月桃通信(7)沖縄は泣いている 石原艶子

2018年12月19日15時06分 コラムニスト : 石原艶子 印刷
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辺野古海域へ投入する土砂を運ぶ土砂運搬船。抗議のカヌーが周辺に見える。土砂はブルーシートで覆われており、運搬船はこの後接岸し、重機が船の上に乗って作業を始めた。陸地には土砂を積んだダンプカーの列も見える=14日午前9時ごろ(写真:山本英夫撮影、ブログ「ヤマヒデの沖縄便りⅢ」より許可を得て転載)

「悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。義のために迫害される人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである」(マタイ5:4、10)

辺野古の海、土砂投入始る――12月14日、沖縄防衛局は土砂投入を予告はしていましたが、本部港塩川地区の使用不可の中、まさかと思いきや、名護市安和(あわ)にある民間の琉球セメントの桟橋を使って、ついに土砂が辺野古の海に投入されました。命懸けで阻止したい一心の私たちは、安和の港入口に早朝6時から座り込み、キャンプ・シュワブのゲート前にも座り込み、海上での船、カヌーでの必死の阻止行動をしました。しかし、安倍政権は沖縄の民意を一顧だにせず、虫けらのように踏み潰し、埋め立てを始めました。

あまりの理不尽さに、泣きながら必死で抗議する戦争体験者をはじめとする高齢者の私たちに対して、機動隊と防衛局職員を最大限動員して、すさまじい弾圧をして沖縄の民の人権を抹殺しています。非暴力の私たちは、ゾウにくっついたアリのように、ひとたまりもなく排除されていきます。わが身が削られるように痛み、悔しくてたまらない。悲しみがいっぱい心に沈んでいく。みんなみんな泣いている。

なぜ、こんなに美しい神が創られた命の海を埋め立ててまで軍事基地を造らなくてはいけないの? どうしてやめられないの? 聞いても本当のことは誰も答えてはくれない。責任を持つ政治家は一人も存在しない。ただ任期中の仕事として先の見通しもなく次世代への責任もなく、保身と売名、名誉欲とお金のため、その場限りの無責任な空しい言葉だけ。

岩屋毅防衛大臣は強調して言った。「日米同盟のためではない。日本国民のためだ。日本の防衛最前線は南西諸島だ。この地域の抑止力を減退させるわけにはいかない。政府は政府としての責任をしっかり果たしていく」と。政府の責任とは、辺野古新基地を造るということなのか。県民は「日本国民の中に沖縄は入っているのか」と、沖縄差別の理不尽さに怒っています。日本国民のためだと言うならば、これはもはや沖縄という一県の問題ではないのです。日本中の人々がこの問題と向き合い、沖縄を差別し犠牲にしてもよいのか、あなた自身の問題として考えてほしいと、私は強く問いたいのです。

私は沖縄から見える日本という国が今や、とんでもない軍事大国への道を猛進している姿を見て戦慄を覚えます。貧困の子どもたちを見捨て、高齢者をいじめ、弱き者を切り捨て格差社会を拡大させています。防衛費は拡大し、5~6兆円、借金を増大させながら米国の軍需産業を助けています。そして憲法9条改悪に突き進む欺瞞(ぎまん)に満ちた安倍政権をどうして国民は許しているのでしょうか。人殺しの軍事基地を拒絶し、先の世代のために平和をつくろうとして闘っている沖縄の「命どぅ宝」(命こそ宝)の心が、日本中の人々の心となりますように神の助けを祈ります。

私の疑問と考え――人間はなぜ覇権争いをするのか、なぜ平和共存ができないのか、なぜ人を殺すのか。神に創られた人間は神に反逆したいという罪を持った存在、神に反逆することによって知恵を際限なく発達させて、神のごとくになりたいと、神と争っているように思えます。神は人に向かって語られました。

主の成し遂げられることを仰ぎ見よう。主はこの地を圧倒される。地の果てまで、戦いを断ち、弓を砕き槍(やり)を折り、盾を焼き払われる。「力を捨てよ、知れ、わたしは神。国々にあがめられ、この地であがめられる」(詩編46:9〜11)

とどろけ、海とそこに満ちるもの、世界とそこに住む者よ。潮よ、手を打ち鳴らし、山々よ、共に喜び歌え、主を迎えて。主は来られる、地を裁くために。主は世界を正しく裁き、諸国の民を公平に裁かれる」(詩編98:7〜9)

私たち人間は神を畏れ、神の前にひれふす者とならなくてはなりません。神を畏れない人間の傲慢は限りなき欲望に支配され、人類を滅びへと導くでしょう。嘉手納、普天間、キャンプ・シュワブなど、沖縄の基地から見えてくるものは巨大な軍需産業が生み出した一大企業としての構造的組織体の姿です。米国の多くの若者を飲み込みつつ、軍需産業の消費地として利用され、常に戦争を求め、戦争へとつながる不安定要素や状況をつくり出そうとします。

思いやり予算で基地を維持してくれて、莫大な軍備品(オスプレイ、イージス・アショア)などを購入してくれる日本ほどありがたい国はないでしょう。中国への不信、不安を高めつつ南西諸島を最前線に位置付けし、宮古、石垣への自衛隊基地を強引に押し進めています。この構造の中に置かれている沖縄を外側からの視点で見るとき、辺野古を唯一として強権的に埋め立てをする政府の本質とその愚かさが見えてきます。今さらながら、恩師の言葉「国は軍需産業によって立ってはならない」、死の商人となる危険を危機感を持って教えてくださったことの重大性が分るのです。

暗い中に一つの希望を指し示すニュースがありましたのでご紹介します。11月16日から3日間、アイルランドの首都ダブリンで開かれた国際会議に、世界35の国と地域から300人余りの人々が集まりました。主催者の一人、米国人のパーマン・アザットさんは「沖縄は私たちの問題意識の核にある。国を超えた連帯によって解決したい。沖縄の人々には世界が味方に付いていると伝えたい」と話されました。

また、アイルランド人のトム・クリリーさんは日本国内に130もの米軍基地があることを伝えると、ビックリしてこう言った。「日本は米国に原爆を投下され、大戦であんなに市民が苦しんだのに、どうして米国の戦争を支えることができるのかまったく理解できない。戦争の惨禍を経験した国民がなぜ、同じ苦痛を他国の一般市民に強いることができるのか」。彼は日本国民の責任の欠如を見抜き、「戦争を続ける米軍を支える日本国民はどうあがいても加害者の責任を逃れることはできないのだ」と。

沖縄代表として参加した辺野古在住の私たちの代表者、稲葉博さんは、辺野古や高江での基地建設の実態と抵抗する県民の姿、希少な生物や自然の写真を見せながらひっ迫した沖縄の現状を伝えました。稲葉さんは「国際的なネットワークで基地建設を止めればこの闘いには必ず勝てると信じている」と力強く語られました。

世界の視線が米軍基地に向いているというのに、日本国民の80パーセントは無関心、沖縄で起きていることを知らないというこのギャップはどうしてなのでしょうか。マスコミさえもが安倍独裁政権の支配下にあるのでしょうか。世界からの声によって日本人は目覚めるのでしょうか。いやなことは見たくない、関わりたくない、忘れたい、お上に逆らってはならない。保身に走る日本人の国民性はあの大戦を経験しても変らないのです。これらの国民性の根底に、天皇制があることは明らかです。沖縄を切り捨てることができたのも、根底に天皇メッセージがあったという事実がいかに重大であったかを知る思いです。

辺野古新基地は、政府は5年と言っていますが実際は13年かかるとも。軟弱地盤の問題などあり、変更事項に知事承認が必要。2兆円という予想は一体どれだけ膨張するかも分りません。すべて国民の税金を使うのです。土砂投入により県民を諦めさせて、県民投票前に決着をと、焦っている政府のやり方は県民の反発を増々強めています。この計画は頓挫し先に大きな禍根を残すことになるでしょう。これ以上の愚かなことはありません。私たちは決して諦めず声を上げ続けます。たとえ一人になっても、また一人がそしてまた一人が声を上げるでしょう。

週4回朝3時半に起きてキャンプ・シュワブのゲート前に出掛ける84歳の平良悦美さんは、外国メディアに「ここに座ることで何が変わるのですか」と尋ねられて答えました。「地球上に人を殺すことを拒絶した人間が一人存在したその事実が歴史に残ります」と。神の下にひれふして祈り、その場に命の限り立ち続けるその一人の存在の中に希望の光が見えるのです。私もその光に導かれて生かされる一人でありたいと願います。

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石原艶子(いしはら・つやこ)

1942年生まれ。16歳で無教会の先生との出会いによりキリスト者となる。全寮制のキリスト信仰を土台とした愛農学園農業高校に奉職する夫を助けて24年間共に励む。1990年沖縄西表島に移住して、人間再生の場、コミュニティー西表友和村をつくり、山村留学生、心の疲れた人たちと共に暮らす。2010年後継の長男夫妻に委ね、夫の故郷、沖縄本島に移住して平和の活動に励む。無教会那覇聖書研究会に所属。

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