広大な国土を持つオーストラリアは、南半球に位置する先進国であり、豊かな自然と多文化社会で知られている。しかし近年、その自然環境は深刻な危機にさらされている。オーストラリアは世界で最も生態系が繊細な大陸ともいわれ、干ばつや森林火災、土地・水資源の過剰利用などにより、環境は急速に劣化している。特に2019年から2020年にかけて発生した大規模な森林火災は、人命や動植物、生態系に甚大な被害を与え、「ブラックサマー」と呼ばれるほどの悲劇となった。
これらの災害に対して政府の対応は十分だったのか、多くの国民が疑問を抱いている。土地とエネルギーの管理、そして火災の予防や対策において、より真摯(しんし)な取り組みが求められている。
しかし、問題は政策だけではない。産業の強欲さや消費社会の在り方にも目を向けねばならない時が来ている。大地の回復のためには、神の創造物を搾取してきた生き方を悔い改め、地の管理者として、人間が持つ本来的な使命の回復も必要だ。
一方で、信仰の面においてもオーストラリアは大きな曲がり角に立たされている。かつてはキリスト教が社会の中心的な価値観を形成していたが、近年は急速に世俗化が進み、多宗教・無宗教の傾向が強まっている。
2021年の国勢調査では、キリスト教を信仰すると答えた人はわずか44%で、1996年の71%から大きく減少した。特に2016年からの5年間で100万人以上がキリスト教を離れ、次回の2026年調査では「無宗教」が最大の回答層となる見通しだ。
この背景には、教会に対する不信感の拡大がある。カトリック教会の国際的なスキャンダルに加えて、国際的に有名なヒルソング教会をはじめとした複数の教会で、リーダーによるスキャンダルや腐敗が相次ぎ、一般の人々の間に失望と嫌悪が広がっている。「教会は権力を濫用し、時代に逆行している」と見る声も多く、信仰の復興には信頼の回復が不可欠である。
今こそ、オーストラリアの教会が悔い改め、誠実なリーダーシップと隣人愛をもって社会に仕える時である。被造物の管理者としての使命に立ち返り、環境と社会の癒やしのために祈り、行動することが求められているのだ。神の民が主の召しに応え、愛と真理に満ちたリバイバルがこの国を覆す日を求めて、祈っていただきたい。
■ オーストラリアの宗教人口
プロテスタント 12・6%
カトリック 25・0%
イスラム 2・5%
無神論者 23・2%
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