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ケーテ・コルヴィッツの生涯

労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(3)最も小さな兄弟の一人にしたこと

2022年3月23日16時22分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(1)ふみにじられたもの+
ケーテ・コルヴィッツ(1867〜1945、写真:Philipp Kester)

ケーニヒスベルク街5番地にあるパウパア広場のすぐ近くにケーテの母方の祖父ユリウス・ルップが一人で住んでいた。この祖父はもともと医院を開業していたが、そのうち「自由宗教派」というキリスト教の一派の教会を作り、牧師となった。

19世紀のドイツは、皇帝が絶対的権力を持っていた時代で、国民はすべて皇帝の決めた宗教に従わねばならず、それ以外の宗派はすべて異端とされた。これに対し、国民の間で宗教の自由を求める要求が高まってきて、こうした中からあるグループが生まれ、公式の礼拝や聖書研究などを行っていた。

政府は、これらの集会に集まる者たちの間で政治批判が出ることを恐れ、一切の集会を禁止し、多くの場合この宗派の学校も閉鎖された。そして、関係者はことごとく国外に追放となった。こうした中、ユリウス・ルップは密かに人々を集めて「自由宗教派」という教会を作り、礼拝と聖書研究を行っていたのである。

このユリウス・ルップは、シュミット家の子どもたちをたいそうかわいがったが、とりわけ次女ケーテには深い愛情を注いでいた。彼女も祖父を慕ってしばしば教会に遊びに行った。この日も彼女が行くと、ちょうど祖父が近所の人を集めて定例の聖書研究会を開いているところだった。彼は孫の顔を見ると手招きして言った。「これから話をするから、おまえも聞いていきなさい」。彼はこのところずっと「マタイによる福音書」の講義を行っていた。これがなかなか好評で、その話を聞くために遠くからやってくる人もいることをケーテは知っていた。

ユリウス・ルップは席に座ると、ぶ厚い聖書を開いて読み上げた。「・・・すると、王は答えて言うであろう。『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』」(マタイ25:31〜40)

「皆さん」と、彼は語り出した。「ここでイエス様は私たちの人生において最も大切な、尊いものが何であるかを教えられています。最も小さい者とは貧しさに打ちひしがれ、飢え乾きに苦しむ者。毎日子どもを養うために身を粉にして働いている主婦。病気やけがをしても医者にもかかれない労働者。物乞い。自分の身を守ることすらできない小さな子ども、そして訪問してくれる者もなく、一人監獄の中で死刑を待つ囚人――こういう人たちのことです。つまり最も小さな兄弟とは最低の人間的生活をすることさえ許されない者たちなのであります」

「この国も他の欧州の国々と同じく産業革命の恩恵を被り、昔では考えられなかったような豊かで便利な生活を享受できるようになりました。鉄道が敷かれ、遠くまで旅行が可能になり、工場の大量生産によって良い製品を安く買うことができるようになりました。しかし、この豊かさの代償は何でしょう。それは、貧しい人々の想像を絶する苦しみです。資本家たちによる企業の独占は、貧しい者から人間として生きる最低の権利さえも奪い取りました。額に汗してコツコツと家内工業で家族を養ってきた者たちは職を失い、ほんの一握りの者が工場労働者として雇われても、ひどい環境の中で酷使され、保険にも入れないので病気やけがをしても医者にかかることができないでいます。彼らが死んでも、その家族には何の保障も与えられないのです。これが、イエス様の言われた最も小さな兄弟たちなのです。資本主義が悪いのではありません。社会から弱者を切り捨て、彼らの苦しみを見過ごしにすることが罪悪なのです。皆さん、彼らに対してわれわれは何をしてあげられるでしょうか。少し経済に余裕のある人は彼らを助けてあげてください。そうでない人は、いつもこの社会のどこかで小さな兄弟が苦しんでいることを覚えて祈りましょう。これがイエス様に喜ばれる私たちの人生の道なのであります」

聖書研究会が終わり、集まった人々が帰ってしまってから、ケーテはしばらく祖父と話をした。そして、今まで誰にも見せずにしまっておいたあの「ふみにじられたもの」の下絵をそっと見せて言った。「このかわいそうな子のために、肖像画を描いて慰めてあげたいのよ、おじいさん」

ユリウス・ルップはしばらく眼鏡を外してその絵を見ていたが、片手を孫の頭に置いて言った。「おまえは将来画家になりなさい。いいかね、才能は義務なのだよ。神様はおまえに気の毒な人を助けるために他の人にはない絵の才能を与えられたのだ。それを決して忘れてはいけないよ」。「分かったわ、おじいさん」。ケーテは答えた。

*

<あとがき>

もしケーテに偉大な祖父ユリウス・ルップがいなかったら、彼女は社会主義者として、また版画家として大成はしても、その活動の土台としてキリスト教信仰を培うことはできなかったでしょう。当時のドイツは、国家権力の中で皇帝が定めた宗教にすべての国民が従うことが要求されており、市民の中からそうした束縛を逃れ、自由な信仰を求める人々が立ち上がりました。ユリウス・ルップもその一人で、彼は信仰を同じくする者たちと「自由宗教派」という教会を作り、人々を集めて礼拝を守り、また家を開放して聖書研究を行っていました。

ケーテはこの祖父を慕っており、たびたび教会に遊びに行っていましたが、ある日訪ねると、祖父は「マタイによる福音書」の講義をしていました。「最も小さな兄弟の一人にしたことは、すなわちわたし(キリスト)にしたのである」というみことばを聞き、これが彼女の生涯を貫く社会活動のテーマとなったのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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