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保育施設における虐待はなぜ起こるのか

保育施設における虐待はなぜ起こるのか(7)誤ったガバナンスが現場を思考停止させる

2023年1月30日15時18分 執筆者 : 千葉敦志
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子ども/children/kids/幼稚園/kindergarten/保育園/nursery+
※ 写真はイメージです。(写真:aoi33 / PhotoAC)

保育のガバナンスの問題

前回、「子育てに関する理念の欠如」を指摘しましたが、このことは重要です。保育施設では「保育理念」「保育方針」「保育目標」を設定して保育をしています。しかし、これが曖昧模糊(あいまいもこ)としている感が否めない施設が多いのも実情です。理念を「目指すべき方向性」と捉えているとすれば、それは大きな間違いです。

以前、私は牧会していた教会で、訪問看護ステーションを設置する段になって、「看護理念」「看護方針」「看護目標」を設定する必要に迫られました。「そんなの簡単、保育所のを置き換えればいいよね。同じ法人がやっているんだし」と安易に考えて、まずは看護理念を決めるに当たり、保育所の保育理念を引っ張り出しました。そこには、「神と人とに愛される子」「お友達を大切にする子」「自分を大切にする子」の3項目が書かれていました。「子」を「患者」に置き換えてみたら、がくぜんとしました。「神と人とに愛される患者」「お友達を大切にする患者」「自分を大切にする患者」・・・もはや滅茶苦茶です。

それまで掲げていた保育理念が、目指すべき方向性や園児の理想像を示すものになっていたことに気付きました。そこで、保育理念を書き換えざるを得ないことにも気付きました。そして、「大きな家族として」「家庭とともに」「神の前で喜び合う」に書き換えました。そうすると、保育方針や保育目標もガラリと変わります。

実は、ガバナンスとは理念に大きく影響されるものなのです。理念に「神と人とに愛される子」「お友達を大切にする子」「自分を大切にする子」という園児の理想像を明記していれば、そこに持っていくガバナンスになります。保育者が一意専心そこに傾倒していけば、園児たちは自然に序列化されてしまいます。しかし、「大きな家族として」「家庭とともに」「神の前で喜び合う」という理念であれば、ガバナンスは役割を分担した水平思考のものになっていきます。

ガバナンスというものに対する理解を聞いてみると、大半の人たちは「上意下達」のシステムと受け止めている向きを感じます。しかし、本来的には、正しいことを積み重ねていく仕組みのことをガバナンスといいます。実に保育施設における虐待は、保育施設のガバナンスに関する未熟な理解によるところが大きいと私は見ています。

この連載ではこれまで、保育施設における虐待がなぜ起こるのかを、事例や子どもたちの発達過程を交えながら考えてきました。そして、地域の子育てに関する理念が具体的に示されていないこと、保育施設側の誤ったガバナンス理解が保育現場を思考停止に追い込んでいる姿を感じ取りました。

そこで、子どもは神の創造物であり、またその神は不断の創造者であると捉え、「神的本質を有する子どもは不断に創造すべきもの」と考えたフリードリッヒ・フレーベルの思想を、もう一度読み解いてみましょう。

神は命を創造される方である。神は父母を選び、そこに命を生み出す。そこで、一人の赤ちゃんが生まれる。時間の経過とともに、その子は多くの発達を経て、多くの人々の中で成長していく--。フレーベルは、子どもの成長をそのように捉えました。だから、フレーベルは子どもの成長にこそ意味があり、それを見守りながら時を捉えて、その成長を促していくという完全な伴走型の保育こそが理想であると考えたのだと私は思います。「教育とは人材育成である」「人的資源の育成」など、人を「資源」として捉え「開発」するのとは、全く異なることです。

子どもは、いつかは「大人」になります。その「大人」像を見極めなければなりません。それは時代とともに変遷してきました。昔は、「ああいう大人になりたい」と子どもが大人に憧れたのに対し、今では「ああいう大人に育てたい」という大人の願いが強くなり過ぎているように思います。

子どもの余地を残す

十数年前、着任直後に保育現場を案内されているときに、保育者が烈火のごとく園児を叱りつけている場面に出くわしました。「そこまで叱らなくても」と介入しようとすると、サブの保育者に「今介入したら、せっかく叱っている効果がなくなります」と止められました。新人園長だったので「そうなんだ」と引っ込みましたが、「果たして、あの行為は適切だったのか」と今でも時折思い返します。

子どもたちがけんかをして、保育者が「Aちゃん、Bちゃんに謝りなさい。そして、Bちゃんも赦(ゆる)してあげて」と仲裁する場面も見ました。この対応についても、今でも時折思い返します。けんかの原因はさておき、赦せないと思っているときに無理やり「赦してあげて」と仲直りさせられるのは、自分の子ども時代を振り返っても、苦痛だった記憶がありますし、大人だって無理でしょう。

親として2人の子どもを育て、また、保育施設で多くの子どもたちを見てきて分かったことがあります。注意深く見れば、保育の中にも神の御手が働いているというべき瞬間があるのです。例えば、あれほど激しくけんかをしていた2人が、その日の午後にはすっかり仲良しになっていたりするのです。担任の後ろ姿に憧れて、担任の口癖がうつっちゃった子、親の姿をママゴトで再現する子もいました。子どもたちが、障がいのある子をごく当たり前にサポートする姿も見ました。保育の世界で、子どもたちの世界で、神の御業が豊かにそして確実になされていることに気付いたのです。

保育とは祈り

「保育とは祈りだよ」と先輩保育者から聞かされたことがあります。実に保育とは、「信じること」と「待つこと」、そして「祈り」なのです。日本のフレーベルと呼ばれた倉橋惣三はこんな言葉を残しています。

自ら育つものを育たせようとする心、それが育ての心である。世にこんな楽しい心があろうか。それは明るい世界である。温かい世界である。育つものと育てるものとが、互いの結びつきに於(おい)て相楽しんでいる心である。

育ての心。そこには何の強要もない。無理もない。育つもののおおきな力を信頼し、敬重して、その発達の途に遵(したが)うて発達を遂げしめようとする。役目でもなく、義務でもなく、誰の心にも動く真情である。

(中略)

それにしても、育ての心は相手を育てるばかりではない。それによって自分も育てられてゆくのである。我が子を育てて自ら育つ親、子等の心を育てて自らの心も育つ教育者。育ての心は子どものためばかりではない。親と教育者とを育てる心である。(倉橋惣三著『育ての心』より)

キリスト教主義保育に望まれるガバナンス

倉橋の考えに基づけば、保育とは、保育を通して大人も共に育てられるものなのです。神は子どもたちの存在を通して御業を示すことで、もう育つ余地がないと思ってしまう大人をも育ててくれるのだと私は信じています。ですから、保育施設は、保護者の成長や地域の成長、国家の成長も、子どもたちを育てることを通して学んでいかなければならないのです。

ガバナンスとは「正しいことを積み重ねていく仕組み」だと書きました。自分より劣るもの、弱いもの、はかないもの、小さいものから学ぶ姿勢が、そのガバナンスを担保します。ですから、保育施設で望まれるガバナンスは、役割を分担した水平思考のものでなければならないのです。

神は、あなたがたがいつもすべての点ですべてのものに十分で、あらゆる善い業に満ちあふれるように、あらゆる恵みをあなたがたに満ちあふれさせることがおできになります。「彼は惜しみなく分け与え、貧しい人に施した。彼の慈しみは永遠に続く」と書いてあるとおりです。(2コリント9:8~9)

水平思考のガバナンスは、このパウロの言葉のように、創造主なる神を「育てる者」が信じることを前提としています。

今まで考えてきたことを一言でまとめてしまえば、「謙遜であれ」ということでしょう。大人は子どもの成長という荘厳な神の奇跡の前に謙遜な思いを持って立ち続けなければならないのです。(続く)

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◇

千葉敦志

千葉敦志

(ちば・あつし)

1970年、宮城県生まれ。日本基督教団正教師(無任所)。教会付帯の認可保育所の施設長として、保育所の認定こども園化を実施。施設長として通算10年間、病後児保育事業などを立ち上げたほか、発達障害児や身体障害児の受け入れや保育の向上に努め、過疎地域の医療的ケア児童の受け入れや地域の終末期医療を下支えするために、教会での訪問看護ステーション設置などを手がけた。その後、これまでの経験に基づいて保育所等訪問支援事業を行う保育支援センターを立ち上げた。現在、就労支援B型事業所「WakeArena」を立ち上げ、地域の福祉増進を目指している。

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