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生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(9)戦争に引き裂かれて

2016年11月29日17時00分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

1917年。ヨーロッパは戦争によって2つに分裂し、税の負担で窮乏生活に陥った友人たちは、シュヴァイツァーへの援助ができなくなったと知らせてきた。しかし、ランバレネでは相も変わらず病人、けが人が押し寄せ、増加する一方だった。

そんなある日、突然シュヴァイツァー夫妻は、次の船に乗って捕虜収容所に行くようにとの通達を受けた。2人は伝道所の宣教師たちと数人の黒人に助けられ、辛うじて大切な医薬品を荷造りして波形トタン屋根のバラックにしまった。

また、書きかけの『文化哲学』の原稿は持って行けないので、アメリカ人宣教師フォードに託した。そうして出発しようとした矢先に、すぐに手術を必要とするヘルニアの患者が運び込まれてきた。

シュヴァイツァーは、せき立てる地区の黒人兵の手を押しのけて手術を行った。黒人たちは港に押し寄せ、大声で別れを惜しみ、悲しみの声は川面にこだました。そこへ、止めようとする黒人兵の手を振り切り、1人のカトリックの宣教師が甲板に上がってきた。

「あなたがこの地を去られるに当たり、示してくださった愛に対し、心からお礼を申し上げます」

彼はそう言った。シュヴァイツァーはこの人と2度と会うことがなかった。後に彼の乗った船が空爆を受け、ビスケー湾で沈没したからである。船上で2人は、白人の士官に引き渡された。

ボルドーでこれまで病気にかかったことのないシュヴァイツァーが赤痢にかかった。彼は荷物の中にエメチンという薬を携えていたので、とりあえず応急処置をとることができたが、その後長くこの病気で苦しむことになる。

やがて彼らはピレネー山中にあるガレゾンの収容所に送られた。そこは昔大きな修道院だったが、今は空き家になっていた。その収容所には多くの捕虜がいた。その中には、銀行頭取、コック、ボーイ、建築家、音楽家、裁縫師、芸術家、技術者、靴屋、聖職者などがいた。

収容所長ヴェシは、退職植民地官吏であったが、心優しく寛大な人物であった。彼はシュヴァイツァーの仕事を理解し、収容所の中で書きものをすることを許可してくれた。そして、彼を収容所付きの医師に任命したので、シュヴァイツァーはランバレネにおけるのと同じように、心を込めて診療や治療に当たったのであった。

一番悲惨だったのは、戦争によって精神に異常を来した人たちだった。彼らは朝から夕方まで高い壁越しにピレネー山脈の美しくきらめく姿を眺めながら、列を作ってぐるぐると同じ所を歩き回っているのだった。

その後しばらくして、ジプシーの音楽隊がやって来た。楽長は、ロマン・ロランの著書『今日の音楽家』を通してシュヴァイツァーのことを知っていた。この楽隊はヴェシのはからいで楽器を持ち込むことを許されていたので、彼はシュヴァイツァーに仲間たちと倉庫の中で行う演奏会に出席してもよいという許可をくれた。

そこでシュヴァイツァー夫妻は、彼らと共に楽しい時を過ごし、セレナーデをささげられたのである。忘れられない思い出であった。

1918年7月半ば。真夜中に夫妻は捕虜交換でスイスに送られた。そこには5、6人の友人たちが待っており、2人をチューリヒに連れて行ってくれた。故郷ギュンスバッハは見る影もなく荒廃していた。人家に明かりはなく、大砲が山々から響く中、藁(わら)で覆われた鉄条網の中を歩いて行くと、至る所に壊れた家々が無惨なむき出しの壁をさらしていた。

少年の頃、あれほど愛した森や林は消え失せ、山々は醜い赤土の肌を見せていた。住民たちは、警報が鳴るたびに地下の防空壕に入った。牧師館を訪れると、彼の父親は無事であった。しかし、めっきり老い、寡黙になっていた。

8月末にシュヴァイツァーは再び赤痢を患い、コルマルで手術を受けた。その後、彼はしばらく郷里に留まり、市立病院の助手と、聖ニコライ教会の副牧師の職に就き、生計を立てることにした。年が明けた1919年には長女レーナを授かり、夫妻の胸に希望の火がともされたようだった。

その年のクリスマス。シュヴァイツァーは思いがけない手紙を受け取った。翌年にウプラサ大学で講演してほしいというナタン・ゼテルブロム大僧正からの招待状である。彼は5年もの間心に温めてきた倫理思想「生命への畏敬」について語り、多くの人の心を動かした。

その後、ゼテルブロム大僧正の勧めで、神学生エリアス・ゼデルストロムを伴ってこのスウェーデンからスイスを回り、講演と演奏を行う。翌年の1921年には『水と原始林のあいだで』が出版。1923年には「文化哲学」の第2部、第3部である『文化の頽廃(たいはい)と再建』『文化と倫理』を完成させた。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
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