国外追放されたミリアムは、故郷で親族からの暴力と屈辱を受けるが、イエスへの信仰を捨てなかった。彼女は真夜中に脱出し、誰も彼女を知らない町へと逃れた。その後、小さな衣料品店を始め、自活しながら教会に仕える日々が始まった。(第1回から読む)(人物の本名は伏せて変えてある)
新転地での生活は、決して楽なものではなかった。ミリアムは仕事をしながらも、心は常に子どもたちと共にあった。彼女の正気は「母」としての自覚によって、かろうじて保たれていたのだ。「子どもたちは、私にとって世界そのものでした。離れていることが、何よりも苦しかったです」。ミリアムは、神に祈り続けた。再会のため、子どもたちの健康のため、そして何より、自分自身の信仰が失われないようにと。
新たに彼女が身を置いた教会では、婦人会と日曜学校が活発に行われており、ミリアムはそこに自分の居場所を見いだしていた。日曜学校では、信仰を持ち始めたばかりの子どもたちに、聖書の物語や祈りの大切さを教えた。
「私にできることは限られています。でも、こうして子どもたちに福音を伝えるとき、私は神様から、母としての使命を与えられていると感じるのです」
また、彼女の衣料品店は地域の中でも評判になり、少しずつ安定した生活を築きつつあった。だが、それでも心は決して満たされることはなかった。あの別れの日、移送車の窓越しに泣き叫ぶ子どもたちの姿が、今でも夜ごと彼女のまぶたに浮かぶのだ。
「私はあの子たちに約束しました。『必ず戻るから、信仰を捨てちゃだめよ』と。だから、私は決して希望を捨てません」
ミリアムは今も、支援団体の助けを受けて、子どもたちとの再会のために必要な法的手続きとその道を模索している。だが、彼女は焦らず、神の時に全てを委ねているという。
「再び子どもたちを抱きしめる日まで、私は決して信仰を手放しません」。その言葉に込められた愛と信頼は、彼女がどれほどの苦難の道を通ってきたかを物語っている。(続く)
◇