Skip to main content
2025年6月30日09時21分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
混血児の母となって―澤田美喜の生涯

混血児の母となって―澤田美喜の生涯(6)黒い皮膚と白い心

2017年5月10日07時06分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:澤田美喜

美喜はパリに滞在しているとき、ジョセフィン・ベーカーという黒人女優と親しくなった。彼女はすでに世界的に名の売れたスターであったが、少しも偉ぶらず、支配人にも俳優仲間にも、幕引きや雑役夫にも同じように親しみのこもった言葉をかけていた。

また、貧しい人々への思いやりも忘れずに、興行が終わると、車にお菓子を山のように積んでスラムの子どもたちに配ったり、生活に困窮する者にはお金の援助をしたりするのが常であった。

美喜は、彼女と共にスラムを回るうちに、この優れた女性に対し、尊敬の思いを抱くようになり、2人の友情は生涯続いた。

そのうち、夫の廉三がニューヨーク勤務になったとき、ちょうどベーカーもある劇場と契約してこの町に来ることになった。美喜は再会に胸ふくらませて迎えに行った。

しかし、彼女が船を降りたとき、出迎えたのは何と劇場の支配人と美喜の2人だけであった。そして、タクシーに乗ろうとすると、その運転手は黒人を乗せることは法律で禁じられていると言い、乗せることを渋った。美喜はかっとして、思わず大声で怒鳴りつけた。

「つべこべ言わずにホテルに行くんだよ!」。すると、運転手は2人をにらみつけ、乱暴に車をスタートさせたので、美喜は頭を窓枠にぶつけそうになった。

ところがホテルに着くと、フロアの責任者が困ったように言った。「ただ今ホテルは満室です、奥様」。そこで、別のホテルに行くと、支配人が同じように客室はふさがっていると告げた。

こうして11のホテルを次々と回ったが、全部断られてしまった。ベーカーは涙をためた目で寂しそうに遠くを見ていた。たまらなくなった美喜はその肩を抱いて慰めた。

仕方なく、彼女はベーカーを自分のアパートにつれて行くことにした。ところが、管理人はこう言うではないか。「領事館の官舎は、治外法権だから法律では取り締まれませんが、このアパートの住人は黒人がいると知ったら、皆引っ越してしまうでしょう」

とうとう美喜は、自分が絵を描くために借りたアトリエに最後の望みを託した。すると、管理人は、拒絶はしなかったがこう言った。「表のエレベーターは使わずに、なるべく出入りは裏口を使って夜間にお願いします」

やっとアトリエに荷物を下ろしたとき、こらえきれずにジョセフィン・ベーカーは両手で顔を覆って泣き崩れた。「アメリカに来るのを楽しみにしていたのに。・・・とても愛していたのに・・・」

美喜は、この友人をどう慰めていいか分からず、心の中に人種差別に対する怒りがふつふつと湧き上がるのを覚えた。

いよいよ契約していたジーグフリート・フォリースが舞台げいこに入り、練習が始まると、美喜は彼女が心を傷つけられることがないように、ずっと付き添うことにした。しかし、監督やマネージャーは、見ている美喜が怒りで心が震えるほど横柄な態度で注文をつけた。

同じところを何度もやり直させたり、失礼な言葉を投げつけたり、こづいたりもした。しかし、ベーカーは穏やかにその言うことを聞き、絶えず微笑をもってけいこを続けていた。

「わたしは、自分の芸で白人たちを見返してやりたい」。彼女は、美喜にそうささやいた。

そんなある日。一緒に踊ることになっていた若いダンサーが、黒人と一緒に舞台に出るのは嫌だと言い出したのである。「そんなことをしたら、ボーイフレンドに嫌われてしまいます」

「何だって!」。美喜は叫ぶと舞台に駆け上がり、その生意気なダンサーを怒鳴りつけた。「おまえたちの芸なんて見られたもんじゃないくせに。自分の芸が見劣りするから恥ずかしいんだろう。何さ、トウモロコシみたいな髪をして、口をパクパク開けているきりじゃないか」

すると、そんな美喜の手を、ジョセフィン・ベーカーは温かな手で包み込むのだった。

やがてフィナーレになったとき、今度は別の男優がこう言った。「あんた一幕前にホテルに帰ってくれないか。このフィナーレは、白人だけのほうがいい」

その時であった。ベーカーは、きっと姿勢を正すと、つやのある美しい声でこう言った。「あなたたちの白い皮膚の下には、黒い心がある。そして、わたしの黒い皮膚の下には、真っ白い心がある」

そして、2人は手を取り合って、アパートに向かった。その後ベーカーは、この劇団との契約を破棄し、フランスに帰ってしまった。

*

<あとがき>

人種差別は、差別される黒人を不幸にするだけでなく、差別する白人に対してもモラルや思考能力を低下させ、人格を破壊させるものであることは、かのキング牧師も指摘しています。

澤田美喜の生涯最大の親友であったジョセフィン・ベーカーが、アメリカでどんなにひどい仕打ちを受けたかを思うと、私たちは胸が痛くなる思いです。

黒人の中には、素晴らしい才能を持つ俳優やミュージシャンなどが数多くいますが、欧米の人たちは、その才能は認めても、人種的に彼らが劣っていると考え、排除するのです。これは、長年にわたって培われた偏見でありました。

しかしながら、ベーカーが言った言葉、「あなたたちの白い皮膚の下には、黒い心がある。わたしの黒い皮膚の下には、真っ白い心がある」――不屈の精神と誇りに支えられたこれ以上崇高な言葉が他にありましょうか?

この言葉に、彼女を侮辱する人たちは心を打たれ、襟を正したのでした。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:澤田美喜
  • ツイート

関連記事

  • 生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(1)動物の苦しみ

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 【聖書クイズ】同一人物でないのはどの組?

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • ワールドミッションレポート(6月30日):インドネシア 静かに進む魂の変革

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 賢い時間の使い方「ゆっくり、今すぐに」 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • ワールドミッションレポート(6月29日):北朝鮮 大胆な一歩、北朝鮮で執り行われた秘密の洗礼式(3)

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 日本キリスト教協議会、米軍によるイラン核施設攻撃に抗議

  • ワールドミッションレポート(6月30日):インドネシア 静かに進む魂の変革

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 日本福音同盟、戦後80年で声明 日本の教会が戦時下に犯した罪の歴史と悔い改めを確認

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • リック・ウォレン牧師、カトリックのイベントで講演 宣教による一致を語る

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 日本キリスト教協議会、米軍によるイラン核施設攻撃に抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.