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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(24)折れた十字架

2025年7月23日13時50分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

紀元303年2月24日のこと。突然、ローマ帝国によるキリスト教禁止令が発布され、ミラの町にもローマ軍兵士がやって来た。そして教会の石垣を崩し、崩れた壁の間から礼拝堂になだれ込んだ。

この日は、聖職者会議がこの教会で持たれるので、助祭のシメオンと長老のユストは、その準備をしていた。――と、その時である。彼らの目の前で突然、壁にかけてある木の十字架のひもが切れて落ちてきた。

「おお、どうしたことだ。何か悪いことでも起こらねばいいが」。2人は不安におののく心を鎮めながら、十字架を引き起こして壁にかけ直そうとした。その瞬間、彼らの目に真っ赤に燃える炎が映り、会堂の扉が倒された。すると、どやどやと兵士がなだれ込んできた。

「ここは聖なる場所ですぞ」。シメオンが両手を広げて叫んだ。「汚れた手でここを荒らすことは許しません」。すると、ローマ兵たちは、床に横たえられた十字架をハンマーでたたき、へし折った。それから、シメオン、ユスト両人に向けて無数の矢が放たれたので、彼らは血に染まって絶命した。

2人の悲鳴とどよめきを聞いたニコラスが司教館から駆けつけてみると、会堂の入り口近くに2人が朱に染まって倒れていた。既に息はなかった。折れた十字架が打ち捨てられていることから、何があったのかは明白だった。ニコラスは2人の目をふさぎ、両手を組み合わせて、死者の冥福を祈るのだった。

それからも、ローマ兵による破壊行為は続き、次から次へと火矢が打ち込まれたので、それをよけながら台所に逃れるうちに、そこに倒れているアペレとサラを見つけた。2人とも血まみれで、アペレの方はまだ息があったが、サラは両手でしっかりと子どもたちのために作った教材を抱きしめたまま息絶えていた。ニコラスは、その目をふさいで、両手を組み合わせてやった。

「おお、神様、お慈悲です。彼だけでも助かりますように」。心の中で祈りつつ、ニコラスはアペレの体を担いで外に逃れ出た。崩された教会の石垣の外には、農村から、そして漁村から何事かと人が集まってきていた。ニコラスはこれらの人々の間をぬうようにして、アペレを背負って少し離れた場所に着いた。

「おお、神様! 何てバチ当たりなことを」。小高い丘の上から、教会堂が崩れていくさまを見ていた農家の人々が叫んだ。「こんなことをして、きっと今に天罰が下るに違いない」

ニコラスは、アペレを背負ったままなおも歩いた。少し行った所に、一人のひげ面の男が、両手に15、6歳の少年の遺体を抱きかかえて立っているのが見えた。

「ニコラス司教様。せがれを祝福してやってくださいまし」。男は、涙でくしゃくしゃにゆがんだ顔で言った。少年の顔をのぞき込んだニコラスは、仰天した。

「アカイコじゃないか。どうしたの?」男は泣きながら話した。それによると、ローマ兵が教会の石垣を壊し始めたとき、たまたま聖書の勉強を教わりにアカイコが教会にやって来たのだった。

「おじさんたち、だめだよ。ここは神様が住んでいらっしゃる家じゃないか」。彼はハンマーを振るう兵士の腕にしがみついて叫んだ。すると、兵士は少年を突き飛ばし、倒れた彼を蹴りつけて言った。

「生意気なことを言うんじゃない。世界で一番強くて偉大なローマ皇帝がキリスト教禁止令を出されたんだ」。「神様は見ていらっしゃるよ、おじさん」。少年は、なおもハンマーを振るう兵士に飛びついていった。すると、その兵士は片手で少年の髪をつかむと、もう一方の手で腰の短刀を引き抜き、その腹を力いっぱい刺した。

少年は、声もなくくずおれた。彼らは岩だらけの坂道の上からその体を蹴落としてから、両手をはたき、再びその作業に戻っていった。アカイコは、両手で血まみれの腹を押さえながら、はうようにして家にたどり着くと、父親の腕の中で息絶えたのだという。

「ニコラス司教様。でも、せがれは幸せでございました。教会に行くようになり、イエス様の話を聞くのをそれはもう楽しみにしておりまして」。そう話し、父親は男泣きに泣いた。

ニコラスは勇敢な少年の亡きがらを皆と一緒に丘の頂上に葬り、天国での冥福を心から祈るのだった。

*

<あとがき>

ミラの教会における司教の任務にもようやく慣れ、充実した日々が続いていたさなか、突然教会に嵐が襲いかかりました。ローマ帝国から「キリスト教禁止令」が出されたのです。

ローマ軍団の兵士たちは、小アジアをはじめとし、各地に派遣され、目につく限り、土台も残らないほど教会を破壊して回りました。その軍団兵がついにミラにもやって来ました。

辛うじてニコラスは無事でしたが、助祭のシメオンと長老のユストは会堂の中で殉教をしました。そして、アペレと共に子どもたちに聖書を教えていた信徒のサラも同様でした。

ニコラスは辛うじて息のあるアペレを抱えて教会堂から逃れ出ることができました。この時、日曜学校に来ていた漁師の子アカイコが、イエス・キリストの御名のために、その小さな体で殉教をしたのでした。

小さくても、無力でも、またどのような状況にあっても、神様は私たちの精いっぱいの証しを受け入れてくださるのです。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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