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月桃通信沖縄

月桃通信(1)弱さで闘う 石原艶子

2018年7月27日19時16分 コラムニスト : 石原艶子
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関連タグ:沖縄米軍基地石原艶子
月桃通信(1)弱さで闘う 石原艶子+
辺野古漁港(名護市)に現れたウミガメ=7月23日午後2時ごろ(写真:山本英夫撮影、ブログ「ヤマヒデの沖縄便りⅢ」より許可を得て転載)

ある日、パウロの言葉が私の心に〝ストン〟と落ちました。

「わたしの恵はあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ。だからキリストの力が私の内に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。それゆえ、わたしは弱さ、侮辱、窮乏、迫害そして行き詰まりの状態であってもキリストのために満足しています。なぜならわたしは弱いときにこそ強いからです」(2コリント12:9~10)

辺野古新基地反対の、キャンプシュワブゲート前での座り込み抗議行動が始ってから、何と5年目を迎えました。信じられないほどの時の経過です。最近、この座り込みの現場の中で私は「弱さで闘おう」と思うに至りました。後期高齢者となり、日々、体力の限界と弱さを実感する中にあって、もう強さや勇ましさで闘うことはとてもできはしません。若い仲間たち(50~60代)は、実に勇ましく抗議し抵抗して、機動隊の負担を重く大きくして、全身全霊、全存在をかけて闘っています。その姿を見て「スゴイなあー、とてもまねできない!!」とただただ驚いている私です。しかし、この勇ましさ、強さは、しばしば弱い者を巻き込み、弱い者は、しばしば危険な状態に置かれてしまうことがあります。だから私は、強くて暴れる人のそばにいるのが怖いのです。

4月23日~28日とゲート前500人結集行動の時のことですが、予想外の事態が起きました。座らないで立ったまま機動隊と向き合う中で、前方の人が激しく押し合うので後の人は押し込められて、ある一人の女性が倒れました。その上に何人もの人が倒れ込み、胸を圧迫され、その方は肋骨(ろっこつ)4本と鎖骨の骨折という重症を負われました。私と同年代の女性でした。実は私もこの時、まったく同じような状態で倒れ、頭を打ちましたが、幸い、私の上に倒れてくる人がいなかったので助かりました。頭もコブだけで大丈夫で、守られたとしか言いようがありません。

そして強い人は「早く立て」と怒鳴っても、弱い者を助ける余裕はないことが分りました。初めの頃ですが、ある大先輩は、自分から歩くなんて屈辱的だと言われ、両手両足を持ち上げられごぼう抜きされていきました。しかし、私は歩いたからといって屈辱だとは思いません。もし、ケガをして家族に重荷を負わせることになったりしたら、座り込み行動を継続することも危うくなります。わが身はわれが守らなくてはいけない。自己判断、自己責任なのです。一人の独立人として主体的に行動しているのですから、それは当然なことです。

この4年間の行動を通して分ったことは「弱さで闘う」ということなのです。弱さの中にこそ、真に持続的な強さがあることに気付かされたのです。私は今、弱いままに、後期高齢者の一人として喜んでここに座り込んでいます。私の孫のような機動隊員に対して、私は両手を差し出して〝立たせてね〟という態度を示すと、彼らは私の両手を取って立たせてくれて、すごく優しく接してくれる。私を囲いの中には入れないで道路の向こう側へと、危なくないように見守っていてくれる。私の弱さが相手の優しい心を引き出すのだと分りました。孫のような機動隊員が私にはいとおしくてたまらない。こんな仕事を5年もさせられている沖縄の警察官たちが哀れである。

ここまでして強大な軍事基地を、美(ちゅ)ら海を生殺しにしてまで造る日本という国とは一体何ものなのでしょうか。誰のために造るのですか。何のために造るのですか。まともな答えは返ってはきません。沖縄の民はこうして今、国によって差別され、見捨てられているのです。人間の日本人の愚かさが絶望的であることに言葉を失います。

私ばかりではない多くの仲間たちが弱さの中で「新基地絶対反対」の意思表示をし続け、絶対に諦めない闘いをしています。人は弱さを知っている人こそが真に強い人ではないでしょうか。長く忍耐強く、粘り強い闘いを戦後73年も担い続けてきた沖縄の民は負けているように見えても、真の痛みを知っているからこそ、真に強い県民なのです。

リーダーだった山城博治さんは5カ月余りも拘留されて家族との面会も許されず、裁判を受け、病をも抱えて苦難の中に身を置き、たくさんの痛みを経験された方です。最近私たちと共に座り込み、闘いの場に立ってくださいます。山城さんは弱い人を見ると〝この人には乱暴してはいけないよ〟と言って弱い人をかばってくださいます。

私たちは人間としてここに生きているのですから、どんな状況の中に置かれても人間でありたいと願います。激しく厳しい闘いの中にいても、人間は人間の心を、人間の顔を決して失(な)くしてはなりません。弱さは私に人間の真実を教えてくれました。こうして私は後期高齢者となった今を喜び感謝しています。

《現場から》

◎とうとう護岸がつながってしまいました。囲まれてしまった海は生殺しにされてしまいます。サンゴ、魚、貝、海草などさまざまな生きものはすべて神様が創造されたものです。

◎ウミガメが漁港に入ってきました(山木英夫さん撮影)。いつもの産卵の浜を捜してもたどり着けないからさ迷ってきたのかもしれません。ウミガメさんは涙を流して人間の傲慢(ごうまん)な罪を教えているのです。

◎本部町の塩川港から辺野古に船で運ぶ砕石や土砂の搬入を阻止するため、早朝からうるまの仲間たちと抗議行動をしました。暑く過酷な現場は機動隊の若者にとっても厳しい現場です。次々とダンプから船に運び込まれていくのを私たちはどうすることもできず無力でしたが、みんな精いっぱいダンプ前に立ちはだかって抗議しました。熱中症注意を自分に言い聞かせながら抵抗し声を上げ続けました。

◎知事さんの「撤回」表明が間近ということで、11月の知事選に向って希望を持ち、現場では8月6日から2週連続集中行動、11日は県民大会です。防衛省は8月17日土砂搬入を明言しています。

◎防衛省が盗人のように夜の闇にまみれてゲート前に4メートルの柵を作り、水タンクで私たちの座り込みの場所を囲ってしまいました。狭められた場所に追いやられた中でも私たちは頑張っています。

地球が気候異変を起こし呻(うめ)き苦しんでいるときに、軍事基地など造っているときではありません。人間はなぜここまで愚かなのでしょう。いよいよ人間の罪の故に生存が厳しい時代に突入したと思います。

次回へ>>

◇

石原艶子(いしはら・つやこ)

1942年生まれ。16歳で無教会の先生との出会いによりキリスト者となる。全寮制のキリスト信仰を土台とした愛農学園農業高校に奉職する夫を助けて24年間共に励む。1990年沖縄西表島に移住して、人間再生の場、コミュニティー西表友和村をつくり、山村留学生、心の疲れた人たちと共に暮らす。2010年後継の長男夫妻に委ね、夫の故郷、沖縄本島に移住して平和の活動に励む。無教会那覇聖書研究会に所属。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:沖縄米軍基地石原艶子
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