正教会聖大会議が終了 「正教徒と善意ある全ての人々」へのメッセージ 8文書を発表

2016年6月28日18時03分 記者 : 行本尚史 印刷
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26日に行われた正教会聖大会議の聖体礼儀の様子(写真:東方正教会全地総主教庁)

19日からギリシャのクレタ島にあるクレタ正教アカデミーで開かれていた正教会聖大会議が26日、「正教徒と善意ある全ての人々」に向けたメッセージなど8つの公式文書に署名してそれらを採択して終了、公式サイトで発表した(下記に本紙によるそのメッセージ本文の日本語仮訳あり)。

これらの公式文書には他に、「正教会聖大会議の教書」「断食の重要性と今日におけるその遵守」「正教会と他のキリスト教世界との関係」「自治とその宣言の方法」「正教徒の離散者」「婚配機密とその阻害要因」「今日の世界における正教会の使命」と題する文書が含まれている。

これらの公式文書には、全地総主教をはじめ、全地総主教庁、アレキサンドリア総主教庁、エルサレム総主教庁、セルビア正教会、ルーマニア正教会、キプロス正教会、ギリシャ正教会、ポーランド正教会、アルバニア正教会、チェコ人の地およびスロバキア正教会などから160人を超える代表者がそれぞれ署名した。

ただ、欠席したロシア正教会はこれに署名していない。

正教徒と善意ある全ての人々に向けた
 正教会聖大会議のメッセージ

教会の営みの初期において聖使徒パワェルとその弟子ティトが福音を説いたクレタ島で、聖神降臨祭の週に私たちが集まることができるようにしてくださった、「恩寵(おんちょう)ト平安」の「父」である神へ、私たちは感謝と賛美の賛歌を向けます。私たちは、全地総主教バルソロメオス聖下によって召集された各国独立正教会の首座主教聖下の共通の意志による聖大会議の働きを調和のうちに終結させるべきだということに、とても喜んでくださった三位一体の神に感謝をささげます。

使徒たちや神に従って振る舞う私たちの聖師父たちの模範に忠実に従いつつ、私たちはもう一度、「ハリストスガ我等ニ賜ヒシ」(ガラティヤ書第5章1節)自由の福音を学びました。私たちの神学的な議論の基礎は、教会が自らのために生きるのではないという確信でした。教会は恵みと真理の福音についての証しを伝え、愛、平和、正義、和解、十字架の力、そして復活の力と永遠の命への期待という神の賜物を、全世界にもたらすのです。

1) この会議の鍵となる優先課題は正教会の一致を宣言することでした。聖体礼儀と主教たちの使徒継承に基づいて、既存の一致は強められ、新しい果実を結ぶ必要があります。1つの聖なる普遍的かつ使徒的な教会は、神と人の交わりであり、聖体礼儀のうちにおける終末の前味(まえあじ)そして体験なのです。継続的な聖神降臨祭として、教会は沈黙させることのできない預言者的な声であり、愛の神の国の存在そして証しであります。正教会は、一致した使徒的伝統と教会の機密の体験に忠実であり、1つの聖なる普遍的かつ使徒的な教会を真に継承するものであり、それは信経において告白され聖師父たちの教えによって確認されている通りです。私たちの教会はその機密的な生活における神の経綸の機密を生き抜くのであり、その中心にあるのが聖体礼儀です。

正教会は自らの一致と普遍性を「公会議において」表します。公会議性が自らの組織や意思決定の行われ方に行き渡り、自らの道を決めるのです。独立正教会がなしているのは教会の連合ではなく、1つの聖なる普遍的かつ使徒的な教会です。聖体礼儀を行う各地域の教会は、1つの聖なる普遍的かつ使徒的な教会の地域的な存在であり現れなのです。世界のさまざまな国々における正教の離散者に関して、カノン的合法性の厳格さを満たすことができるようになるまで、主教会議の制度を続けることが決められました。これらの会議は各独立正教会によって任命されるカノン的合法な主教たちからなり、これらの主教たちは自らの各教会に従い続けます。これらの主教会議が持つ正当な機能は、公会議性という正教会の原則の尊重を保障しています。

開催されていた首座主教会合の重要性が正教会聖大会議の討議の間に強調され、正教会聖大会議を7年ないし10年おきに開催される常設機関とする提案がなされました。

2) 聖体礼儀に参祷し全世界のために祈り、私たちは、「イエルサリム、全イウデヤ、サマリヤ、及ビ地ノ極(ハテ)ニ至ルマデ、我ガ為ニ證者(ショウシャ)ト為ラン」(聖使徒行實第1章第8節)と主が昇天前にはっきりと命じられたことに従って、「聖体礼儀の後の奉神礼」を続けて信仰の証しを近くにいる人たちや遠くにいる人たちに対してしなければなりません。現代の世俗化した社会において神の民に再び福音を伝えること、そしてハリストスをまだ知らない人たちに福音を伝えることは、教会のたゆまぬ務めであり続けるのです。

3) 真理と自らの使徒的な信仰を証しするという自らの務めに応じて、私たちの教会は、主に正教でないキリスト教徒との対話を大いに重要視しています。このようにして残りのキリスト教世界は、正教の伝統が持つ真正さや、聖師父(教父)の教えが持つ価値、そして正教徒の奉神礼の生活と信仰をより正確に知るようになります。正教会によって行われる対話は、決して信仰に関する事柄における妥協を伴うものではありません。

4) さまざまな宗教の中に見られる原理主義の爆発は、病的な影響を受けた宗教的熱意の表れです。冷静な宗教間対話は、相互の信頼、平和そして和解を促進する重要な助けとなります。宗教体験の油は傷を癒やすために使われなければならないのであって、軍事的対立の炎を再燃させるためではありません。正教会は軍事的な暴力の拡大や迫害、少数派の宗教者たちの成員の追放や殺害、強制的な改宗、難民の売買、拉致、拷問、そして忌まわしい死刑執行を明白に非難します。正教会は教会や宗教的象徴および文化遺跡の破壊を非難します。とりわけ、正教会は中東のキリスト教徒や迫害されている全ての少数者たちの状況に深い憂慮を表明します。正教会はこの地域にある各国政府に対し、土着の正教徒や他のキリスト教徒、そして平等権を持つ市民として自国に留まるための侵すことのできない権利を持つ全ての住民を保護するよう呼び掛けます。私たちの会議は全ての関係者に対し、中東や武力による敵対関係が続いている所ならどこでも、軍事紛争を終わらせるために直ちに体系的な取り組みをし、すみかを追われた全ての人たちが自宅に戻れるようにするよう訴えます。

私たちは、平和と正義が難民の出身国に行き渡るようにと、自らの訴えを権力のある地位にいる人たちに向けて述べます。私たちは、迫害されている人たちが非難している国々の文民や市民、そして正教のハリスティアンに対し、できる限り、あるいは自らの能力の限界を超えてでさえ、助け続けるよう強く求めます。

5) 現代の世俗化は、人(人類)がハリストスから、そして教会の霊的影響からの自治を求め、それを恣意的に保守主義と同一視します。しかしながら、西洋文明は、キリスト教の通時的な寄与が残した消えることのないしるしを持っています。さらに、教会は、神にして人であるハリストスが持つ、そして神の体が持つ救いの意義を、自由のうちにある生活の場および様式として強調します。

6) 婚配に対する現代の取り組み方とは対照的に、正教会は男性と女性の切っても切れない愛の関係を「ハリストスと教会の・・・大いなる機密」と見なします。同じように正教会は、これから生じ、子育てを保証する唯一のものをなしている家族を「小さな教会」と呼びます。

教会は常に自制が持つ価値を強調してきました。しかしながら、キリスト教の禁欲主義は、人を命からそして仲間から切り離す、どの二元論的な禁欲主義とも大きく異なります。逆に、教会はこれを自らの機密的な生活と結び付けています。禁欲的なエートスは、そのあらゆる表明において、キリスト教徒の生活が持つ特徴なのです。

正教会聖大会議は、それが決定した個別の問題とは別に、次の重要な現代の諸問題について特に言及するものであります。すなわち、

7) キリスト教の信仰と自然科学の間における関係の問題に関して、正教会は科学的調査を保護の下に置くことを避け、一つ一つの科学的な疑問についての立場を採用しないものとします。正教会は、神の被造物が持つ未知の次元を明らかにするという賜物を科学者たちにお与えになる神に感謝します。自然科学の、そして技術の現代における発達は、私たちの生活に急激な変化をもたらしています。それは、日常生活を便利にし、重い病気を治療し、通信や宇宙の探査をたやすくするなど、重大な利益をもたらしています。しかし、これにもかかわらず、自由を操作し、貴重な伝統が徐々に失われ、自然環境が破壊され、道義的な価値に関する疑問が生じるなど、負の結果が多くあります。科学的知識は、それがどんなに素早く発達しても、人の意志を動機づけることはなく、またそれが重大な道義的および実存的な諸問題や、生きること、そしてこの世界が持つ意味の探求に、答えをもたらすこともありません。これらの問題は霊的なアプローチを要求するものであり、それを正教会は、キリスト教倫理と聖師父の教えに基づいた生命倫理を通じて提供しようとします。正教会は、科学的調査の自由に対する自らの尊重とともに、ある科学的な聖歌に隠された危険を同時に指摘し、人の尊厳と神が定めた人の運命を強調します。

8) 今日における生態系の危機が霊的および道義的な原因によるものであることは明らかです。その根源は貪欲や強欲、そして利己心と結び付いており、それが思慮のない天然資源の利用や、有害な汚染物質で大気を満たし、そして気候変動へとつながっているのです。この問題に対するキリスト教徒の対応は、これらの悪用に対する悔い改めや、過剰消費に対する解毒剤としての禁欲的な心構えと同時に、人は被造物の世話役であって所有者ではないという意識の養成を必要とします。教会は、創造主が私たちにお与えくださった天然資源に対する権利が未来の世代にもあることを強調するのを決してやめません。この理由によって、正教会はさまざまな国際的な生態系についての率先した取り組みで積極的な役割を担うとともに、9月1日を自然環境の保護のために祈る日として定めました。

9) 平準化や没個性的な標準化が非常に多くの形で促進されているのに対し、正教は個々の諸民族が持つ固有の特色を尊重することを提案します。それはまた経済を人間の基本的ニーズから自律したものにしてはそれを自己目的化することにも反対です。人類の進歩は霊的な価値を犠牲にして生活水準の向上やあるいは経済発展だけに結び付いているのではないのです。

10) 正教会は自らが政治に関わることはありません。その声ははっきりとしたままですが、しかし人間のための利益となる干渉としては、預言者的でもあります。今日における人権は、社会的および政治的な危機や動乱に対する対応として政治の中心にあり、国家の恣意的な権力から市民を守ることを求めます。私たちの教会はまた、社会の改善のため、市民の務めや責任と、政治家や市民の両者の側について絶えず自己批判をする必要性もこれに加えます。そしてとりわけ、正教会は、人を尊重する正教の理想が既定の人権という水平線を超えるということ、そしてハリストスが明らかにされたように、また彼に従う全ての信者が経験してきたように、「最大ナル者ハ愛ナリ」ということを強調します。正教会はまた、基本的人権の1つが信教の自由—すなわち、良心、信条、そして宗教の自由の保護であり、それには、国家によるいかなる形での直接的ないし間接的な干渉なしに、宗教教育や宗教的な務めの十分な機能やそれを果たすことに対する宗教共同体の権利に加えて、独りでも共同体にあっても、私的であっても公的であっても、礼拝と実践の自由に対する権利、自分の宗教を表す権利が含まれることも主張します。

11) 正教会は、自由や正義、創造性そして愛にも満たされた十分な人生を求める若者たちに向かって言葉を伝えます。正教会は、真理であり命である神の教会に意識的に加わるよう彼らを招きます。来て、彼らの活力や、彼らの心配事、彼らの関心、そして彼らの期待を、教会の体に差し出すのです。若者たちは、地域と世界の両方のレベルにおいて、教会の未来であるというだけでなく、躍動的で創造的な現在でもあるのです。

12)正教会聖大会議は、現代の多彩かつ多種多様な世界に向けて、私たちの地平線を切り開いたのです。それは、常に永遠の視点を持って、場所と時間における自らの責任を強調したのです。正教会は、自らの機密的で救済論的な性格をそのままに保ちつつも、この世界の諸国民の痛みや苦悩、正義と平和を求める叫び声に対して敏感であります。正教会は「其の救いを日々に福音」し、「其の光榮を諸民の中に伝え、其の奇跡を萬族の中に伝え」(第95聖詠)るのです。

「諸ノ恩寵ノ神、ハリストスイイススヲ以テ我等ヲ其永遠ノ光栄ニ召シシ主ハ、願ハクハ爾等ガ暫時ノ苦ノ後ニ、自ラ爾等ヲ全クシ、堅クシ、強クシ、動カザラシメン。願ハクハ光榮ト権能トハ彼ニ無窮ノ世ニ帰セン、『アミン』」(ペトル前公書第5章第10、11節)と祈りましょう。

※以下、署名欄は省略。

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