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孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯

孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯(最終回)白鳥の歌

2019年8月21日14時45分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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1815年4月。ヨゼフ・シュミットが再び戻ってきて、ペスタロッチに協力を申し出た。友人や彼の援助者たちは、もうあのような男とは関わらないほうがいいと言っていさめたが、ペスタロッチは耳を貸さず、喜んでシュミットを迎え入れた。そして、すぐに元の職務に復帰させたのだった。

ペスタロッチは、彼が戻ってきたことで心の平安を取り戻し、『純真者に訴える』という著書を完成させた。これは、彼が今まで心に温めてきた教育思想を述べたものだった。言うなれば最もペスタロッチらしい書と呼ばれるべきものである。

これは思いがけない成功を呼び、爆発的に売れた。ペスタロッチはシュミットの助けで学園の経済的安定がもたらされたことを手放しで喜んだ。しかし、運命はゆっくりと暗い谷間へと向かっていった。

1815年12月11日。ペスタロッチ夫人アンナが死去した。彼女の突然の死は、立ち上がれないほど彼を打ちのめした。

「私の傍らで過ごした彼女の生活は困難なものでした。悲嘆と心配こそが彼女の宿命だったのです」と彼は友人への手紙に記している。これに加えて一層彼を悩ましたのは、再び激しくなった教師間の闘争だった。

原因はまたしてもシュミットにあった。ペスタロッチの片腕となっているニーデラーが、ロゼット・カストホーファーと結婚して住居をある学園の中に移したので、シュミットは一人で思いのままに学園を管理していた。

「教育も一種の事業だから、営利というものも考えなくちゃいけません」。シュミットはこう言って、ペスタロッチが今まで行ってきた子どもたちへの「職業教育」と「宗教教育」を排して自分が考え出したカリキュラムを教師たちに強要し、学園の利益となるようなことのみを優先させた。

1816年。教師間の闘争はもはや公然のものとなった。この時、クルージー、ニーデラー、ラムザウアー他4人の教師は団結して、このままでは教育の危機となるからどうかシュミットを免職処分にしてほしいとペスタロッチに迫った。

しかし、ペスタロッチは学園を経済的危機から救ってくれたシュミットをかばい、4人の意見を斥けた。この年の夏が来る前に、クルージーを含む16人の教師が学園を去った。この中にはラムザウアーも含まれていたのである。

また、昔イノホーフでの危機を救ってくれたあの家政婦エリザベート・ネーフは老いたペスタロッチの世話をするために、アンナ亡き後もずっと学園で働いてくれていたのだが、彼女もシュミットの改革の犠牲となり解雇された。ペスタロッチは何ひとつ口を挟むことができなかった。

このような暗い日々の中にあるペスタロッチに、久しぶりに朗報がもたらされた。プロイセンのブレスラウ大学がペスタロッチを名誉教授にすることに決定したのである。力と自信とを取り戻したペスタロッチは、シュミットの助けでコッタ書店から全集を刊行する契約をとりつけたのだった。

ペスタロッチはここでようやく自分の本来の理想が実現できることを感じ、1818年9月、イフェルテンから数百メートルほど離れたクランディという地に貧民学校を開校した。これこそ彼があのシュタンツの孤児院で惜しくも奪われた夢を実現させてくれるものだった。

しかしながら、シュミットは有無を言わせない力で、この施設をイフェルテンの城内にある学校と合併させてしまった。これは最大の不幸をもたらした。クランディの貧しい子どもたちは日課として掃除その他の労働をしなくてはならず、イフェルテン学園の金持ちの子どもたちは労働をせずに勉強したり遊んだりしていたので、やがて子ども同士の間に憎しみと敵対感情が生まれたのであった。

これがもとで、ペスタロッチはニーデラーとの関係がこじれ、ニーデラーはペスタロッチを相手に裁判まで起こした。判決はペスタロッチにやや有利な形で終わったが、世界中の人たちがこの事件に不快感を抱き、生徒が全く学園に来なくなり、利益もすべて失われた。

やがてヴァート州はヨゼフ・シュミットを好ましからざる人物として州外追放の処置をとった。ペスタロッチはこれに対し異議を申し立てたが聞き入れられなかったので、彼は自分の施設を解体した後、自らイノホーフに引きこもり、『白鳥の歌』という最後の著書の中で静かに回想にふけるのだった。

*

彼が死去する少し前に、思いがけずシンツナハの「ヘルヴェチア協会」が彼を会長に選んだ。ペスタロッチは感謝の意を表するために衰弱した体を引きずって現地に行き、「ランゲンタールの講話」を途切れがちな言葉で一同に語った。その後、胆のうの病のために帰らぬ人となった。1827年2月15日のことだった。

*

<あとがき>

かつてシュタンツの孤児だったヨゼフ・シュミットと再会してから、ペスタロッチの人生は一気に暗い谷間へと落ちてゆきます。教師間の分裂は学園を崩壊させ、彼自身世間の非難を浴び、長年にわたって彼を支えてきたアンナ夫人も天に召されました。

そんな彼に最後の栄光がもたらされました。クランディという村に貧民の子どものための養護学校を開くことができたのです。孤児に囲まれて彼は幸せでした。しかし、破局は突然やってきました。

シュミットの野心のために施設は他の学校と合併。やがてこの「貧民学校」も閉鎖に追い込まれました。さらに、シュミットは暴力事件を起こして国外追放となり、夢を無惨に踏みにじられたペスタロッチは自らの手で施設を解体。イノホーフに隠退して瞑想の日々を過ごしたといわれます。

しかし、シュミットとの再会の中にも神の摂理がありました。この孤児を見捨てず最後まで関わったことこそが、ペスタロッチをして真に「孤児の父」と呼ばれるゆえんとなったからでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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