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生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(8)生命への畏敬

2016年11月15日18時57分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

1914年8月5日。ヨーロッパで第1次世界大戦が始まった。その日のうちにフランス地区司令官のもとから黒人兵がやって来て、「シュヴァイツァー夫妻はフランス領に住むドイツ国籍の者なので、捕虜として自宅に留まることは許可するが、黒人とも伝道所の白人とも連絡することを禁ずる」と宣言した。

そんなある日、1人の黒人が丘を登ってやって来て、司令官からの手紙を差し出した。「この手紙の持参人は病気なので、ドクトルにぜひ診察していただきたい」と記してある。同じようにして、何人かの者が手紙を持ってやって来た。シュヴァイツァーは、彼らも全てランバレネ病院の患者と同じく奉仕の対象であることを覚え、1人も拒むことなく、ていねいに診察と治療を行った。

村の黒人たちは、戦争におびえていた。そのうち召集のためにヨーロッパに帰郷した伝道所の白人全員が戦死したといううわさが届くと、黒人たちは衝撃に打ちのめされた。彼らは自分たちに愛の福音をもたらしてくれた白人たちがなぜ互いに敵対し、生命を奪い合うのか、どうしても理解できなかった。

「みんな兄弟だから、仲良くしなさいと白人は教えた。それなのに、どうして白人同士が殺し合いをするのですか?」。彼らは尋ねた。これに対し、シュヴァイツァーは答えることができなかった。彼は、人類が何か「恐るべき理解し難いもの」に直面していることに気付いた。

間もなく、フランス植民地派遣軍は兵力を必要とし、徴兵がジャングルの中まで近づいてきた。あちこちで銃撃が行われ、倒れたまま野ざらしになった死体が各所で見られた。ある日、悲鳴と泣き声が聞こえたので、外に出てみると、川のあたりで原住民の青年が何人かつれて行かれるのが見えた。戦闘に駆り出されたのである。

蒸気船が行ってしまうと、残された老婆が桟橋の上で泣いていた。シュヴァイツァーは、彼女に寄り添って、そっと手を握ってあげた。

1915年。ヨーロッパの町々では、軍隊が前進、退却、突撃――を続けていた。海上では潜水艦が1つ、また1つと沈没していた。シュヴァイツァーは、大学時代から人類は発展し続け、進歩しつつあるという思想に疑問を持っていた。今や文化の頽廃(たいはい)の結果として、戦争が荒れ狂っているではないか。

ヨーロッパでは何千何万という人が殺されている。文化は下降をたどっているのだ。アフリカで救った300人の命は何のためにあるのだろうか? 彼は偉大な文化が目の前で崩れていくのを見た。文化の意味とその没落の原因は、一体何にあるのか――彼は模索を始めた。

ちょうどその時、外出の自由と病人の世話をする許可が与えられた。後で分かったことであるが、あの恩師のヴィドールがフランス国内で権力者に働き掛け、密かに運動をしてくれていたのだった。

1915年9月のある日。夫人と共に下流の町カプ・ロペスに滞在していたシュヴァイツァーは、病気の婦人宣教師に呼ばれ、ンゴーモー村へと200キロほど川をさかのぼることになった。彼は唯一の交通機関である蒸気船に乗り込んだ。

船がゆるゆるとオゴーウェ川を行く間、彼はその甲板に座り、ぼんやりと模索を続けていた。文化の本質とは何か? そして倫理的な進歩の意味と一般的に考える進歩の意味とが1つに統合されるような世界観とはどういうものか? 考えるほどに、言葉はむなしくメモの間をすり抜けていった。

それは3日目の日没の頃だった。船が水浴をするカバの群を避けながらその間をぬって進んでいたとき、突然「生命への畏敬」という言葉が心の中にひらめいた。全く予期しないことだった。生命への畏敬! この言葉がメモの中から語り掛けてきた。扉はついに開かれた。

彼は世界および人生の肯定と、倫理とを共に含む理念を見つけたのだった。「われわれは『生きんとする生命』に囲まれた生きんとする生命そのものである。考えることができる人間は、同時に全て他者の『生への意志』に自己のそれに対するのと同様な『生命への畏敬』を払うべきである。従来の倫理の大きな過ちは、ただ人間の人間に対する関係のみを問題にしている点である。人間が真に偉大になれるのは、ただ彼にとって植物も動物も人間も全て生命が生命として神聖であり、苦しむ生あらばこれを助けようと献身する時のみである」(『生命への畏敬』より)

1916年。ヨーロッパはその精神において死の病に侵されていた。そんなある日のこと。アルザスから1通の便りが届いた。それは、彼の母親がギュンスバッハの村道で、通過する砲兵隊の馬のひずめにかけられ、重傷を負った末に死亡したという知らせであった。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
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