Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
キリスト教名著再読

トルストイ著『人はなんで生きるか』 人の心に息づく神の愛つづった不朽の名作

2020年12月7日14時40分 執筆者 : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:レフ・トルストイ
トルストイ著『人はなんで生きるか』 人の心に息づく神の愛つづった不朽の名作+
80歳の頃のトルストイ=1908年、自身の書斎で(写真:米国議会図書館所蔵)

トルストイは『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などの長編小説で名を知られるロシアの文豪である。彼は晩年に、真の文芸は人に感化を与え、人生のために何らかの益となるものでなければならないという信念を持つに至った。そしてそれは、単に美や享楽を追求するものでなく、一国民や上流階級の人々だけに通用するものでもなくして、宗教的感情を土台とし、一般大衆にも理解されるものでなければならないと断言したのである。こうした背景から、彼は何編かの民話を書いたが、その中でも『人はなんで生きるか』は、多くの人に感銘を与え、神は愛であることを万人の胸に深く刻み付ける不朽の名作となった。

レフ・トルストイ(1828〜1910)について

ロシアの小説家・思想家。領地の農民の教育事業に取り組む傍ら作家活動。独自のキリスト教的立場(トルストイ主義)を提唱。私有財産や性欲を否定し、悪への無抵抗や反戦を説き、社会・教会・芸術批判を展開し、道徳的権威として世界的に大きな影響力を持った。1910年家出を決行。寒村の駅舎で病死。著作に長編『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』、戯曲『闇の力』、創作民話『イワンのばか』、論文『懺悔』など。(「広辞苑」参照)

トルストイ著『人はなんで生きるか』 人の心に息づく神の愛つづった不朽の名作
岩波文庫版には「人はなんで生きるか」の他に、「火を粗末にすること――消せなくなる」「愛のあるところに神あり」「ろうそく」「二老人」の4編の民話が収録されている。いずれもトルストイが晩年に執筆したもので、宗教的・道徳的傾向の深い作品となっている。

あらすじ

貧しい靴屋のセミョーンは、ある農家を間借りして妻子と共に暮らしていた。秋になったとき、少し金もたまったので、農家の人に貸した金を返してもらい、それを足して毛皮を買うために家を出た。しかし、あてにしていた金は返してもらえず、わずかな靴の修理代しかもらえなかった。気落ちして帰る途中、道の四つ角にある聖堂の前を通りかかると、そこに一人の若者が倒れているのが目に入った。関わりたくないので通り過ぎようとしたが、気がとがめて引き返し、その男に自分の上着を着せた上、帽子も靴も与えてとりあえず自分の家に連れていくことにした。その若者は、どこから来たのか、なぜここに倒れていたのか尋ねても答えず、自分は神様から罰せられたのだと言うだけだった。

家に着くと、妻のマトリョーナは夫が見ず知らずの人間を連れてきたことに腹を立て、彼につかみかかる。しかし、セミョーンが「おまえの心には神様はいなさらねえのかい?」と言うと、突然態度が変わった。彼女は食事の支度をすると男に食べさせ、テーブルに片肘をついて見守るうちに、かわいそうになった。するとその時、若者の顔が輝き、彼は微笑したのだった。その翌朝、セミョーンは彼を家に置いてやろうと考え、靴職人としての手ほどきを教えると、ミハイルと名乗る若者はすぐに覚えてしまい、間もなく一人で靴を作れるようになった。

1年後。セミョーンとミハイルが店に座っていると、大富豪がやってきて長靴を注文する。セミョーンが寸法を採る間、ミハイルは目を凝らしてある一角を見つめていたが、突然にっこりと微笑する。それから皮を広げて寸法をもとに裁断し、あっという間に縫い上げたが、驚いたことに、それは長靴ではなくスリッパであった。セミョーンが嘆いていると、大富豪の下男が突然戻ってきて言うには、「旦那は帰る途中馬車の中で急死してしまったから、葬式に使うスリッパを作ってほしい」ということだった。セミョーンはすでに作ってある品物を渡し、代金をもらったのだった。

ミハイルが来て6年目になった。ある日、双子の女の子を連れた裕福な家の婦人が、子どものために靴を作りに来た。寸法を採ろうとしたとき、セミョーンは一人の女の子が不具であることに気付く。するとその婦人は、この子どもたちは両親を亡くしてしまい、母親が死ぬ瞬間に転がって、その体が一人の上に乗って片足をねじ曲げてしまったのだと話す。彼女は子どもたちどちらに対しても愛情を注ぎ、実の子として大切に育てていたのである。その時、マトリョーナはこう言うのだった。「『親はなくとも子は育つ、が、神がなくては生きてはゆけぬ』と言いますからね」と。

そして彼らが帰っていくと、ミハイルは晴れやかな微笑を浮かべていた。その彼の体がまばゆいほどの光に包まれているのを見て、セミョーンとマトリョーナは驚く。

やがてミハイルは、神様が自分を許してくださったので天に帰ることを告げた。彼は天使だった。ある時、2人の女の子を持った母親から魂を抜き取ってくるようにと神様に命じられたが、子どもがどうやって育っていくのかを思うとふびんでそれができなかった。すると神様は「もう一度行って母親から魂を抜き取りなさい。その時、私の3つの言葉の意味が分かるだろう。それが分かったら帰ってきなさい」と言われ、彼を地上に投げ落とされたのだった。

セミョーンから、3度微笑したわけを尋ねられると、ミハイルは語った。1つ目の微笑はマトリョーナが自分を憐(あわ)れんでくれたのが分かったときで、「人の中には愛がある」ということが分かったからだった。2つ目の微笑は、大富豪が自分の命がすぐに失われることを知らずに長靴を注文したときで、「人間に与えられていないものは何であるか」が分かったからであった。そして最後の微笑は2人の孤児を愛情込めて育てている婦人の涙を見たときで、彼女の中に生きた神を見、「人はなんで生きるか」が分かったからであった。

語り終えた天使は、声高らかに神を賛美する歌をうたいつつ、恩寵(おんちょう)の光に包まれて天に帰っていった。

トルストイ著『人はなんで生きるか』 人の心に息づく神の愛つづった不朽の名作
「人はなんで生きるか」の冒頭には、新約聖書の「ヨハネの手紙一」から複数の箇所が引用されている。

見どころ

「マトリョーナ、おまえの心にゃ、神さまはいなさらねえのかい?!」 マトリョーナは、この言葉を聞くと、もう一度旅人のほうを見た。とたんに、彼女の怒りは消えてしまった。(中略)マトリョーナはテーブルのはしのほうに腰かけ、片手で頬杖をついて、旅人のほうを見ていた。するうちにマトリョーナには、その旅人がかわいそうになってきた、そして彼を愛する気持ちになった。と、急に旅人は元気がよくなり、しかめつらするのをやめて、マトリョーナのほうへ目を上げると、にっこり笑った。(21〜22ページ)

「じゃ、おまえもいいか」と旦那はミハイルに言った。「気をつけて、一年は大丈夫もつような靴をつくるんだぞ」 セミョーンもミハイルのほうを振り返って、見ると――ミハイルは旦那のほうは見ないで、旦那のうしろの一隅にきっと目を据えていた、まるでだれかを見つめてでもいるように。(31ページ)

その時、マトリョーナが口をだした、(中略)――「では、おまえさまはこのお子さんたちのお母さまではおいでなさらないのですか?」「わたしは生みの母ではないんですよ、おかみさん。」(中略)「自分の腹を痛めた子でもないのに、ようまあお可愛(かわい)がりなさいますね」「どうして可愛がらずにいられましょう、わたしはこのふたりを自分のお乳で育てたんですもの。」(39ページ)

女のひとは、一方の手でびっこの子供を自分の胸へ抱きしめ、一方の手で、頬に流れる涙を拭いはじめた。マトリョーナも溜息(ためいき)をついて、言うのだった――「『親はなくとも子はそだつ、が、神がなくては生きてゆけぬ』ということを言いますが、ほんによく言ったものでございますね」(42ページ)

するうちに、天使のからだがあらわれて、彼はすっかり光りに包まれてしまったので、目でまともに彼を見ることはできなくなった。(中略)天使は言った――「わたしは、すべてのひとは自分のことを考える心だけでなく、愛によって生きているのだということを知りました。(中略)わたしが人間であった時に生きてゆくことができたのは、わたしが自分で自分のことを考えたからではなく、通りすがりのひとと、そのおかみさんの心に愛があって、わたしを憐れみ愛してくれたからです。また、ふたりの孤児が生きてゆけたのは、みんなが彼らのことを考えてやったからではなく、他人の女の心に愛があって、彼らを憐れみいつくしんでくれたからです。こうしてすべての人は、彼らが自分で自分のことを考えるからではなく、人々の心に愛があることによって、生きていっているのです。」

(中略)

「わたしがさとりましたのは、神さまは人々が離ればなれに生きてゆくことを望んではいらっしゃらないので、そのひとりひとりにとって何が必要だかということは、お示しになっていませんけれども、みんなが心を合わせて一つになって生きていくことを望んでいらっしゃるので、人間一同にとって、自分のためにも一同のためにも必要なものはなんであるかということを、みんなお示しになっているのだということでした。」

「今こそわたしは、ひとが自分で自分のことを考える心づかいによって生きているように思うのは、それはただ人間がそう思うだけにすぎなくて、じっさいはただ、愛の力だけによって生きているのだということが、わかりました。愛によって生きているものは、神さまの中に生きているもので、つまり神さまは、そのひとの中にいらっしゃるのです。なぜなら、神さまは愛なのですから」(51〜53ページ)

■ レフ・トルストイ著、中村白葉訳『人はなんで生きるか』(岩波書店 / 岩波文庫、1965年)

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。12年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

関連タグ:レフ・トルストイ
  • ツイート

関連記事

  • 神学者がつづる若者のための「人生論」 『明日に向かって バークレーとの365日』

  • 『バラバ』 キリストの代わりに釈放された盗賊の半生

  • 毎日読めるキリスト教に根ざした人生の指南書 『眠られぬ夜のために』

  • 「キリスト教書店大賞2020」ノミネート作品発表 10周年記念企画も

  • 【書評】ジョン・パイパー著『コロナウイルスとキリスト』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.