Skip to main content
2022年7月4日20時22分更新
Go to homepage
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(11)島田裕巳・和田秀樹著『宗教と精神科は現代の病を救えるのか?』

2017年3月25日19時40分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:青木保憲
神学書を読む(11)島田裕巳・和田秀樹著『宗教と精神科は現代の病を救えるのか?』+
島田裕巳・和田秀樹著『宗教と精神科は現代の病を救えるのか?』(2017年3月、ベスト新書)

タイトルからして刺激的である。宗教の目的、そして精神科の目的。これらに共通するのは、苦しんでいたり悩んでいたりする人間を「救い」へと導くことである。それを本当にこの2つの分野は可能にするのか、という根源的な問いを発していると言えよう。

しかも著者は、共に当代随一の宗教学者(島田裕巳)と精神科医(和田秀樹)である。2人の歯に衣着せぬ対談が収められた新書は、厳密には「神学書」とは言い切れないが、神学的刺激を与えてくれるという点で、一読の価値はある。

第1章で、日本の現状を2人の視点から概説している。この時はあまり感じなかったのだが、読み通してからあらためて感じるのは、2人とも幼少期からかなり頭が良かったんだなということ、そして人一倍悩んで来られたのだなということ。それぞれがどうして自分の専門分野と出会えたかが、透けて見える内容になっている。

第2章はかなり刺激的。おそらく宗教学者がこのような闊達(かったつ)な物言いをしているのを初めて聞いた気がする。それは、私があまりに宗教家(宗教学者ではない)を身近に感じ過ぎていたからかもしれない。

「宗教家も医者も、相手(信徒および患者)から『偉い人』と思われた方がいい」という発言である。これは一見するとあまりに横暴で、某新興宗教の教祖のようになれ、と言っているように聞こえる。しかしそうではなくて、相手から尊敬され、その言葉の重みを相手に感じてもらえるようになって初めて治療や改善の道が開かれるという実践的な状況を語っているのである。

キリスト教は、妙な異端的な少数派は除くとして、おしなべて「いい人」が集まっている。心優しく、相手のことを慮(おもんぱか)り、そして「清貧の思想」に一応は服することを厭(いと)わない人種・・・。これが牧師であり、クリスチャンの姿(だと本人は思っているの)である。

そして、自分が相手からどう見えるか、相手をつまずかせていないか、教会に来て不便をかけていないか、細心の注意を払っている(と本人は思っている)。特にキリストの十字架で罪赦(ゆる)されるということを伝える福音主義的牧師は「自分がそれ(救い)をするのではない」と、ことさら自分を低くして、傲慢(ごうまん)や不遜な状態に陥らないよう人一倍厳しくセルフチェックするものだ。

しかし、精神科の和田氏からの指摘によると、良い精神科医と宗教の教祖は似ていなければならない、ということになる。それは共によい「ご託宣」をする機能を担っているからである。

精神科医の口から「ご託宣」というおよそ科学からかけ離れた言葉が飛び出してきたことに驚かされるのだが、言いたいことは、どれだけ相手を納得させられる言葉を持っているか、どれだけ「私は偉い人からこんな言葉を頂いた」と目の前の相手(信者や患者)に思わせられるかにかかっていますよ、という実践的な判断を彼がしているということであろう。

精神科医の診断の実情と、宗教家のカウンセリングとの対比がその後は描かれているが、そこではっきりするのは、わずか5分程度の精神科医の診断も、宗教家のカウンセリングも、共に日本的な「スピリチュアル」的欲求を満たすことができるなら、人は治癒を体験することもあるし、また息苦しさから解放されることもあるというのだ。そこに必要なのは、神道的な「あいまいさ」であるという。

わずか5分の精神科医診断で本当に相手のことが分かるのか、と島田氏が問うと、和田氏は「分からない」とはっきり返答している。しかし、そのわずかな時間で、よく分からないながらも指示とも命令ともとれないような言葉掛けをすることで、実は相手が納得することがあるという。

それを和田氏は「僕がついているから大丈夫機能」と砕けた表現をしている。島田氏は和田氏に同意し、この機能を宗教家は本能的に身に付け、そして実践しているということを指摘している。

ここで少し視点を変えて、大局的に見てみよう。そもそもキリスト教、仏教、イスラム教の世界3大宗教が存在しているのはなぜか。おのおのの立場をニュートラルに考えるのなら、どれだけその時代、その土地に住む人々のニーズに応え、そして苦しさや悩みから解放を与えることができるか、ということになるだろう。

殊にキリスト教の場合、特にこの傾向を強く示してきたのが「福音主義者」である。聖書を通して生き方が変わる。キリストを通してあなたの罪が清められる。癒やしの業が祈りを通して起こる。これらは全て、この知らせを聞く人々にとって「耳よりの情報」であり、まさに「福音(良き知らせ)」である。

しかし、同じように苦しみや悩みからの解放が、精神科医とのカウンセリングで与えられるとしたらどうだろうか。苦しんでいる本人にとっては、その違いはどうでもいいだろう。自分の苦しみから救ってくれるなら、それが宗教だろうと精神科医だろうと関係はないはずだ。

しかしその与え手は、自分のやり方、信じているものでなければ困るという切迫した思いを抱きがちになる。それに凝り固まってしまうなら、本書のような対談集は生み出されなくなってしまう。

ところが本書では、その一見相対立するような分野の2人(宗教家と精神科医)が実は対談の中で同じような思いを抱いていたことを知り、その表現や解釈の違いこそあれ、同じ日本の現代的な問題に向き合おうとしていたのだ、ということを知る構成になっている。

そういう意味で、自分の信じているもの、聖書の教え、教会の在り方、これらをいったん相対化し、客観視し、その上で自らが選んだ世界観(キリスト教、プロテスタントまたはカトリック)をあらためてつかみ直すのには、最適な1冊と言えよう。

昨今はやりの言葉で言うなら、宗教家と精神科医が対談することで、お互いが相手に抱いていた警戒感を解き、ポリティカル・コレクトレス的表現をしなくても分かり合えるのだ、ということである。そのような可能性と不思議にシンクロし合うその専門領域の重なり具合が、読む者たちに爽快感を与えることになる。

第3章以降、「教育」「創価学会」「経済」など、日本にとって大切であるか、なじみであるか、日常の風景に溶け込んでしまっている分野を具体的に抽出し、本書タイトルとなっている「現代の病を救えるのか?」という問いに答えようとしている。

本書でキリスト教の深みが分かることはない。しかし、非キリスト世界からキリスト者や牧師、教会がどう見られているかを知る1つの視点にはなり得ると思う。自分たちでは気付かなかったような良さや魅力が実はあふれていたのだということを示してくれる1冊となることは間違いない。心の中にキリスト者として何か閉塞感を抱えている方がおられたなら、本書を読むことで新しい視点、解釈の視点が与えられるかもしれない。

気になったのは、第6章の「現代の病への処方箋」という項目がどうしても復古主義的で権威主義的にしか読めないことである。つまりこの2人、実はかなりのストレスとジレンマを抱えながら生きておられるのだな、と思わされた。それなら1度、教会の門を「探求者」としてくぐってみてはいかがだろうか(笑)? それが本書のタイトルに対する最も分かりやすい答えになるはずである。

そんな自信すら牧師や宗教家に与えてくれる一面も併せ持つ、多機能な対談集である。

島田裕巳・和田秀樹著『宗教と精神科は現代の病を救えるのか?』(2017年3月、ベスト新書)

<<前回へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。グレース宣教会研修牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

関連タグ:青木保憲
  • ツイート
▼関連記事を見る  ▼クリスチャントゥデイからのお願い

関連記事

  • 神学書を読む(10)ノーマン・V・ピール著『新訳 積極的考え方の力―成功と幸福を手にする17の原則』

  • 神学書を読む(9)『沈黙』と共鳴するキリスト教の犠牲批判 青野太潮著『パウロ 十字架の使徒』

  • 神学書を読む(7)『聖書信仰』前編:聖書無誤主義を福音主義はどう超克するか?

  • 神学書を読む(6)『クー・クラックス・クラン 白人至上主義結社KKKの正体』

  • 神学書を読む(5)『アメリカ 異形の制度空間』 気鋭の哲学者が読み解くアメリカの誕生と歴史

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 繁栄の福音は「偽りの教え」 米南部バプテスト連盟が非難決議

  • 神を信じる米国人の割合、過去最低に ギャラップ調査

  • 「また来て、あなたがたをわたしのもとに迎えます」 さとうまさこの漫画コラム(38)

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(150)そろそろマスクをはずそう! 広田信也

  • ロシアのウクライナ侵攻は「時のしるし」 レムナント出版代表の久保有政氏が講演

  • 神から与えられた「才能」で一世を風靡した20世紀の偶像<アイドル> 映画「エルヴィス」

  • 米国福音同盟、「ロー対ウェイド」判決覆した米連邦最高裁の判決を歓迎

  • 十字架のネックレスを外すこと拒否して解雇されたクリスチャン労働者が勝訴

  • 世界宣教祈祷課題(7月4日):インド

  • フランクリン・グラハム氏、父ビリー氏以来48年ぶりにリオで伝道集会 6万8千人動員

  • 米連邦最高裁「ロー対ウェイド」判決覆す、中絶の是非は各州の判断へ

  • 【対談企画】参議院全国比例区立候補予定者・金子道仁牧師ってどんな人?(1)日本のチャーチスクールを救いたい

  • ロシアのウクライナ侵攻は「時のしるし」 レムナント出版代表の久保有政氏が講演

  • 神から与えられた「才能」で一世を風靡した20世紀の偶像<アイドル> 映画「エルヴィス」

  • 十字架のネックレスを外すこと拒否して解雇されたクリスチャン労働者が勝訴

  • 【対談企画】参議院全国比例区立候補予定者・金子道仁牧師ってどんな人?(3)子ども8人のビッグダディ

  • 神様のご計画の中を歩んでいるか 加治太郎

  • 癒やしの信仰を拡大させよう 万代栄嗣

  • 沖縄復帰50年 NCC、カトリック正平協が「沖縄慰霊の日」に声明、談話

  • スマホが動くのも量子力学のおかげ? 東工大名誉教授を講師にサイエンスカフェ

  • 神を信じる米国人の割合、過去最低に ギャラップ調査

  • 神から与えられた「才能」で一世を風靡した20世紀の偶像<アイドル> 映画「エルヴィス」

  • 繁栄の福音は「偽りの教え」 米南部バプテスト連盟が非難決議

  • 【対談企画】参議院全国比例区立候補予定者・金子道仁牧師ってどんな人?(1)日本のチャーチスクールを救いたい

  • 米国福音同盟、「ロー対ウェイド」判決覆した米連邦最高裁の判決を歓迎

  • 【対談企画】参議院全国比例区立候補予定者・金子道仁牧師ってどんな人?(3)子ども8人のビッグダディ

  • ロシアのウクライナ侵攻は「時のしるし」 レムナント出版代表の久保有政氏が講演

  • 希望を失わずに戦争という嵐を乗り切った家族の物語 『あらしの前』『あらしのあと』

  • フランクリン・グラハム氏、父ビリー氏以来48年ぶりにリオで伝道集会 6万8千人動員

  • 聖書と植物(7)麦と毒麦 梶田季生

編集部のお勧め

  • 無料で日用品や散髪、ネイルアートなど提供 教会でウクライナ避難民支援イベント

  • 【対談企画】参議院全国比例区立候補予定者・金子道仁牧師ってどんな人?(1)日本のチャーチスクールを救いたい

  • 被害者が加害者になる連鎖を断ち切るには? 「記憶の癒やし」のラプスレー司祭が講演

  • 必要なのは「キリストの基礎知識」 国分寺の教会が無料のオンライン聖書講座

  • 教会でウクライナ支援コンサート、現地で難民支援するハンガーゼロのスタッフが報告

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 論説委員・編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2022 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.