Skip to main content
2025年7月3日23時18分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
混血児の母となって―澤田美喜の生涯

混血児の母となって―澤田美喜の生涯(4)新しい門出

2017年4月13日19時43分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:澤田美喜

美喜はいつしか20歳の誕生日を迎えた。この頃になると、ひっきりなしに縁談が持ち込まれるようになるが、彼女は少しもその気がなく、あの手、この手を使って壊してしまった。

こんな時、彼女が慕っている加藤の伯母が、外務省勤務でクリスチャンでもある澤田廉三(れんぞう)からの話を持ち込んできた。不思議なことに、美喜は一目見ただけで彼に引かれ、相手も彼女に好意を持ったのだった。

そして、あっという間にこの縁談は整い、1922(大正11)年、2人は明治学院のチャペルで結婚式を挙げた。

やがて12月。廉三はアルゼンチンのブエノスアイレスに勤務することになったので、美喜も随行することになる。この時すでに彼女は身重になっていた。見送りにはたくさんの人々が来てくれたので、美喜は手を振り、にこやかに笑顔を振りまいていたが、ふと、離れた所にぽつんと立っている祖母を見つけて駆け寄った。

「おばあちゃん! 来てくれたのね」。しばらく見ないうちに、祖母は驚くほどやつれて弱々しくなっていたので、彼女は胸を突かれた。祖母は黙って小さな包みを握らせた。

「これは、船酔いしないためのおまじない。これをしっかりおへその上に載せておいで。おまえはおばあちゃんのことなど心配しなくてよい。新しい所で幸せになるんだよ」

美喜は涙を見せまいとしてトイレに駆け込んだ。そして、包みを開いてみると、中に小さな梅干しが入っていた。彼女はそれをしっかりおへその上に載せ、ひもで縛りつけた。

やがて人々の歓声に送られ、船は海に滑り出した。心配してあちこち捜し回っていた夫の廉三は、彼女の泣きはらした目を見て驚いたが、初めて日本を離れるので悲しくなったのだろうと、いたわるようにそっと肩を抱いた。

それから19日間波に揺られた末、ようやくアメリカ大陸に着いた。2人はカナダ、シアトル、ニューヨークと回り、いよいよ南米のブエノスアイレスに着いた。ここは「小パリ」と言われるだけあって、とても美しい町だった。

ここで美喜は多くの友人に恵まれた。特に海軍大臣ドミニク・ガルシア夫妻と親交を深めたことは彼女の益となったのである。

「私たちの理想は世界の平和です。世界中から戦争がなくなり、皆が平和に暮らせるよう私たちは心から願っています」

夫人は身振り手振りでこう言った。そして、立ち上がると、決定的な仕草で美喜の手をつかんで言った。

「戦争はいけません。一番悪いことです。戦争は、負けた国の人も、勝った国の人も同じように惨めにします」

美喜はスペイン語がわずかしかできず、ガルシア夫人の言葉そのものをすべて理解することができなかった。それにもかかわらず、その意味がよく分かったのだった。

澤田廉三が北京転任の通知を受けたとき、美喜は長男信一に続いて2人目の子どもを身ごもっていた。彼女は出産のためにひとまず日本に帰ることになった。しかし、彼女を待ち受けていたのは、悲しい知らせだった。

祖母の喜勢が、長男出産と同じ頃に世を去ったのである。祖母の墓の前で、彼女は涙を流した。(男まさりの、強がりんぼう)。そんな祖母の声が耳元でしたように思った。

北京は平和に見える町だったが、不穏な空気に包まれ、恐ろしい事件が続発していた。そうした中で、彼女は月2回有志の婦人を集めてキリスト教の集会を開いていた。その晩も「朝日軒」という料亭を借りて集会が始まった。ちょうど美喜が司会だったので、聖書を朗読した。

「すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう」(マタイ11:28)

すぐ隣の部屋では日本人たちが集まって宴会を開いており、手拍子で歌ったり、大声で怒鳴ったりするので、彼女の声は途切れがちであった。

ところで、この座敷に雇われている女性の中に栄という名の不幸な人がいた。その時、彼女の耳に聞き慣れない言葉が入ってきた。

(・・・すべて重荷を負うて苦労する者は・・・あなたがたを休ませてあげよう・・・)

彼女は隙を見て、隣の部屋に忍び込んだ。「あの、奥さん・・・」と、彼女は帰り支度をしていた美喜におずおずと声をかけた。

「今読んでいらっしゃった本、あれ何ですか?」「ああ、聖書ですよ。よかったらあげます」。そう言って、美喜はこの不幸な女性に聖書をあげてしまった。そしてそれが、彼女を泥沼の人生から救うことになり、彼女はその後天津に渡り、新しい人生を送ることになった。

*

<あとがき>

成人した美喜は、やがて外交官の澤田廉三と結婚し、海外生活を送ることになります。最初の任地は南米のブエノスアイレスでした。ここで彼女はたくさんの友人に恵まれますが、忘れられないのは海軍大臣ドミニク・ガルシア夫妻との友情でした。

「戦争は負けた国の人も、勝った国の人も同じように惨めにします」。この夫人の言葉は、生涯美喜の心に深く刻まれたのでした。そして後になって日本が戦争に巻き込まれたとき、この言葉をひしひしとよみがえらせたのです。

また、次の任地北京では、とても不思議な神様のわざがなされます。ある料亭で働いている栄という中国人女性に聖書を与えたことが、彼女を泥沼のような生活から救い出すことになったのです。

伝えられたところによると、水商売と縁を切って天津に帰った彼女は、ある教会で雑役をさせてもらいながら、信者として安らかな日々を送ったということです。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:澤田美喜
  • ツイート

関連記事

  • 生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(1)動物の苦しみ

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

  • 【聖書クイズ】関係が薄いのはどの組?

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • ワールドミッションレポート(7月3日):コンゴ民主共和国 戦火の中、詩篇91篇にすがるキリスト者たち

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア語の世界(27)シリア語旧約聖書の各書名と1章1節の和訳 川口一彦

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 花嫁(28)伝道の思い 星野ひかり

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(7)人は「単独者」である 三谷和司

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(233)聖書と考える「キョコロヒー」

  • Gゼロ時代の津波石碑(3)日中韓、泥沼化する「桜の起源」論争 山崎純二

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(225)エンディングを伴走して日本宣教を進めよう! 広田信也

  • ヨハネの黙示録(4)死とハデスの鍵 岡田昌弘

  • 全ての人の主イエス・キリスト 万代栄嗣

  • シリア首都で教会狙った自爆テロ、25人死亡 現地のキリスト教徒ら、さらなる暴力懸念

  • 同志社女子大学とノートルダム女学院高校、教育連携協定を締結

  • シリア語の世界(27)シリア語旧約聖書の各書名と1章1節の和訳 川口一彦

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.