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ケーテ・コルヴィッツの生涯

労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(4)この最後の者にも―ユリウス・ルップの説教

2022年4月6日18時23分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(1)ふみにじられたもの+
ケーテ・コルヴィッツ(1867〜1945、写真:Philipp Kester)

4月最初の日曜日がきた。この日はイースター(復活祭)だったので、ユリウス・ルップの「自由宗教派」の教会には各地から大勢の人が詰め掛けた。ユリウス・ルップは礼拝が始まると講壇に上がり、聖書を開いて読み上げた。それは「マタイによる福音書」の中のぶどう園の例え話だった。

「・・・さて、夕方になって、ぶどう園の主人は管理人に言った、『労働者たちを呼びなさい。そして、最後にきた人々からはじめて順々に最初にきた人々にわたるように、賃金を払ってやりなさい』・・・最初の人々はもらったとき、家の主人にむかって不平をもらして言った。『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。自分の賃金をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ』」(マタイ20:1〜16)

「いつの時代にも人間を悩ませる問題に『労働問題』があります。進歩の時代といわれる今、このドイツでもそれは深刻な社会問題となりつつあります。産業革命により私たちは豊かな恩恵を被りましたが、その半面、それはおびただしい生活困窮者や失業者、そして労働者の搾取を生み出してしまいました。企業主はその広大な土地の中に工場を建て、そこで大量生産というかつてない方法で優れた製品を市場に出すことに成功しました。これは人類史上類を見ない文明の進歩といえましょう。しかしここに、一つの問題が生じました。それは、製品を生み出す母体となる労働者をめぐる問題です。企業の手足となって働く宝であるべき労働者を大切にすることを忘れ、規定をはるかに下回る賃金で彼らを雇い、保険にも入れずに劣悪な環境で長時間労働を強いてきました。私はあえて申しますが、『労働者の搾取』というものは歴史上類を見ない人道に反する罪悪ではないかと考えます。いずれの国においても、科学技術の進歩と工業の発展は人間の生活を豊かにする半面、果てしない地獄を生んでゆくでしょう」

「しかし皆さん、私はこの問題を解決するたった一つの鍵が聖書の中にあることを発見しました。ここにもまさに私たちが直面しているのと同じ労働問題が述べられています。早朝から働いていた労働者が、夕方1時間しか働かない仲間と同じ賃金しかもらえないことに文句を言ったのです。ある意味では、彼の言い分は当然のように思われます。1時間しか働かない者と12時間以上働いた者が同じ賃金をもらうのは明らかに変です。しかし――ここにこそ労働問題解決の鍵があるのです。ここで問題になっているのは、労働者に支払う賃金が1デナリでは安すぎるということではありません。その当時労働者に支払われる賃金として1デナリは当然の報酬でした。ぶどう園の主人は間違っておりません。では、何が問題だったのでしょう。それは、8時間以上働いた人が、1時間しか働かない人がもらう賃金が不当だとけちをつけた――まさにそのことだったのです。つまり彼は、仲間が自分と同じ賃金をもらうことが許せなかったのです。ここに今もって私たちを悩ませている労働問題の実体が隠されています」

「今の労働問題を深刻化させたのは、資本家たちの度を越した利益追求への野望です。彼らは労働者を搾取し、競争で利益を上げようとしています。彼らは人間に対する配慮というものをまったく忘れてしまったのです。彼らは労働者とその家族が3度の食事を取れるだけの賃金を与えているでしょうか。疲れた体を休ませるために休暇を与えているでしょうか。けがや病気をしても医者にかかれるよう保険に入れてやっているでしょうか。こうした深刻な労働問題を解決するたった一つの鍵は、このぶどう園の主人が言った言葉です。『わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ』。彼は賃金の額については見ておらず、労働者一人一人に対して限りない配慮をしております。労働問題は権力や賃金では解決できません。愛と信頼をもってしか解決できないのであります。これは神様の領域なのです。私たちは実に一つの家族であり、兄弟であります。だから、強い兄は弱い弟を助け、互いに配慮しつつこの荒野のような人生を渡っていこうではありませんか」

ユリウス・ルップは説教を終えて講壇を降りた。そのとき、後ろの学生が叫んだ。「これは、歴史に残る名説教だ!」

*

<あとがき>

英国の社会思想家ジョン・ラスキンの墓に、‘Unto This Last’(この最後の者にも)と刻まれていることはよく知られています。彼は生前この聖書の例え話を用いて「労働者に、働いた量と関係なく生活権を与えよ」と主張を続けていたといわれています。ユリウス・ルップもこの聖句を引用して、イースターに大変感動的な説教をしました。この聖句は、この世の常識に照らして解釈しようとするとつまずきます。朝から暑さを忍んで労働した人と、夕方近くに来て1時間しか働かない人が同じ賃金をもらうのは確かに変な話です。しかし、この世の尺度と神の国の尺度は違うのです。ラスキンもユリウス・ルップも、このイエスの教え以外に労働問題を解決する鍵はないと考えました。

まさに、ユリウス・ルップが言うように、労働問題が起きる原因は賃金が安すぎるからではなく、同僚が自分より高い賃金をもらうことが許せない――つまり、兄弟の幸せを共に喜ぶことができない人間の罪なのです。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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