米福音派のキリスト教系大学であるムーディー聖書学院(イリノイ州シカゴ)は4日、信仰に基づく職員の採用方針を理由に、教育実習プログラムへの参加を拒否されたとして、シカゴ教育委員会を相手取り同州北部地区連邦地裁に提訴した。
訴状(英語)によると、シカゴ教育委員会は、ムーディー聖書学院の職員の採用方針を理由に、シカゴ学区の教育実習プログラムへの参加を禁じた。プログラムへの参加資格を得るには、非差別方針への同意が必要だが、同意すれば、学院の信条と実践に同意する者のみを採用することはできなくなる。
ムーディー聖書学院は服務規律で、婚外性行為の回避や同性愛交際の禁止、地域教会での積極的活動などを定めている。
訴状は、これらの宗教的要件の目的について、以下のように記している。
「これらの宗教的な要件と期待は、本学に関わる誰もが、教室やラジオ、メディア放送、出版物で教えられるだけでなく、本学の説教者や代表者の生き様においても、キリストと出会えるよう保証するものである」
その上で訴状は、シカゴ教育委員会の対応が、信教の自由などを保障する米国憲法修正第1条と、イリノイ州の信教の自由回復法に違反していると非難している。
シカゴ教育委員会の方針は、ムーディー聖書学院の初等教育教員養成プログラムの要件とも対立する。このプログラムは学生に対し、公立学校で少なくとも10時間、キリスト教系学校で少なくとも10時間の授業観察をすることを義務付けている。
ムーディー聖書学院の代理人を務める米キリスト教法曹団体「自由防衛同盟」(ADF)のジェレマイア・ガラス上級弁護士は声明(英語)で、次のように述べた。
「シカゴは、数百の教員の欠員を埋めるため、より多くの教員を緊急に必要としています。しかし、公立学校の管理者らは、(子どもが学校に通う)家庭のニーズよりも、個人的な事情を優先させています」
「ムーディー聖書学院は、教員と学生に高い水準の卓越性を求めており、シカゴの教育実習プログラムに参加する資格を十二分に有しています。宗教的信念を理由に学院を排除することは、シカゴ学区が宗教系非営利団体の採用慣行に、違法に介入する行為であり、米国憲法および州法が明示的に禁じているところです」
一方、シカゴ学区の広報担当者であるエバン・ムーア氏は5日、米ニュースサイト「カレッジ・フィックス」(英語)に、学区は「児童・生徒の安全と福祉を確保する姿勢を堅持しています」と述べ、「学区の方針に従い、われわれは係争中の訴訟に関する事項にはコメントしません」としている。
ムーディー聖書学院は、米大衆伝道者のドワイト・ムーディー氏らが1886年にシカゴで設立した。当初はシカゴ伝道協会として設立され、その後、伝道・聖書教育に特化した教育機関として発展した。国際宣教団体「オペレーション・モビライゼーション」(OM)の創設者であるジョージ・バウワー氏や、日本ホーリネス教会の初代監督である中田重治氏らが学んだことで知られている。現在はシカゴのほか、ミシガン州プリマスにも神学校があり、ワシントン州スポーケンには宣教のためのパイロット・整備士育成用の学校もある。また、オンラインの大学・大学院プログラムも提供している。

















