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神学書を読む(52)『キリスト教と死』に見る人間の愚かさとそれに注がれる温かな眼差し

2019年10月17日21時09分 執筆者 : 青木保憲
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関連タグ:宗教改革マルティン・ルター青木保憲
神学書を読む(52)『キリスト教と死』に見る人間の愚かさとそれに注がれる温かな眼差し+
指昭博(さし・あきひろ)著『キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで』(中央公論新社 / 中公新書、2019年9月)

世の中には、世界史上に残るような大事件も起こるし、誰の目にも触れられないような小さな出来事も起こる。それをどの視点で、どんな観点から見るかによって、歴史的な偉業と褒めたたえられることもある一方、「些細なこと」として一笑に付されてしまうこともある。

だがこの「些細なこと」が、単なるどうでもいいことではなく、その事柄を重大事として受け止めざるを得ない当事者にとっては、人生を左右するような一大事件と映ることが多々ある。そんな「トリビア」を集めたかのような一冊が、本書『死とキリスト教』である。

本書で、キリスト教の教義や教派の本質を俯瞰(ふかん)することはできないだろう。しかし、読み進めていくうちに、誰もが思わず「へぇー」と何度も声を上げてしまうことだろう。そんな面白さに満ちた本書は、その章立てからも楽しさ(おかしさ?)が伝わってくる。

第1章 キリスト教の来世観
第2章 幽霊の居場所
第3章 死をもたらすもの
第4章 死と葬儀
第5章 墓と社会
第6章 モニュメント

王様や法王(教皇)などが現世でどんなことをしたのか、ではなく、人は誰もが皆死を迎えることを前提に、どんな死に方をしたのか、またどんな処刑スタイルを採択したのか、はもちろんのこと、教派による死生観の違いが、生きている人間のみならず、「幽霊」という存在の形態にまで影響を及ぼしてきた、というあたりは白眉である。つくづく人間は「死の世界」をあれやこれやと夢想し、そこに生み出された共通幻想(世界観といってもいい)によって、後世に生きる者たちにとっては一種滑稽にすら見える考え方を真剣に、文字通り必死に守り通そうとしてきたのである。

本書は、中世キリスト教世界から宗教改革後のプロテスタント諸教派誕生の時代をトレースしている。そして、カトリックからプロテスタントが生み出されたことで、人々の生活がいかに変化したか、特に死にまつわる分野でどんな「転換」が起こり、結果それが日常生活にどのような影響を及ぼしたのか、がつぶさに物語られている。

例えば、27ページからの「煉獄(れんごく)」についての項目では、人の魂が死後にさまよう場所として想定されていた煉獄に関して、マルティン・ルターをはじめとするプロテスタント陣営が「煉獄など存在しない」と主張し、死者のために祈ったり、善行を積み上げたりすることによっては救われない、と訴えたことによって、人々の生活(特に貧者たち)に具体的なマイナス影響が出始めたことを、こう述べている。

葬列に加わり死者のために祈ることで、わずかでも食物や金品を受け取り、修道院で寄進者の命日に施されるパンなどで命をつなぐことができた最底辺の人びともいた。そうした善行の功徳の否定は、(中略)貧者の生きる糧を奪うものでもあった。(49ページ)

そして、筆者はこの宗教改革による価値観の転換をこうまとめている。

よいことをすれば、天国へ行ける、というきわめて素朴な感情をお札で可視化するわけだ。もちろん、そうして集めた金を堕落した教会が恣意的に使用したことへの批判はあるだろうが、それと善行を積むことで神のもとへ行けるという考えはまた別の事柄だろう。ルターは教会の堕落を糾弾することで、人びとの素朴な来世観を否定してしまったのである。(35ページ)

本書はこのように、プロテスタントのキリスト者が「当たり前」として受け止めてきたこと(人は信仰によってのみ救われる)をカッコに入れることで、カトリックからプロテスタントへ、コペルニクス的転換を強いられた人々の日常生活の激変を描き出している。それはやがて人々の生活全領域にまで影響を及ぼし、ついに死後の世界にまで、新たな世界観を打ち立ててしまったことを物語る。

さらに、第4章以降に登場する著名人や位のある人々の、死への向き合い方を読み続けていくと、私たちが思う以上に、当時の人々が教え込まれたキリスト教教義に基づく「死」を恐れていたことが分かる。そして、その恐れからさまざまな防御策を講じようとしている様に、「気持ちは分かるけど、そこまでしなくても・・・」と思わされてしまい、苦笑を禁じ得ない。

本書を読み通して思うことは、やはり人の上に立ち、教義や教えを「真理」として説く者たちの責任はとてつもなく重い、ということだ。それは、本人が悪気なく行う行為であったり、また、不正や偽りに対する義憤から発せられる「正しい行動」であったりするかもしれない。当の本人の中には神の声が聞こえているのだろうが、その結果を歴史的に振り返ってみると、「些細なこと」と一顧だにしない態度は決して取れないだろう。

己の信じる「正しさ」を振りかざすことで、時代や世界を変えてしまうことがある、ということを肝に銘じる意味でも、教会の指導者や「先生」「教師」と呼ばれる立場にある者は、本書を読んで、くすくすっとしながらも、己の襟を正してみてはいかがだろうか。

■ 指昭博(さし・あきひろ)著『キリスト教と死 最後の審判から無名戦士の墓まで』(中央公論新社 / 中公新書、2019年9月)

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◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:宗教改革マルティン・ルター青木保憲
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