安保法制法をめぐって―戦争する国づくりに抗議する―(2) 宮本栄三

2015年10月14日18時30分 印刷

3. 安倍内閣の登場と安保政策の転換

この安保政策の大転換を狙っているのが、今の自公連立政権であり、それを支えている財界など改憲勢力です。また、国際情勢の変化もあります。中国の軍事的な強大化や北朝鮮問題、中東での「イスラム国」(IS)の問題などです。米国はこれまで、世界の警察官のような顔をして国際問題を取り仕切ってきました。戦争を続けてきたのです。湾岸戦争、2001年の9・11米同時多発テロによるアフガニスタン戦争、そしてイラク戦争などです。それが全て、米国にとってうまくいかなかった。米国は巨額の軍事費を使い、多くの犠牲者を出しました。国内では反戦の声が高まる。こうして今、米国の力は相対的に低下している。こういう中で米国だけでは何ともならん。同盟国の援助が必要だ。特に日本に助けてほしい。それで日本に集団的自衛権を使えるようにしてほしい。これが米国の本音です。21世紀になってこういう要請が強くなってきました。

その一つの例を少しお話しします。元米国務省副長官で知日派のリチャード・アーミテージという政治家がいます。この人が、2012年に出したアーミテージ報告書というものがあります。そこでこんなことを言っているのです。21世紀になって米国の安全保障政策は大きく変わることになった。それは、これまでの日米安保条約の枠組みをはるかに超えたものになっている。日本にはそれに対応する安保政策を期待する。そう言って、具体的な要望を盛り込んでいるのです。その要望の内容と、今度の安保法の内容がぴたりと一致している。こんなことが今回の国会で野党から指摘されたことがあります。岸田文雄外務大臣は、偶然の一致だとしましたが、それを認めたのです。そんな背景があります。

ところが先ほど言いましたように、日本が集団的自衛権を使えば、憲法違反になる。そういう法律はつくれない。そこで安倍内閣は考えたのです。何とか集団的自衛権を使えるようにしたい。その方法を検討するため安倍首相は昨年、首相の私的諮問機関「安保法制懇」を設け、検討させたのです。その報告書の要点は4つあります。①国連の集団安全保障への参加に憲法上の制約はない、②「必要最小限度の『武力の行使』」の中に集団的自衛権の行使も含まれる、③国連平和維持活動(PKO)などへの協力と武器使用は「武力の行使」に当たらない、④在外日本人の保護や救出に憲法の制約はない、という4点です。

この報告を受けて、安倍内閣は、集団的自衛権の行使に向けて動き出しました。それが、昨年7月1日の閣議決定です。3つの条件がそろえば、集団的自衛権を使えると決めたのです。3つの条件とは何でしょうか。まず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、①わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由が根底から覆される明白な危険があるとき、②これを排除するために他に適当な手段がないとき、③必要最小限度の実力行使であること。この3つの条件がそろえば、集団的自衛権は、自衛の措置として憲法上許されるというのです。

それでは具体的にどういう場合なのか。安倍首相は国会でイラストを掲げながら、いろいろ例を挙げて説明しました。例えば、朝鮮半島で事が起こったとき、韓国にいる日本人を避難させるため米海軍に依頼する。その時、日本人を乗せた米軍艦を、日本の自衛艦が守る必要があるというのです。それから中東のホルムズ海峡にイランが機雷をまいたら日本の石油輸入が止まり、国民生活が混乱する。そういう時、自衛隊の掃海艇を出して機雷を取り除く必要があると言いました。

それに備えて集団的自衛権を認めておくのだというのです。こういう理由をつけてしたのが、昨年7月1日の閣議決定です。皆さんよく知っておられるように、7月1日から後、世論が沸騰しました。安倍政権反対、憲法壊すな、戦争反対のデモが起こりました。また自民党の長老政治家や元内閣法制局長官も安倍政権のやり方はおかしい、今までの政府の政策と違うことをやり始めた、と批判しました。

4. 立憲主義の否定と法的安定性の無視

時の内閣の判断で憲法解釈を変更すると、国の政治はどうなるでしょう。混乱します。法的安定性が損なわれることになります。それを安倍内閣はやったのです。集団的自衛権は憲法上使える。これを「行使容認」といいますが、これはまるで黒を白というのと同じです。換骨奪胎(かんこつだったい)とはこのことでしょう。とんでもない立憲主義の否定です。憲法は国の基本法です。基本的人権のとりでです。権力者には、憲法を尊重し擁護する義務があります(憲法99条)。これを立憲主義といいます。安倍内閣はこの立憲主義を破ったのです。憲法の破壊です。行政機関が憲法を破壊する。これはもうクーデターです。

第2次世界大戦前のナチス・ドイツは、1933年にワイマール憲法を全権委任法という法律をつくって破ってしまいました。それと似た手口を安倍内閣はやったのです。憲法上できないことをする必要が生まれたとき、まず憲法改正の手続きを踏まねばなりません。安倍内閣は、憲法改正は難しいので、閣議決定という最も簡単な手前勝手なやり方を使ったのです。これはもう憲法の破壊です。(続く

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