Skip to main content
2025年12月30日17時03分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(6)天使の微笑

2024年11月13日12時54分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

それからしばらくして、ニコラスは革靴を作ってもらうために靴屋の店を訪れた。すると靴屋は、無事に2番目の娘の挙式が終わったことを告げ、今度も奇跡的に持参金が与えられたと話した。

「神様がある人に命じてお金を届けてくださったに違いありません。私は、窓からその使いが逃げていくのを見て追いかけたんですが、見失いました」

ニコラスはドキリとしたが、そ知らぬ顔で言った。「きっと神様は、あなたと娘さんが幸せになることを望んでいらっしゃるのですよ」

「ニコラス様」。その時、名前を呼ばれて顔を上げると、戸口の所に白ゆりのように清純な娘が立っていた。3番目の娘だった。

「よろしかったらお茶でも飲んでいってくださいませ。ちょうど今お菓子が焼けました」。「そうしてやってください。2週間後にはこの子もまた嫁に行ってしまいますので」。靴屋も言った。

この娘はコリントの市役所の会計係をしている役人に見初められたのだという。それで、少し無理をすれば持参金を工面してやれないこともない――つまり、いよいよとなったら店を処分してもいいと考えていると話すのだった。

ニコラスは、3番目の娘に導かれて台所に行った。娘は香りの良いお茶を入れ、焼いたばかりの菓子を彼の前に置いた。「これは『天使の微笑』というお菓子ですの。さ、召し上がってくださいませ」

それは焼き上げた生地の上に柔らかく煮たりんごをのせ、上からクリームと蜂蜜をかけたもので、ひと口頬張ると豊かな香りが口の中に広がった。ニコラスは夢中で食べてしまった。「これは亡くなった祖母がその親から教わったお菓子でございます。お気に召しましたでしょうか」。娘は少し恥ずかしそうに言った。

「おもてなしありがとうございました。あなたのお名前伺っていいですか」。「アンゼラと申します」。ニコラスはこの娘といろいろ話をし、靴屋の家をあとにしたのだった。

(これが最後になるなあ)ニコラスは翌日の深夜、また金貨の詰まった麻袋を担いで靴屋のもとに忍んで行った。そしてベランダに登り、窓から中をのぞき、なるべく音を立てないように金貨の詰まった袋を持ち上げると、窓から部屋の中に押し入れた。

ガッシャーン!――とあたりの空気を震わせるような大きな音がした。ニコラスは転がるように外階段を駆け下りたが、靴屋が大声を上げて家から出てくるのを見た。

(どうか見つかりませんように)そう念じつつ、彼はどこまでも駆けた。しかし、どこまでも靴屋は追ってくる。ニコラスは太っていたのであまり速くは走れず、すぐに追いつかれてしまった。

「お顔をお見せください。私どもの恩人であるお方」。そう言って靴屋は相手の服をつかみ、その顔を自分の方に向けさせた。

「これは・・・ニコラス様・・・」。靴屋は後ずさりして、ぼうぜんとつぶやいた。「どうしてこんなことを・・・」。それから、その足もとにはいつくばった。「ありがとうございます。あなたは私と3人の娘を助けてくださいました。あの子たちは、皆幸せになりました」

「いいんです。亡くなった養父(ちち)の意志を継いで、自分もできるだけのことをしたつもりですから」。ニコラスは手を差し伸べて、彼を立ち上がらせると言った。

「袋の中に金貨と一緒にダイヤモンドのネックレスを入れておきました。あの天使のようなアンゼラさんがいつまでも幸せでありますように」。そして、ニコラスは一礼すると立ち去った。

その次の週に、靴屋の末娘の婚約が無事成立し、二人がコリントに旅立ったといううわさがニコラスのもとに届いた。その翌日。靴屋のディメトリオは出来上がった靴を持ってニコラスを訪ねてきた。

そして礼を述べるとともに、どうしても渡してほしいというアンゼラからの手紙を彼に渡した。それには次のような感謝の言葉と共に、あの「天使の微笑」の作り方を記したレシピが添えられていた。

「情け深く、優しいニコラス様。このたびは本当にありがとうございました。『天使の微笑』大変お気に召したようなので、感謝と共にその作り方を記したレシピを添えておきます。遠い地からお幸せをお祈りしています」

*

<あとがき>

窮乏生活の末、娘たちを奴隷に売ろうとしていた靴屋を助けたニコラスは、嫁入りが決まった末娘アンゼラと店でしばし語り合います。

彼女はコリントの市役所に勤める役人に見初められて、旅立つ直前でした。彼女はニコラスに、秘伝の焼き菓子「天使の微笑」をごちそうしてから、そのレシピを父親の手に残して去っていったのでした。

後になってこの「天使の微笑」というレシピは、伝道者となったニコラスにとり、どれだけ助けとなったことでしょうか。ニコラスは、自ら焼き菓子を作り、貧しい子どもたちの家に配ることを思いついたのですが、それはこのアンゼラの「天使の微笑」がもとになったものでした。

神様はしばしば思いがけない人との出会いを用意してくださるもので、その時には分からなくても、その出会いが人生を変えるということはよくあることです。さらに、このアンゼラは不思議な導きで、後に夫ともどもクリスチャンになったのですから、神様の摂理は計り知れないものがあります。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(5)靴下の中のお金

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(4)ガイオの死

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(3)施しの日

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(2)貧しい者への配慮

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • いのちのことば社元職員が不適切な会計処理、数千万円規模か 社長は引責辞任へ

  • 2025年のトップ10ニュース(国際編)

  • 【クリスマスメッセージ】この世に来られた救い主―イエス・キリスト 渡部信

  • 2025年のトップ10ニュース(国内編)

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(259)聖書と考える「年末SP・秘湯ロマン」

  • 京大などのチームがキリスト教AIの開発開始 「プロテスタント教理問答ボット」を発表

  • 一人の信者を作るためにたくさんの敵を作らない伝道 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(12月30日):ツバル 南洋の島国が、岩なるキリストに立つように祈ろう

  • 東京女子大学、次期学長に東大副学長の太田邦史氏

  • 自ら体験し受け入れるキリスト 万代栄嗣

  • いのちのことば社元職員が不適切な会計処理、数千万円規模か 社長は引責辞任へ

  • 2025年のトップ10ニュース(国際編)

  • 2025年のトップ10ニュース(国内編)

  • Gゼロ時代の津波石碑(8)日本人が宗教アレルギーとなった経緯 山崎純二

  • 【クリスマスメッセージ】この世に来られた救い主―イエス・キリスト 渡部信

  • イーロン・マスク氏、最も尊敬するのは「創造主」 宇宙を創造した神の存在を肯定

  • 東京女子大学、次期学長に東大副学長の太田邦史氏

  • 上智大学キリシタン文庫が初の貴重資料展、キリシタン版や大友宗麟書状など30点を公開

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(259)聖書と考える「年末SP・秘湯ロマン」

  • 京大などのチームがキリスト教AIの開発開始 「プロテスタント教理問答ボット」を発表

  • 2025年に最も人気のあった聖句はイザヤ書41章10節 この6年で4回目

  • 元阪神マートンさんが来日ツアー「クリスマスの贈り物」 関西学院大でトークイベントも

  • 上智大学キリシタン文庫が初の貴重資料展、キリシタン版や大友宗麟書状など30点を公開

  • 【クリスマスメッセージ】この世に来られた救い主―イエス・キリスト 渡部信

  • 英聖公会の聖職者ら約700人がカトリックに、この30年余りで 女性司祭導入後に急増

  • イーロン・マスク氏、最も尊敬するのは「創造主」 宇宙を創造した神の存在を肯定

  • 日本聖書協会が恒例のクリスマス礼拝、聖書普及事業150年を感謝しコンサートも

  • 【書評】鶴見太郎著『ユダヤ人の歴史―古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』

  • Gゼロ時代の津波石碑(8)日本人が宗教アレルギーとなった経緯 山崎純二

  • 京都ノートルダム女子大学、次期学長に酒井久美子氏 学生募集停止の来年4月から

編集部のおすすめ

  • 給食で子どもたちに笑顔と教育の機会を 最貧国マラウイを支援する「せいぼじゃぱん」

  • 日本聖書協会が恒例のクリスマス礼拝、聖書普及事業150年を感謝しコンサートも

  • 「神の霊によって、主はこの国を造り替えられる」 日本リバイバル同盟が「祈りの祭典」

  • 15人の演者でマルコ福音書を再現、観客をイエスの物語に引き込む「マルコドラマ」

  • 全ての人に福音伝えるための「イエスのモデル」 WEA総会でリック・ウォレン氏が講演

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.