牧師の小窓(207)坂本龍馬の姪・岡上菊栄について(その18) 福江等

2020年2月23日15時56分 コラムニスト : 福江等 印刷
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今の日本では、学校でのいじめが社会問題となって、いじめを苦にして自殺する子どもが後を絶ちません。菊栄が博愛園で育てていた子どもたちが、外でいじめられて帰ってくることがありました。そんな子どもがいれば、呼んでその子から理由を聞きました。

「孤児、孤児、親なしっ子。汚いぞ。臭いぞ。ヤーイ、あっちへ行け、といわれたぁ。おばあちゃん、もうあて(僕)学校へ行きとうない。行かん、行かん、学校はいやや」。そのような子どもの訴えを聞くとき、菊栄は心を痛めました。菊栄はすぐにそのいじめた子の名前と居場所を聞くと、飛び出して行くのでした。そして、そのいじめっ子を探し出してストレートに注意をするのでした。

「おまさんらぁは、いったいどういう了見で園の子どもをいじめたりするがぞね。うちの子どもはどの子も素晴らしい子どもばっかりよ。親から離れて暮らしていても真面目で一生懸命。そりゃまっことえらいぞね。そんなふうに人を見下げるようでは、おまさんらぁは、先行きロクな人間になれはしない。人は皆、平等、同じです。明日からはいじめたりしないと約束しなさい。おまさんらぁも良い子じゃ。おまさんらぁが立派な人間になるようにこのおばあちゃんが、心から祈っておりますきにね」と諭すと、子どもたちはうなずいたのでした。

菊栄は場合によっては、その足を親許へ伸ばすときもありました。「おまさんところの子どもに、園の子どもが、孤児院の子、貧乏人の子、とえらいさげすまれたそうです。うちの子どもは泣いています。いましがた、おまさんところの子どもに私は言うて聞かせましたが、気になることがあったもので、親御さんにも言うておかなきゃならんと思って。子どものころから人間に上下をつけることや、幸薄き人を嘲笑するような気持ちを持たせてはいけません。気の毒な子どもがいたら、勇気づけたり励ましたりして、仲ようせんといかん。そのところをよくご家庭で話し合ってみてください」

そして菊栄は、言わなくてはいけないことを言った後は、必ず子どもを褒めています。「おまさんところの子どもに会ってみると、性格の優しい良いお子ではないかとお見受けしました。だからきちんと言って聞かせればすぐに分かります」と。どの子も一様に豊かな人間になってもらいたいという菊栄の心が、地域の子どもや親の心に響いていったのでしょう。人々の眼差しが変わっていったようです。

(出典:武井優著『龍馬の姪・岡上菊栄の生涯』鳥影社出版、2003年)

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福江等

福江等(ふくえ・ひとし)

1947年、香川県生まれ。1966年、上智大学文学部英文科に入学。1984年、ボストン大学大学院卒、神学博士号修得。1973年、高知加賀野井キリスト教会創立。2001年(フィリピン)アジア・パシフィック・ナザレン神学大学院教授、学長。現在、高知加賀野井キリスト教会牧師、高知刑務所教誨師、高知県立大学非常勤講師。著書に『主が聖であられるように』(訳書)、『聖化の説教[旧約篇Ⅱ]―牧師17人が語るホーリネスの恵み』(共著)、『天のふるさとに近づきつつ―人生・信仰・終活―』(ビリー・グラハム著、訳書)など。

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