キリスト教学校教育同盟、座談会「18歳選挙権とキリスト教学校」を開催

2016年6月19日23時58分 印刷

昨年、改正公職選挙法が成立し、今年7月の参議院選挙から、選挙年齢が満20歳以上から満18歳以上に引き下げられたことを受け、キリスト教学校教育同盟では、「18歳選挙権とキリスト教学校」と題して座談会を行った。出席したのは、東北学院中学校・高校校長の大橋邦一、活水中学校・高校校長の湯口隆司、神戸女学院中学校・高校教諭の阿部穣(ゆたか)の3氏で、司会は浦和ルーテル学院高校教諭の船津創(そう)氏が務めた。機関紙「キリスト教学校教育」6月号で報告した。

座談会では、初めに18歳選挙権導入について3人の出席者がそれぞれ意見を述べた後、「シティズンシップ(市民性)教育の必要性」「総務省・文部省配布の教材―生徒の関心をいかに高めるか?」「キリスト教学校が求められていること―互いに仕え合う主権者を育てる」という三つの大枠で語り合った。

初めに3人は、日本の国民が「自分は権利を持っている」という主権者としての意識が希薄であることを指摘。その上で、特に公立学校の教師は主権者教育を行うことが難しことや、選挙管理委員会は選挙の方法は説明しても、主権者の義務や権利という話はしないことを明かし、「主権は国民にあるということをもう少し明確に展開しなければいけない」などと述べた。

続けて、18歳選挙権導入に当たって授業運営の在り方・進め方について意見を交わした。この中で湯口氏は、「小学校や中学校で憲法をきちんと学んだ上で主権者の権利や義務、その後に有権者の義務(投票行動)という順序が大切」と、有権者教育よりも、まずはシティズンシップ教育に力を入れるべきだと話した。大橋氏も、もっと広く社会のことに関心を持って自分から取り組むべきで、「選挙ありきというのは順番が逆ではないかという印象」と話した。

阿部氏は、自身が担当する国語の授業の中で、「共感する力」を伝えることを意識していると話し、政治にも「共感する力」が必要であることを強調。また、キリスト教学校の中で教えられる「弱い者」の側に立つことが、現実の競争社会ではそれが「負け」になると感じる場面で、どちら側の立場に立つか迷ったときに、「誰が苦しむことになるのだろう」という視点を持ってほしいと語った。

湯口氏も、その点がキリスト教学校にとって、主権者教育とのすり合わせとなる一番の主眼だと言う。「主権者はむしろ公僕だという教え方をしないといけない」と述べ、「主権者教育というものは下からの視点でもあると思います。主権者は『主人であり僕でもある』」と、ジャン=ジャック・ルソー(1712~78)の言葉を引用した。

次に、総務省・文部省配布が各学校に配布している教材『私たちが拓く日本の未来―有権者として求められる力を身に付けるために』について感じたことを話し合った。大橋氏は、戦後70年間行ってこなかったことを誰が教えるのかと問い掛け、シティズンシップ教育についても、欧米諸国に比べ日本は相当規制が強いことを懸念した。その上で、「教師や生徒たちが、この学校のここがおかしい、このようにしたい、と動いていくのがシティズンシップ教育です。それが日常的にならないといけない」と、自身の学校で成果を上げた教師主導による学校改革を例に挙げた。

湯口氏は、この教材にある有権者として身に付けるべき資質として書いてある「課題を多面的・多角的に考え、自分なりの考えを作っていく力」こそ、日本が一番遅れている部分だと言う。ただ、これは方法であって目的ではないとし、「この教材を読んで目的と方法が逆転すると怖い」と語った。

教材に関しては、リテラシー(活用能力)や議論する力の大切さも語られた。その一方で阿部氏は、最近の生徒は新聞も読まず、授業においても時事問題などを取り上げる余裕が時間的にない中、インターネットの情報だけで課題を多面的に見たり、多角的に考えることが本当にできるのかと疑問視した。大橋氏も、インターネットだけに頼るのではなく、地方政治などに不信感を持ったり、いろいろものを考えたりするのが大事だと述べた。また、湯口氏は、クリティカル(批判的)な見方というのは、印刷文字媒体だけではなく、写真や動画など身近なメディア理解と教育を小中学校から行うことが大事だと話した。

大橋氏は、キリスト教学校が押さえておくべきこととして、「一人ひとりの生徒が成長する度合いは皆違う」ことを挙げ、「一人ひとりの子どもの成長に合わせて基本的な知識を身に付けることと、汎用性を使っていく力の両方を行わないといけない」「その両方をどのように教員を含めて生徒に示していくかが大事」と語った。

それに対して阿部氏は、行事の大切さを挙げた。自身の学校で、行事の中で行いたい競技が、学校側から危険だと見直し提案があったとき、生徒たちは続けたい競技だからと、学校側と何度も話し合いをし、極めて政治的な駆け引きが行われたことを話した。阿部氏は、「国政の選挙にはいきなり結びつかないかもしれませんが、スキルとして、人間関係を作り出したり、何かを実現するプロジェクトを進めていくのに必要な能力というものは極めて普遍的な力だなと思います」と振り返った。

湯口氏は、日本で政治への無関心がこれだけ広がったのは、源泉徴収のためだと言い、米国のように全国民が確定申告する制度は国政への参加、言葉を変えればオーナーシップ(所有権)育成に役立つと考えていると語った。また、自分が収める税金により、自治体や国が動いているという実相を理解することが主権者教育では重要だと話した。

次に、政治的に中立な教育が求めれれる中、キリスト教学校としての教育の在り方について意見を交わした。湯口氏は、政治的中立と価値中立性は違うとし、「私たちは何の土台に立つか。それは表現の自由、信仰の自由だと思いますが、それが明確にできるのであれば私たちは価値中立性といえどもこの価値に立って考えますよとはっきり言って良いと思います」と述べた。さらに、教育同盟が立ち上げた道徳の教育科プロジェクト委員会にも触れ、「政治的中立を担保しながらもキリスト教的な考え方で議論できるようにしたい」と語った。

大橋氏は、「法律はあっても時代と様々な制約の中で限界がある」と言う。一方、キリスト教や聖書を学ぶことは、長い歴史の中で変わりようのない真理として皆が信じて大切にしているものを学ぶことだと述べ、「それを自分たちの時代で確かめている」ことだと話した。そして、「今いっしょに歩み生きている人たち(中略)の存在を忘れずに向き合っていることが、私たちがキリスト教学校として歩んいることの大きな証」だと話した。

阿部氏は、生徒たちが今関わっている範囲の中で、聖書の教えに従っていくことを言い続けること、損だと思われる生き方が実はあるべき生き方だと言い続けることで、それぞれが今いる場所で良い関わりを生み出していくと話し、「それがキリスト教学校のミッション(使命)だと思うし、政治という大きな事にも繋(つな)がっていくのかなと思います」とキリスト教学校の役割を語った。

3人は最後に、「主権者」について語った。湯口氏は、主権者という概念とキリスト教信仰の概念は対立的ではないとし、阿部氏は、主権者教育は、キリスト教教育がずっと担ってきた「この世の光となって生きる人」を育てていく中に包摂されると説明。そして、選挙権を持つようになった生徒へのメッセージとして、キリスト教学校は「新しいこととしてではなく、今までやってきたことをそのまま続けていけば良い」と伝えていけばいいと語った。

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