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夜明け前

夜明け前(5)囚人A 星野ひかり

2023年2月16日18時11分 コラムニスト : 星野ひかり
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夜明け前(1)世界の出口 星野ひかり+

自分を傷つけ、壊したい。その衝動は、ずっと私の中にありました。

「この社会につぶされて、殺されてしまう前に、自ら死を選ぶんだ」。そんな決意がありました。昔の私にとって、人や社会のまなざしは、私を殺すだけの力を持った恐ろしいものであったのです。

自分を傷つけることで、私を傷つけた人たちにどれほどのことをしたのか分からせてやる。そんな怒りを燃やしては自分自身を傷つけました。そして、甘い自己憐憫に浸って酔いしれました。

さまざまな自傷癖が私に現れました。自分で自分を殴ったり、体に爪や刃物を食い込ませ、血が流れるまで傷つけたり、薬を大量に飲んで運ばれたこともあり、体に合わないお酒を無理にラッパ飲みして死ぬような思いをしたこともありました。

「生きられない」と泣きながら、じりじりと壁の向こうの死を見つめて、安堵したのです。

私には、10代、20代の頃、同じように傷ついている人が寄ってくることがよくありました。そして友情を育むのですが、傷ついている者同士ですから、なかなかその関係が継続することはありませんでした。

ある日、ネットのニュースサイトを開き、ある事件の裁判の記事を読んでいました。すると、いつか1、2年ほど ‘トモダチ’ であった、一人の女の子との記憶が呼び覚まされてゆきました。

彼女とは20代のはじめにネットを通じて知り合い、実際に会って遊んだり、お互いの家に泊まり合ったりして楽しい時間を過ごしました。いつも笑っているリスのようなとてもかわいらしい子で、よく気を使って人に寄り添うことが得意な子であり、私は彼女が大好きでした。

でも、彼女がどうやって暮らしているのか詮索することはありませんでしたし、ネットのハンドルネームで呼び合い続け、本名もちゃんと知ることはありませんでした。それが今となって、ある事件の裁判の記録に私の目は釘付けになってゆき、その事件のことや囚人Aのことを夢中に調べ始めたのです。

「まさかあの子ではあるまいか」。その疑念は調べれば調べるほどに、確かなものになってゆきました。その事件は、あまりに凄惨なものでした。

私はまずおびえました。私も被害者になっていたかもしれない、と彼女と接点のあったことを恐ろしく思ったのです。そして泣きました。彼女の人生が、こんなに暗いものであったことを悲しみ、泣いて暮らしました。

冷たい刑務所の中にいる彼女を思っておいおいと泣き、また被害者の方たちや被害者の家族の方たちのことを思っては、彼女を責めました。イエス様の言葉が胸の内に響きました。

「あなたがたのなかで、罪のない者が、まずこの人に石を投げなさい」(ヨハネ8:7)

とても冷静ではいられず恩師のもとに行き、私が知ったことを打ち明けました。恩師は神妙な面持ちで真剣に話を聞いてくれ、私のために、彼女のために、祈りをささげてくださいました。

一度は深く交わった2つの人生が、どうしてこんなに違うほうへと別れてしまったのかと思いました。私が彼女のようになっていたって何もおかしくありませんでした。彼女にどうにか手を差し伸べることはできないだろうか、と試行錯誤して混乱しました。私の精神状態はもはや尋常ではなく、夫は療養のための入院を勧めました。

義父は優しく私を戒めました。「あなたはとても優しく感受性も強い。しかし、まず家族を第一としなさい。どんなに優しくても、夫を守り、家庭を守ることができなくなっては、元も子もない」。義父のまなざしは力強く、何十年も一心に家庭を背負い守ってきた家長としての力にあふれておりました。その言葉を聞いて、ずっと浴びることができなかった熱いシャワーを浴びることができました。

今も、彼女のことを思うと涙がにじみます。私はどんな事件を起こした彼女であっても、彼女を好きなままでした。私の人生も、イエス様と出会わなければどれほどの暗がりに引き寄せられていったことでしょう。

どんな犯罪者も、死刑囚であっても、私と変わりありません。どんな罪でも犯しておかしくない、私は恐ろしい罪びとです。ただ、イエス様の十字架だけが、この世界の頂きに掲げられているのです。

私は足元に屍を敷いて、それを踏みにじっている者です。恐ろしくおどろおどろしい罪の血の流れた私の、唯一の救いがイエス様であるのです。

この身に流れる罪の血は濃いものです。たとえ信仰を持ったとしても、私は罪にあらがえないみじめな者に過ぎません。

しかしイエス様の十字架の前にすがると、「たとえ、あなたがたの罪が緋のように赤くても、雪のように白くなる。たとえ、紅のように赤くても、羊の毛のようになる」(イザヤ1:18)と、神様は優しく言ってくださいます。唯一の救いの道であるのです。

私の手だって、血で染まっています。それを洗うことができるのは、この世界にイエス様しかいないのです。イエス様は十字架につきました。神様にささげる最後の、そして唯一完全なるいけにえとして、この罪びとのために死んでくださいました。

今、私は耐えられずに医師から処方されている薬を飲みました。どうしてもつらい時に、2錠まで飲んでいいと言われている薬を2錠よりも多い量ふくみ、かみ砕いて飲み干しました。間もなくしたら、この心の痛みも消えるでしょう。

そんな者がどうして何かを偉そうに言えるでしょうか。私は情けないほど弱いです。でも、弱い者だから言えることもあるのではないかと思っています。弱くて、どうしようもない私だから、そこから感じられることがあるのではないかと。そうでなければ、強い人しか何も言えない世の中になってしまいます。

‘どうか、この弱き者の声を聞いてください’ 今までも、そう思いながら物語を紡いできました。もちろん誰だって弱いけれど、その中でもまた、弱いほうの私だから書けることもあるのでは・・・と。

囚人Aはこの社会ではもはや相当な嫌われ者でしょう。ぜひ死刑に、または一生檻の中から出ないでほしい。そんな叫びが聞こえてきます。でも彼女は私の友達です。いつかもし天国で会えたなら、私は彼女に野花で冠を作ってあげようと思っています。会えると信じて、祈り続けているのです。

こうして書いていたら、すっかり朝が来ていました。夫はまだ眠っていますが、私はそろそろ台所に立って、朝ごはんの支度をします。

人はそれぞれに重荷を背負って生きています。神様がそれぞれにお与えになった重荷は、神様からの贈り物であるのでしょう。私の重荷もそれなりに重く、耐えられなくなってうずくまってしまう時もあります。

それでも神様は、愛をもってそれぞれに重荷を与えてくださいました。どんなに重くても、重いほどに神様の愛を背負っているのだと信じて生きていたいです。

今朝もなんとか台所に立って、野菜の多い朝ごはんを夫に用意してあげようと思っています。

たかだか44年でも、困難の少ない人生とはいえないものでありました。いつか恩師の前で「苦難の多い人生だ、自分は神様に嫌われているのではないか」と泣いたとき、恩師は言ってくださいました。

「ひかりさんは、特別に神様に信頼され、愛されているのですね」

その言葉とまなざしは、今でも私を支える力となりました。私は恩師をはじめとして、信仰の先輩がたにも、たくさんの素敵な言葉を与えていただきました。

その言葉は命のように私に流れ込み、私を立ち上がらせ、生かす力となりました。私もそのように、人に命を与える言葉を紡いでゆけたらと願っています。

言葉は命を奪いもし、与えもするのですから。言葉は、それによって世界ができたほどに、重いものであるのですから。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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