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背徳の街のマリヤ

続・背徳の街のマリヤ~神の花嫁~(3)光の道の始まり 星野ひかり

2019年11月16日22時43分 コラムニスト : 星野ひかり
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「いいかい、聞きなさい。人は決して見た目なんかではないんだよ。美しさというものはその人の魂からあふれ出るものなんだからね」。今日までサダ姉をよく看てくれたおばあちゃんはそう言って、サダ姉の顔の包帯に手を掛けました。サダ姉はうなずきながらも心を不安で震わせました。

はらはらと包帯はほどかれ、ベッドに落ちてゆき、サダ姉は自分の顔に手をやりました。ざらざらと皮膚が波打つ感触が、やけどのひどさを物語っておりました。おばあちゃんは鏡をサダ姉に手渡して、「大丈夫、さだちゃん、きれいだよ」。そう言いながらも鼻を赤く染めておりました。

サダ姉はおびえながら鏡を覗き込み、そして息をのみました。それはあまりにもひどいやけどだったのです。顔のあちこちの皮膚は溶けて、見るも悲しいケロイドになっていたのです。サダ姉は顔を覆って泣きました。途端に生きることが恐ろしくなったのです。

「もう誰もが私を怖がるだろう」。「そして誰にも相手にされず、道端でのたれ死ぬのだ」。そんな想いが胸にあふれました。そして、自分の生きてきた道を想いました。神様にゆるされて、神様を信じて生きなおそうとしたけれど、自分のしてきたことを考えると、当然の報いではないかと思ったのです。たとえ神様を信じたとしても、自分のしたことが消えることはないのだ、と。

「神様、あなたは私にこのような罰をお与えになりました。当然のことですね」。そうつぶやくと、サダ姉は力なく笑いました。すると、おばあちゃんは胸のポケットから小さな木彫りの十字架を取り出すと、大きな声で言いました。「悪魔よ退け!偽りをささやくな!神はそのようなお方ではない!」そして、いきおいよく聖書をめくると、ルカの福音書にあるたとえ話を指さして見せました。

「前にここを読んで聞かせたね。もう一度じっくり読むといい。神は悪の限り、欲の限りを尽くした放蕩(ほうとう)息子が行き倒れ、神のもと、天のお父さんのもとに帰りたいと願ったときどうされた? 神様は、その息子に駆け寄って抱きしめ、上等な着物と靴を履かせたじゃないか。そして丸々と太った子牛をほふって、帰ってきた息子のために祝宴を開いたんだ。決して『自分のしてきたことが分かっているのか? 十分に罰を受けなければならない』とおっしゃる方ではなかったね。そしてイエス様は何と言った?『99匹の迷わなかった羊よりも、迷い出た1匹の羊が戻ってきたことがうれしい』とそうおっしゃらなかったかい? その時は天のみ使いたちも喜び歌うと言ったじゃないか」

サダ姉は首を振りました。「いいえ、いいえ。私はあまりにひどい罪を犯して生きてきました。この傷跡は、私の罪の痕跡のようにしか思えないのです」。死んでしまったほうがよかったと、サダ姉はそう思いました。顔中に刻まれたやけどの痕は、自分が今まで犯してきた罪をまざまざと思い出させました。

「猫吊り通り」の暮らしの中で、人を憎んで悪魔と固い絆を結びました。未来ある子どもたちを憎み、「決して幸せになれないように」と子どもたちを虐げました。生まれてきたことに復讐をするように、欲望の限りを尽くしました。たとえ神様が本当に自分をおゆるしになったとしても、自分が自分をゆるすことはできないと思いました。

おばあちゃんは深いため息をつきました。「あたしだってそうだった。たいそれたことをしたわけじゃなかったが、神を神と認めずに、自分勝手に生きていた。そして神に出会ったとき、自分の罪に打ちひしがれたさ。でもそしたら道は一つしかないんだ。今度は神様のために一生懸命生きること。それが自然と『償い』の道となるんだよ。その道がサダちゃんにもちゃんと開かれてゆくんだよ」

そしておばあちゃんは、「神様に多くをゆるされた女の話」(ルカ7:36~)をしてくれました。

イエス様がある人の家に食事に招かれたときの話です。多くの罪を犯してきた女が、イエス様がおられることを聞きつけて、香油の入ったつぼを携え、その家に来たというのです。そしてイエス様の足もとにすり寄ると、涙でその足を濡らし、髪で拭い、接吻をしたというのです。イエス様はその女の行き過ぎた行為をとがめるどころか、その女と周りにいた人たちに、「誰もこのように私を歓迎してくれなかったではないか」とこの女のしたことをほめたのです。そして「この女は、多く愛したから、その多くの罪はゆるされたのだ。少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない」と言ったのです。

そしておばあちゃんは言いました。「だから、多くをゆるされたことを誇りに思いなさい。サダちゃんはこの女の人のように、たくさんゆるされた分だけ、たくさん神様を愛してゆけばいい。それが『償い』であって、おのずから歩む『償い』の道は、光の道の始まりなんだ」・・・そうは言っても。とサダ姉はうつむきました。こんなやけどを負った姿で、どのように生きたらいいのだろう。働く場所も住む場所も、誰も与えてくれないだろう。

すると、サダ姉の思いを察したように、おばあちゃんは言いました。「元気になったらここに住み込みで働いてもらおうかな。なにせ猫の手も借りたいくらいにわんさか仕事があるんだよ。サダちゃんにはたんまりと、治療費を返してもらわなくちゃならないしね」。そう言って愛くるしく笑って見せたのです。

サダ姉は驚いて顔を上げました。やけどで溶けたまぶたの隙間から、涙がツーっと流れました。「・・・こんな顔では、みんな怖がるわ」。「なあに。初めはちょっと怖がったとしても、優しい子だって分かったら誰もそんなこと気にならなくなるさ」

サダ姉は、初めて人のぬくもりに触れたような気がしました。そして心の奥底から湧き出る泉から、人と話しているような気がしました。今までこんなふうに誰かと話したことがあったでしょうか。いやみ、愚痴、さげすみ、嘲笑・・・そんな言葉に支配されて生きてきました。

悪魔と交わした誓いがふとよみがえりました。「私とあなたは言葉ひとつ、心ひとつ」。悪魔は人の弱みにつけこんで、初めに支配するのは「言葉」でした。言葉を黒く染めたなら、心も同じように染まることを悪魔はよく知っていました。

今サダ姉には、祈りにも似たまっすぐな言葉が与えられておりました。そして、よどんでいた心もおのずから出る言葉に洗われて、ま白くなってゆくようでした。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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