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太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯

太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯(5)遠友夜学校

2019年11月6日22時45分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:新渡戸稲造

18日間の船旅の後、船は港浜に着いた。新渡戸がメリー・エルキントンを伴って実家に行くと、あれほど反対していた養父太田時敏は妻と共に大喜びで2人を迎え入れ、親戚の者たちも駆けつけて口々に祝福してくれるのだった。

この年の3月。新渡戸は札幌農学校の教授として赴任することになった。ここで彼は、農業、英文学、ドイツ語を教え、課外にカーライルについて講義した。彼の心には、あの「青年よ、大志を抱け!」と言い残して去ったクラーク博士の言葉が深く刻まれていた。そして、博士がそうであったように、自分もまた、いかなる科目を教えるときにも必ず聖書の言葉を入れ、分かりやすく話をしようと決心したのだった。

新渡戸夫妻は、彼らの家を開放し、どんな人が訪ねてきても温かく迎え入れることを忘れなかった。たちまち彼らの家は、アメリカの「フレンド・ミーティング・ハウス」がそうであったように友情と交流の場となった。

2人は少し落ち着くと、家庭で「聖書研究会」を始めた。それから2人が通うことになった近くの教会で「日曜学校」の手伝いをするうちに、新渡戸は校長となった。もともと子どもが好きで、若者と話すことにも楽しみを覚えていた彼は、身振り手振りで聖書物語を語った。小さな子どもたちは目を輝かせて聞き入り、若者たちは極上の芝居を見るような思いで引きつけられるのだった。

もう一つ、新渡戸が行っていたことがある。それは札幌農学校に通いがてら、札幌の町をくまなく歩き、この町の人々の生活状態を観察することだった。そして、彼は大きな問題に直面した。それは、家が貧しいために4年間の義務教育すら受けられない子どもや、小さいうちから働きに出される少女が多くいる――という事実だった。

彼は角の居酒屋の前を通るたびに、赤ん坊を背負ってあやしながら、表を掃いたり、窓をふいたりしている少女がいるのを目にしていた。その日も、そこを通りかかると、少女はぼんやりとたたずみながら、悲しげな眼差しで遠くを見つめていた。新渡戸は、いつもカバンに入れて持ち歩いている「バイブル・クラス」の案内を差し出した。

「時間があったら、来てみない?」。すると少女は首を横に振った。「私、この店に奉公しているから・・・」。ポツンとそう言った。その悲しそうな顔は新渡戸の心に焼きついて離れなかった。

「メリー、この町では小学校にも通えない子がいるんだよ。つまり、小さいうちから働き詰めなんだ」。彼は妻に言った。そして彼らは、いつか時が来たら、昼間働かなくてはならない子どものための学校を作ろうと誓い合った。

1892(昭和25)年1月。新渡戸夫妻に長男遠益(トーマス)が誕生。しかし、喜びもつかの間、数日後にこの子は亡くなったのである。2人は深い悲しみに打ちひしがれ、立ち上がることもできないほどだった。ところがそんなとき、メリーの実家から千ドルのお金が送られてきたのである。

「これは神様が私たちの夢を実現させようとなさっているのではないかしら?」。メリーは言った。社会事業と女子教育に奉仕することを夢見てきた2人にとって、まさにこれは神の啓示だった。早速彼らは南4条4丁目の土地500坪と、古い2階建ての一軒家を買い取り、ここに昼夜働いて勉強することのできない人々のために学校を作った。

「見も知らない者たちが、ここで出会って友達になり、共に手を携えて勉強する――それがこの学校だ」。新渡戸は言ってこの学校に「遠友夜学校」という名をつけた。天国に行ったわが子遠益にもあやかったつもりだった。

この学校は授業料もただであれば、教師も無料奉仕だった。新渡戸が校長となり、札幌農学校の学生の中でボランティアを申し出た者が教師となり、分担して学課を受け持った。週2日だったのが、やがて毎日となり、普通の学科以外に看護法、礼式、裁縫、編物など実用学科に重点が置かれた。また、趣味、常識、品性の陶冶(とうや)に力が注がれ、日曜日にはキリスト教に基づいた道徳の講話がなされた。

新渡戸の心の中には、あのクラーク博士の人格教育の理想が形作られていたのだった。学校が貧民街にあったので看護師の巡回や消毒液の配布なども行わなくてはならなかったが、教師と生徒が一体となり楽しく行った。

しかし、新渡戸はこの頃から過労のため心身不調となり、療養を余儀なくされた。彼はやむなく親友の宮部金吾に夜学校を任せ、1898年メリーと共にアメリカに出航した。

*

<あとがき>

北海道に渡った新渡戸稲造と妻メリーは、貧しいために義務教育すら受けることができない子どもたちや、家の手伝いや働きに出されていて勉強することのできない少女たちがいることに心を痛めます。そして2人は「遠友夜学校」をその地で開校し、子女のための夜学を作りました。

夜間の学校は日本ではまだ珍しいものでした。新渡戸夫妻は北海道に着いてすぐに長男遠益(トーマス)を授かったのですが、わずか1週間でこの子どもは天に召されました。その悲しみを乗り越えての最初の教育事業でした。

この夜学校はまことに理想的な学校でした。貧しい家庭の生徒たちに無料で教育を施し、普通の学科の他に実用的な学科の基礎知識とさらにキリスト教精神に基づいた人格教育まで施したのです。

実に私たちの時代の学校が「登校拒否」や「いじめ」など深刻な問題を抱え、苦しんでいる姿を見るにつけ、新渡戸たちの教育理念がいかに素晴らしいものであるかを思わずにいられません。

(※これは史実に基づき、多少のフィクションが加えられた伝記小説です。)
(記事一覧ページの画像:新渡戸記念館提供)

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:新渡戸稲造
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