての壁は取り払われ、私たちはキリストにおいて一つなのです。この総会でその事実を祝いましょう。共に喜び、愛と調和の中で歩み、主が私たちに託された使命、偉大な戒めと地上の教会に与えられた偉大な使命を全うしましょう」と呼びかけた。
ゴッドフリー氏は、今回の総会は世界の福音派コミュニティーにとって歴史的かつ重要な節目であるとし、「主イエス・キリストの福音をあらゆる国と文化に広めるという使命を果たすための、画期的な集い」だと話した。
また、その開催地に「豊かな伝統と霊的活力、そして福音派が成長しているアジア」が選ばれたことは栄誉なことだと指摘。「私たちは今、信仰とビジョンにおいて一つとなり、教会の強化、交わりの深化、そしてキリストの愛と救いのメッセージを世界中に広めるために力を合わせています。このダイナミックな都市で一堂に会した今、私たちは神の召命に応え、信仰の忠実な証人として、和解の使者として、真実と救いを求める世界にとっての平和の源となることを改めて心に刻みましょう」と呼びかけた。
総会は「学び、戦略的パートナーシップを祈り求め、聖霊の力によって使命を新たにするための、またとない機会」だとも述べ、開催のために尽力した韓国の関係者に感謝を表した。
初日の分科会では、カタール福音主義教会同盟(ECAQ)議長のベダ・ロブレス氏が、同国における福音派教会の宣教活動を紹介したほか、WEA宣教委員会委員長で、ニュージーランドのマオリ族の福音派指導者であるジェイ・マテンガ氏が講演した。
マオリ族の民族衣装である肩掛けを付けて登壇したマテンガ氏は、英語で講演を行ったものの、初めにマオリ語でイエス・キリストを褒めたたえる言葉を述べ、あいさつ。また、開会式後にもたれた合同礼拝では、各国の国旗を持った代表者が入場し、参加者がそれぞれの国の言語で開会宣言を読み上げる演出もあった。日本では、米国の福音派が政治的な側面で取り上げられることが多く、福音派に対する偏った見方が多いが、総会では初日から、世界に広がる福音派の多様性が各所で垣間見えた。
総会には、開催地である韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領や李明博(イ・ミョバク)元大統領、ソウルの呉世勲(オ・セフン)市長らも祝辞を寄せた。
李在明氏は代読された祝辞の中で、「キリスト教は、韓国の歴史において宗教の枠を超えた特別な意義を持っています」と述べ、「それは、国や政府が手を差し伸べられない辺境の地において、『隣人を愛せ』という教えをまさに実践してきたからです」と語った。
「この地の牧師たちは、日本の植民地時代には独立の旗を掲げ、産業化時代には教育・医療・社会啓蒙活動に献身し、民主主義の開花において決定的な役割と責任を果たしました。人々の生活苦が続く今こそ、社会の『塩と光』としてのキリスト教精神――犠牲の精神、奉仕の精神、連帯の精神、そして相互成長の精神――がこれまで以上に必要とされています。私は、世界中で人権保護と貧困緩和の先頭に立っておられるWEAの皆様が、この危機を乗り越えるため、知恵を結集してくださるものと確信しています」
李在明氏はさらに、「特に今回の総会は、北東アジアで初めて開催されるものであり、分断国家において初めて開催される総会でもあります」と述べ、朝鮮半島における和平の実現に向けての支援も要望。「総会のテーマにある『全ての人に福音』に倣い、皆様の人生が愛と恵みに満ちたものとなりますよう願っております」と結んだ。















