コロナ禍から学んだ教訓と新たなビジョン 教皇庁生命アカデミーが文書を発表

2020年7月29日16時30分 印刷
+コロナ禍から学んだ教訓と新たなビジョン 教皇庁生命アカデミーが文書を発表
新型コロナウイルスの患者の治療に当たる看護師の女性=4月23日(写真:米海軍 / Sara Eshleman)

カトリック教会の教皇庁生命アカデミーは22日、新型コロナウイルスの感染拡大に関する新たな文書を発表した。文書は「パンデミック時代における人間のコミュニティ:生命の復活についての季節外れの省察」と題したもので、日本語を含む5言語で公開。コロナ禍から学んだ教訓として、人間の「脆弱(ぜいじゃく)性」「有限性」「共通の傷つきやすさ」の3つを取り上げ、そこから導き出される新たなビジョンとして、相互信頼を基に繁栄するコミュニティの在り方を提示している。

文書は、「生命の脆弱性の悲惨な証明は、それが賜(たまもの)であるという我々の自覚も新たにすることができる」と指摘。「この度の不測の事態のアンビバレントな果実を味わった後に生命へと帰還することで、我々はより賢くなるのではないだろうか。我々はより傲慢(ごうまん)でなく、より感謝に満ちるのではないだろうか」とした。

コロナの現象は「単なる自然の出来事」ではなく、「経済的選択と発展モデルという人間の世界による複雑な媒介の結果であり、それ自体、我々自身の創造した別の『ウイルス』のまさに『感染』によるもの」と指摘。そこから自然環境との関係性を再考し、自らの「有限性」に同意するという忍耐を学び取ることもできるとした。また、経済的に貧しい国々と比較すると、「発展した」国々の苦境は「より贅沢(ぜいたく)なもののように見える」とし、十分な感染症対策の実施以前に、マラリアや結核などにより毎年数千万の命が奪われている南半球の悲惨な現状に目を留めるよう促した。

さらに、誰もが感染の可能性があるという「共通の傷つきやすさ」は、「国際協力」を要求し、「パンデミックはグローバルレベルで、誰もがアクセスしうる、ふさわしい医療のインフラなしには抵抗しおおせないという認識」も要求するとした。一方で現実は、「特にグローバルなレベルで、人間の相互依存と共通の脆弱性に対して十分な注意を払っていない」と指摘。「他国の経験や政策から学ぶ機会を提供しえたのに、グローバルレベルでの学習のプロセスは最小限だった」とした。相互関連性の欠如は、治療薬とワクチンの開発についても同じだとし、「調整と協力の不在は、今やますますCOVID−19に対処するための障害として認識されている」と強調した。

その上で、これらの教訓が「新たなビジョンの入り口に我々を導く」とし、第一に「リスクの実存的現実」に対する新たな考察に到達しなければならないと強調。「世界の間の経済的、社会的、政治的不平等を考慮せずに、パンデミックの自然的起源に焦点を合わせることは、その拡散をより早く、対処をより難しくしている状態の意味を把握しないことを意味する」と指摘した。また、「我々は、苦しんでいる者を助ける一般的な義務を超えて拡大する連帯のコンセプトを明確に記述する必要がある」とし、「パンデミックは我々全員を、抑圧的で不正義な我々のグローバルなコミュニティの構造的次元――宗教的意識が「罪の構造」と定義するもの――に取り組み、新たな形態に造り直すよう促す」とした。

さらに、「人間のコミュニティの共通善は、心と精神の真の回心なしには達成されえない」とし、「回心への要求は、我々の責任感に向けられる。その近視眼の原因は、このように明白なことを見る能力が我々にないからではなく、グローバルなレベルで最も弱い人口集団の傷つきやすさを見ることを我々が拒むことにある」と指摘。「質の高いヘルスケアと必須医薬品へのアクセス権は、普遍的人権とみなされなければならない」とし、「ワクチンの公正な供給」と矛盾しない、唯一受け入れることのできるゴールは「誰も排除せず、全員がアクセスしうること」だとした。

自国の利益という視野の狭さからくる「地域第一主義」は、「不平等を広げ、諸国間での資源のアンバランスを悪化させる結果をも招く」と指摘。「パンデミックが、より多くの人々を傷つきやすくすることによって、また保健支援、雇用、社会的緩衝装置なしに周縁化することによって、すでに存在するグローバル化のプロセスに伴う不平等を悪化させることは明白」とした。

「連帯」は「コストなしに、そして富裕な国々が、貧しい人の生き残りと地球全体の持続可能性のために必要な価格を支払う準備なしに、無償では訪れない」とし、「誰もが自らの役割を果たすよう要求される」と訴えた。「責任あるコミュニティは、警戒の重荷と相互の支援が、先行学習の影響下で、全員の幸福を展望するビジョンによって共有される」とし、「信頼に基づいてのみ、人間のコミュニティは、最終的に繁栄することができる」とした。

最後に、「我々は、2つの相反する誘惑の並行する影響を超える、希望の態度へと招かれている」とし、一方では「受動的に出来事を耐えるところの放棄」、他方では「以前のものにただ憧れる、過去に帰還するためのノスタルジー」という誘惑の影響を超えて、「今はそうではなく、各人と全員にとってよりよい未来を可能にする人間の共存のプロジェクトをイメージし、実行する時」と訴えた。

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