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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(最終回)エピローグ―炎の遺書

2019年2月6日16時13分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

祖国アメリカに帰ったヘボンは、イーストオレンジに小さな家を買ってクララと共に静かな日々を過ごしていた。子どもや親戚もなく、故郷の人々の中に見知った顔を一つも見いだせなかった。彼は時折依頼を受けて出かけるほかは、ほとんど毎日読書をして過ごし、外に出ることはなかった。

不思議なことに、日本ではあれほど快活で機知に富み、どんな人ともすぐに笑顔で会話のできる彼が、アメリカに帰るや寡黙になり、めったに微笑を見せなくなった。たまに日本での思い出話が出ると、その顔が輝き、少しはあの事、この事を語ったが、その後はじっともの思いにふけるのだった。彼は日本のことを何か気にかけているのだ――と、クララは気付いた。何を心配しているのだろう?

1905(明治38)年のある日のことだった。日銀総裁の高橋是清(これきよ)がニューヨークからはるばる汽車に乗ってニュージャージー州イーストオレンジにヘボンを訪ねた。90歳になったヘボンは、高橋の来訪を聞くと、きちんとフロックコートを着て、ややあぶなげな足取りで階段を降りてきた。

「オオ、高橋サン、ヨク来テクレマシタ」。彼は久しく使わなかった日本語であいさつし、彼を抱擁した。「先生、お元気そうで何よりです」。高橋は恩師のしわくちゃな手を握った。ヘボンの目に、クララ塾に初めて来て、きちんと手を突いて教えを乞う12歳の和喜次の姿がよみがえり、思わず微笑した。

「先生、私は公務の間にも、先生から昔教えていただいた聖書の物語や賛美歌を思い出すんですよ」。彼は言った。それから、彼のもの問いたげな目は、室内から奥の部屋に向けられた。

「クララ先生は、お元気でしょうか?」。ヘボンの顔は曇った。「妻は入院しています。会ってももう何も分からないでしょう。彼女は脳神経が壊れていますから」。高橋は痛ましそうにしばしうなだれていたが、顔を上げると言った。

「日本は変わりました。文化の向上は驚くべきものがあります。それが日本を良い方向に導くのか、悪い方向に導くのか分かりませんが、先生が訳してくださった聖書はどんなに世の中が変わろうとも、絶対的な価値観を示してくれるでしょう」

それから、2人はしばらく語り合った。「また、お会いしましょう」。「この地上で許されなければ、天の父の家で」。ヘボンは右手で天を指した。

しかしながら、これが師弟の最後の対面となった。日本に帰国した高橋は、2・26事件に巻き込まれ、陸軍の若い将校に射殺されてしまったのだった。

クララの容態は日を追って悪化していった。かつて成仏寺前で頭を強打された後遺症から頭痛、不眠、神経障害に長らく悩まされてきたが、日常生活にも支障をきたすようになったことから、ずっと入院生活を送っていた。

そして、高橋の訪問があった翌年の3月3日。駆け付けて手を握るヘボンの顔も分からないまま、彼女は病院で最期を迎えたのだった。

*

一人残されたヘボンは、96歳まで生きたが、最後は枯木が朽ち果てるように静かに逝ったと伝えられている。それは1911(明治44)年9月21日未明のことであった。

彼はすでに天に国籍を持つ多くの人々に守られ、導かれつつ、神の住居目指して飛び立とうとしていた。しかし、彼は一瞬ちゅうちょして、後にしようとする地上を振り返った。

その時、初めて彼は、自分が気がかりに思っていたものが何であるかを悟った。彼は日本の未来を担う若者たちに向かって、大声であるメッセージを叫んだ。それは炎となって燃え上がり、渦を巻きながら暗い地上に落ちていった。

同じ頃、白金にある明治学院の近くに住む住民は大きな爆発音を聞いた。外に出たところ、校舎が炎上しているのが見えた。消防車が来る頃には、建物はすっかり火に包まれ、あちこちから人が集まってきた。大学の教職員も、学生たちも駆け付けてきた。

そこへワシントン駐在大使から「ヘボン博士死す」との電報が届いた。永眠の時刻は9月21日午前5時と記されていた。不審な出火時刻も同じく、21日午前5時だった。

「あれはヘボン先生のメッセージだよ」。学生の一人が仲間に言った。「先生は、われわれに将来の日本を託され、励ましの言葉をくださったのだ」

*

<あとがき>

日本において大きな使命を果たし終えたヘボンは、夫人と共にアメリカに帰り、イーストオレンジで静かに余生を送っていました。しかし、不思議なことに、日本滞在中はあれほど快活で、ウィットとユーモアに富んだ会話で皆を楽しませていたヘボンがアメリカに帰った途端、人が変わったように無口になり、ほとんど家に閉じこもったまま人と交流しなかったといわれています。

きっと彼はその心に大きな喪失感を覚えていたのでしょう。つまり、日本が国際的に独り立ちするのを手助けすることは彼の人生の最大の喜びであり、生きがいだったのです。これは、彼が死去した日に起きた不可解な事件につながります。

1911年9月21日午前5時。彼の魂が地上を離れたその時、突然大音響と共に爆発が起こり、明治学院のヘボン館が炎上したのです。これについてはさまざまな推測がなされたのですが、誰もが確信したことは、ヘボンは日本人にあるメッセージを残そうとしたのではないか――ということでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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